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番外編2(全6話)
【番外編2】若頭(改造巨根)と舎弟と 「媚薬」 の話【1】
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※番外編1の「若頭(改造巨根)と舎弟の話」の続きです。
タカさんが系列の組が四つ集まる会合に参加している間、俺は事務所でパソコン作業をしていた。
俺とタカさんは若頭と舎弟という関係で、ついでに……まぁ……嬉しいことに、恋人同士だ。
だからと言って、仕事中も常に一緒というわけではない。
俺は身長一七二センチのやせ型、金髪ツーブロックとサングラスで誤魔化しているけど顔も童顔だし、年齢も二五歳と若いし、威圧感が無い。見た目で舐められることが多いから、若頭であるタカさんの付き人ではあるけど、他の組も参加する会合では見た目が屈強な奴が付いていくことがほとんどだ。
不甲斐ないけど、タカさんの周りにいる奴は全員良い奴だし、タカさんのことを命に代えても守るって気概があるやつばかりなので、適材適所、俺は別のところで役に立てばいいと思っていた。
安心……いや、油断していたんだ。
――ブブブブブ
スマートフォンのバイブレーションが着信を知らせて、タカさんの名前が見えてもまだ「早く帰れたから飯でも誘ってくれんのかな」と平和ボケなことを考えていた。
「もしもし」
「リョウ……」
あれ?
タカさんの声……おかしくないか?
絞り出すようなうめき声で名前を呼ばれて、背中が冷たくなった。
しかも……
「リョウ……助けてくれ」
「タカさん!?」
続く言葉に全身の血の気が引いた。
助けてくれなんて……こんな、切羽詰まった声でこんな……!
何があった?
護衛は?
今どこに?
俺はどうしたらいい?
「家に……」
「家に? 家に行けばいいですか?」
返事を待つ数秒が、やけに長く感じる。
しゃべれないほど苦しいのか?
怪我……ってことか?
そんなの、俺が行っても役に立てるのか?
「リョウ!」
俺の頭の中もパニックになりかけた瞬間、タカさんではない声が電話越しに俺を呼んだ。
「若頭の家にすぐ向かえ! 俺たちも今向かってる!」
今日、タカさんの護衛についていたモトキだ。
俺と一緒にタカさんに拾ってもらった組で一番体がでかくて腕っぷしも強い奴。
タカさんほどではないけどいつも冷静なモトキの声が焦っている……でも、やっと頭が働いてきた。
タカさんよりは声が落ち着いているし、あいつが付いていてこういう指示を出してくるならきっと大丈夫。俺はとにかくただ向かうのが一番なんだ。
「わかった! すぐに向かう!」
俺が返事をすると通話が切れて、心配そうに俺を眺める周囲の組員にも「わかんねぇけど早く行け!」と促されてタカさんのマンションへと車を走らせた。
◆
マンションにつくと、タカさんの乗って行った車はもうあって、玄関を開けて出迎えてくれたのはモトキだった。
「モトキ! タカさんは!?」
「寝室だ」
返事を聞いてすぐに寝室へ向かおうとしたけど、モトキに腕を掴まれた。
「待て!」
「なんでだよ!?」
何があったか知らないけど、タカさんが俺に助けを求めているのに?
噛みつきそうな勢いで振り返ると、モトキはいつもの不愛想な顔ではなく泣きそうな顔で、でも、真剣に俺を見つめていた。
「……モトキ?」
「お前にしかできないことだ」
「え?」
「……準備、していけ」
「準備って……?」
モトキが気まずそうに視線を外す。
「ケツ……の」
ケツ……?
え?
ケツって……その……セックスする準備ってことだよな?
確かに俺とタカさんは恋人同士で、組の奴らにもバレていて……ちなみにバレた時に「体で若頭に取り入ろうとするなんてウゼェんだよこのカマ野郎」くらい言われる覚悟はしていたんだけど、組員の古株から下っ端迄全員「あの若頭のチンポが入るように頑張るなんて根性あるな」とか「若頭ずっと悩んでましたもんね! 若頭のためにそこまでできるなんてリョウさんすげぇ!」とか「お前とヤるようになってから若頭が幸せそうで……リョウ、ありがとうな」とか言われるだけだった。
タカさんとのセックスの内容をベラベラ話すようなことはしないけど、飲み会の時に、ケツの念入りな準備が必要っていうことは少し話した気もする。
でも……なんで今?
首をかしげていると、モトキは一度唇を噛んでから、視線をそらしたまま口を開いた。
「媚薬、盛られたんだよ。濃いやつ」
「媚薬……?」
うちの組の界隈で扱いがある媚薬といえば、女の感度を上げて落とすために使う媚薬と、男の年寄りなんかが見栄のために使う増強剤というか、興奮剤というかの二種類。
……まさか……。
「上の組長の気まぐれで……その場にいた若頭四人に『最近お前ら元気がなくて心配なんだよ』なんて言いながら飲ませて……他の組の若頭は媚薬飲んですぐに我慢できなくなって用意されていた女をみんなの前で抱いていて、でも、若頭は飲んだ後も平然として……平気な顔で暫く眺めた後に『素人の下手なセックスじゃ勃たないんで帰ります』とか言って……すげぇかっこよかった」
「それはすげぇかっこいいな……」
かっこいいなんて言っている場合じゃないのは解るけど、さすがタカさん。かっこいい。
……まぁ、あの人根っからのゲイだから男女のセックスは萎えるんだろうけど……いやでもかっこいい。
「な、かっこいいよな。俺もすげぇって思いながら付いて出て……でも、車に乗った瞬間、大量の汗かいて息荒げて、意識も呂律もおかしくて……気合で押さえてたんだよな。スゲェ人だよ……って無駄話している間も若頭は苦しんでる」
「あ、あぁ……そうだな!」
「上の組長が言うには、風俗にもおろしているいつもの男用の興奮剤だ。ヤりまくればおさまる。でも、濃いというか、原液らしいから効果がどれくらいかわかんねぇ。何時間効くのかも」
「そうか……」
ただでさえ、合法ギリギリの海外製の媚薬だ。
効果がヤバいのは知っている。それの原液なんて……。
「なぁ、リョウ……」
モトキが逸らしていた視線を俺に戻し、腕を掴む力を強くする。
「若頭のアレを何時間も相手すんのは大変だってわかってる。でも……頼む。若頭が誰かに助けてくれなんて言うの、初めて見た。……若頭は義理堅い人だから絶対に他の奴は抱かない。お前しか、若頭のことを助けられないんだ。だから……」
モトキが屈強な体を折って、俺に頭を下げる。
……本当、タカさんの周りにいる奴は良い奴だかりだ。
「……心配すんなよ。でも、明日は事務所に顔出せないと思うから色々頼んだ」
なるべく落ち着いた声で言うと、モトキは頭を上げて神妙な顔で頷いた。
「わかった」
「あと、二人きりにして欲しいけど……万が一のことがあるから、明日の昼くらいに一度様子見に来て欲しい」
「わかった」
ここでやっとモトキの腕が離れた。
「じゃあ、準備するから。お前は事務所に報告してくれ」
「あぁ」
寝室に向かいかけていた足を、浴室へ向けると、背後からモトキの絞り出すような声が聞こえた。
「頼んだぞ、リョウ。若頭のこと……頼んだ」
「……まかせとけ」
……ほら、タカさんの周りはみんな良い奴で、みんなタカさんが大好きなんだ。
「よしっ!」
俺はみんなの気持ちを背負って、気合を入れながら浴室で準備を始めた。
タカさんが系列の組が四つ集まる会合に参加している間、俺は事務所でパソコン作業をしていた。
俺とタカさんは若頭と舎弟という関係で、ついでに……まぁ……嬉しいことに、恋人同士だ。
だからと言って、仕事中も常に一緒というわけではない。
俺は身長一七二センチのやせ型、金髪ツーブロックとサングラスで誤魔化しているけど顔も童顔だし、年齢も二五歳と若いし、威圧感が無い。見た目で舐められることが多いから、若頭であるタカさんの付き人ではあるけど、他の組も参加する会合では見た目が屈強な奴が付いていくことがほとんどだ。
不甲斐ないけど、タカさんの周りにいる奴は全員良い奴だし、タカさんのことを命に代えても守るって気概があるやつばかりなので、適材適所、俺は別のところで役に立てばいいと思っていた。
安心……いや、油断していたんだ。
――ブブブブブ
スマートフォンのバイブレーションが着信を知らせて、タカさんの名前が見えてもまだ「早く帰れたから飯でも誘ってくれんのかな」と平和ボケなことを考えていた。
「もしもし」
「リョウ……」
あれ?
タカさんの声……おかしくないか?
絞り出すようなうめき声で名前を呼ばれて、背中が冷たくなった。
しかも……
「リョウ……助けてくれ」
「タカさん!?」
続く言葉に全身の血の気が引いた。
助けてくれなんて……こんな、切羽詰まった声でこんな……!
何があった?
護衛は?
今どこに?
俺はどうしたらいい?
「家に……」
「家に? 家に行けばいいですか?」
返事を待つ数秒が、やけに長く感じる。
しゃべれないほど苦しいのか?
怪我……ってことか?
そんなの、俺が行っても役に立てるのか?
「リョウ!」
俺の頭の中もパニックになりかけた瞬間、タカさんではない声が電話越しに俺を呼んだ。
「若頭の家にすぐ向かえ! 俺たちも今向かってる!」
今日、タカさんの護衛についていたモトキだ。
俺と一緒にタカさんに拾ってもらった組で一番体がでかくて腕っぷしも強い奴。
タカさんほどではないけどいつも冷静なモトキの声が焦っている……でも、やっと頭が働いてきた。
タカさんよりは声が落ち着いているし、あいつが付いていてこういう指示を出してくるならきっと大丈夫。俺はとにかくただ向かうのが一番なんだ。
「わかった! すぐに向かう!」
俺が返事をすると通話が切れて、心配そうに俺を眺める周囲の組員にも「わかんねぇけど早く行け!」と促されてタカさんのマンションへと車を走らせた。
◆
マンションにつくと、タカさんの乗って行った車はもうあって、玄関を開けて出迎えてくれたのはモトキだった。
「モトキ! タカさんは!?」
「寝室だ」
返事を聞いてすぐに寝室へ向かおうとしたけど、モトキに腕を掴まれた。
「待て!」
「なんでだよ!?」
何があったか知らないけど、タカさんが俺に助けを求めているのに?
噛みつきそうな勢いで振り返ると、モトキはいつもの不愛想な顔ではなく泣きそうな顔で、でも、真剣に俺を見つめていた。
「……モトキ?」
「お前にしかできないことだ」
「え?」
「……準備、していけ」
「準備って……?」
モトキが気まずそうに視線を外す。
「ケツ……の」
ケツ……?
え?
ケツって……その……セックスする準備ってことだよな?
確かに俺とタカさんは恋人同士で、組の奴らにもバレていて……ちなみにバレた時に「体で若頭に取り入ろうとするなんてウゼェんだよこのカマ野郎」くらい言われる覚悟はしていたんだけど、組員の古株から下っ端迄全員「あの若頭のチンポが入るように頑張るなんて根性あるな」とか「若頭ずっと悩んでましたもんね! 若頭のためにそこまでできるなんてリョウさんすげぇ!」とか「お前とヤるようになってから若頭が幸せそうで……リョウ、ありがとうな」とか言われるだけだった。
タカさんとのセックスの内容をベラベラ話すようなことはしないけど、飲み会の時に、ケツの念入りな準備が必要っていうことは少し話した気もする。
でも……なんで今?
首をかしげていると、モトキは一度唇を噛んでから、視線をそらしたまま口を開いた。
「媚薬、盛られたんだよ。濃いやつ」
「媚薬……?」
うちの組の界隈で扱いがある媚薬といえば、女の感度を上げて落とすために使う媚薬と、男の年寄りなんかが見栄のために使う増強剤というか、興奮剤というかの二種類。
……まさか……。
「上の組長の気まぐれで……その場にいた若頭四人に『最近お前ら元気がなくて心配なんだよ』なんて言いながら飲ませて……他の組の若頭は媚薬飲んですぐに我慢できなくなって用意されていた女をみんなの前で抱いていて、でも、若頭は飲んだ後も平然として……平気な顔で暫く眺めた後に『素人の下手なセックスじゃ勃たないんで帰ります』とか言って……すげぇかっこよかった」
「それはすげぇかっこいいな……」
かっこいいなんて言っている場合じゃないのは解るけど、さすがタカさん。かっこいい。
……まぁ、あの人根っからのゲイだから男女のセックスは萎えるんだろうけど……いやでもかっこいい。
「な、かっこいいよな。俺もすげぇって思いながら付いて出て……でも、車に乗った瞬間、大量の汗かいて息荒げて、意識も呂律もおかしくて……気合で押さえてたんだよな。スゲェ人だよ……って無駄話している間も若頭は苦しんでる」
「あ、あぁ……そうだな!」
「上の組長が言うには、風俗にもおろしているいつもの男用の興奮剤だ。ヤりまくればおさまる。でも、濃いというか、原液らしいから効果がどれくらいかわかんねぇ。何時間効くのかも」
「そうか……」
ただでさえ、合法ギリギリの海外製の媚薬だ。
効果がヤバいのは知っている。それの原液なんて……。
「なぁ、リョウ……」
モトキが逸らしていた視線を俺に戻し、腕を掴む力を強くする。
「若頭のアレを何時間も相手すんのは大変だってわかってる。でも……頼む。若頭が誰かに助けてくれなんて言うの、初めて見た。……若頭は義理堅い人だから絶対に他の奴は抱かない。お前しか、若頭のことを助けられないんだ。だから……」
モトキが屈強な体を折って、俺に頭を下げる。
……本当、タカさんの周りにいる奴は良い奴だかりだ。
「……心配すんなよ。でも、明日は事務所に顔出せないと思うから色々頼んだ」
なるべく落ち着いた声で言うと、モトキは頭を上げて神妙な顔で頷いた。
「わかった」
「あと、二人きりにして欲しいけど……万が一のことがあるから、明日の昼くらいに一度様子見に来て欲しい」
「わかった」
ここでやっとモトキの腕が離れた。
「じゃあ、準備するから。お前は事務所に報告してくれ」
「あぁ」
寝室に向かいかけていた足を、浴室へ向けると、背後からモトキの絞り出すような声が聞こえた。
「頼んだぞ、リョウ。若頭のこと……頼んだ」
「……まかせとけ」
……ほら、タカさんの周りはみんな良い奴で、みんなタカさんが大好きなんだ。
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