135 / 190
本編3/ 「成長」の話
風俗店長と恋人【10】
しおりを挟む
客とボーイという関係じゃない、本名でのセックスは、どこが終わりか解らない。
丁寧な二回目を終えてもまだ抱き合ったままで、時々キスをしたり、体を触りあったり、耳元で名前を囁いたり、くすぐったくなるようなスキンシップをもう一時間以上続けている。
「トキくんと、こんなセックスをできるとは思わなかった」
「私も。フミハルさんとたくさんセックスしたけど、今日が一番気持ちいい」
狭いベッドで寝転んだまま、至近距離で見つめあう。
仕事のサービスじゃないのにこんなセリフ、自分の口から出てくるとは思っていなかった。
甘ったるいくすぐったい時間がとても幸せで……あぁ、私……私……
「トキくん、こんなセックスしたらもう我慢できない」
「フミハルさん?」
私も更に甘い言葉を口にしてしまいそうになった瞬間、目の前の愛しい人も同じことを思っていてくれたようで……
「恋人になって欲しい」
一歩先に言われた言葉に、同じ気持ちなんだというのが嬉しくて嬉しくて、抱き合った体を更に隙間なくぴったりとくっつけて頷いた。
「はい」
今までにも短い期間だけど何度か彼氏がいたことはある。
だけど、こんなにも「この人のことが好き」と思って恋人関係が始まったことはなかった。
フミハルさんのことが好き。
フミハルさんを大事にしたい。
私、風俗ボーイを辞めてよかった。
これからはフミハルさんだけを大事にできる。大事にする。
この時は、心の底からそう思った。
◆
お付き合いは順調。
修行中は月に二回、フミハルさんがこっちに来てくれて、そのたびにデートをして、セックスをして、恋人同士らしく過ごしたし、会えない日も電話やメールでやりとりを重ねた。
今までにさんざんセックスをしてきたし、二人ともいい大人なんだから、若い子みたいに浮かれてラブラブなバカップルみたいになることはなかったけど……まぁ、多少は浮かれたこともしたわ。
手を繋いで歩くとか、裸エプロンとか……仕方ないじゃない。
こんなに人を好きになるのが初めてだったんだから。
そして、順調にお付き合いを重ねて五ヶ月ほどたったころ。
修業期間を終えて、元々勤めていた店を引き継ぐために住み慣れた街に一年ぶりに帰ってきた。
「お邪魔します」
「今日からトキくんの家だから、次からは『ただいま』だよ」
「えぇ、そうね」
帰ってきたと同時に、前の家を引き払って、フミハルさんの家で一緒に住むことになった。
私もそれなりにいい部屋に住んでいたつもりだったけど、フミハルさんは流石大きな会社の社長さんで、絵に描いたようなタワーマンションの四十五階の4LDK。
「ちょうど一部屋使っていなかったし、トキくんが毎日側にいてくれるだけで嬉しい」
そう言って生活費を受け取ってくれないのには困ったけど、代わりに家事をすると言っても、掃除は業者に入ってもらうし、洗濯もまとめてランドリーサービスに出すし……。
「私、養われたいわけじゃないんだけど」
ハッキリとそう言えば、フミハルさんも少し考えてくれた。
「じゃあ、料理と食費お願いしていい? あとは体で払ってもらおうかな」
「体って……もうフミハルさんたら……♡」
結局その「体で払ってもらう」というのも、別に普通のセックスで、こんなに良くしてもらっても立場は常に対等。
生活や趣味で合わない部分もあったけど、二人ともいい大人だからちゃんと話し合って解決していけた。
勿体ないくらい素敵な彼氏との、ただただ落ち着いた穏やかで幸せな日々。
穏やかではあるけど、風俗ボーイになってからの約二〇年間とは真逆の生活は、新鮮で面白いとさえ思っていた。
丁寧な二回目を終えてもまだ抱き合ったままで、時々キスをしたり、体を触りあったり、耳元で名前を囁いたり、くすぐったくなるようなスキンシップをもう一時間以上続けている。
「トキくんと、こんなセックスをできるとは思わなかった」
「私も。フミハルさんとたくさんセックスしたけど、今日が一番気持ちいい」
狭いベッドで寝転んだまま、至近距離で見つめあう。
仕事のサービスじゃないのにこんなセリフ、自分の口から出てくるとは思っていなかった。
甘ったるいくすぐったい時間がとても幸せで……あぁ、私……私……
「トキくん、こんなセックスしたらもう我慢できない」
「フミハルさん?」
私も更に甘い言葉を口にしてしまいそうになった瞬間、目の前の愛しい人も同じことを思っていてくれたようで……
「恋人になって欲しい」
一歩先に言われた言葉に、同じ気持ちなんだというのが嬉しくて嬉しくて、抱き合った体を更に隙間なくぴったりとくっつけて頷いた。
「はい」
今までにも短い期間だけど何度か彼氏がいたことはある。
だけど、こんなにも「この人のことが好き」と思って恋人関係が始まったことはなかった。
フミハルさんのことが好き。
フミハルさんを大事にしたい。
私、風俗ボーイを辞めてよかった。
これからはフミハルさんだけを大事にできる。大事にする。
この時は、心の底からそう思った。
◆
お付き合いは順調。
修行中は月に二回、フミハルさんがこっちに来てくれて、そのたびにデートをして、セックスをして、恋人同士らしく過ごしたし、会えない日も電話やメールでやりとりを重ねた。
今までにさんざんセックスをしてきたし、二人ともいい大人なんだから、若い子みたいに浮かれてラブラブなバカップルみたいになることはなかったけど……まぁ、多少は浮かれたこともしたわ。
手を繋いで歩くとか、裸エプロンとか……仕方ないじゃない。
こんなに人を好きになるのが初めてだったんだから。
そして、順調にお付き合いを重ねて五ヶ月ほどたったころ。
修業期間を終えて、元々勤めていた店を引き継ぐために住み慣れた街に一年ぶりに帰ってきた。
「お邪魔します」
「今日からトキくんの家だから、次からは『ただいま』だよ」
「えぇ、そうね」
帰ってきたと同時に、前の家を引き払って、フミハルさんの家で一緒に住むことになった。
私もそれなりにいい部屋に住んでいたつもりだったけど、フミハルさんは流石大きな会社の社長さんで、絵に描いたようなタワーマンションの四十五階の4LDK。
「ちょうど一部屋使っていなかったし、トキくんが毎日側にいてくれるだけで嬉しい」
そう言って生活費を受け取ってくれないのには困ったけど、代わりに家事をすると言っても、掃除は業者に入ってもらうし、洗濯もまとめてランドリーサービスに出すし……。
「私、養われたいわけじゃないんだけど」
ハッキリとそう言えば、フミハルさんも少し考えてくれた。
「じゃあ、料理と食費お願いしていい? あとは体で払ってもらおうかな」
「体って……もうフミハルさんたら……♡」
結局その「体で払ってもらう」というのも、別に普通のセックスで、こんなに良くしてもらっても立場は常に対等。
生活や趣味で合わない部分もあったけど、二人ともいい大人だからちゃんと話し合って解決していけた。
勿体ないくらい素敵な彼氏との、ただただ落ち着いた穏やかで幸せな日々。
穏やかではあるけど、風俗ボーイになってからの約二〇年間とは真逆の生活は、新鮮で面白いとさえ思っていた。
13
お気に入りに追加
2,511
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる