ゲイのエッチなお兄さん

回路メグル

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本編2

脱童貞イメージプレイ【1・タコパ】

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「ソウタくん、チーズ入り焼けたよ」

 ケイくんがかわいい塩顔をくしゃっと笑顔にしながら、大きな八人掛けダイニングテーブルの真ん中に置いたタコ焼き器から、きれいに焼けたタコ焼きを俺の皿に入れてくれる。
 細マッチョの中でも大柄な体格なのに、作業は繊細でまるで売り物のようなまん丸でおいしそうなタコ焼きだ。

「チーズ入りもソース?」
「俺はソースだけど、ケチャップとあらびきコショウもあうよ」
「じゃあそれにしてみようかな」

 俺とケイくんのやり取りを隣で見ていた、天使のようなミミくんとくまさんのようなマオちゃんのかわいいコンビも楽しそうにお皿を手に持つ。

「美味しそう! ケイくん、俺の皿にも!」
「俺にも!」
「ちょっと待ってくださいね~、こっちひっくりかえしたらすぐ……よっと!」

 今日は平日の夜だけど、最近関西から引っ越してきたケイくんの家にゲイ仲間が集まって、タコ焼きパーティーを開催中だ。
 まだ知り合って二ヶ月ほどのケイくんだけど、ノリがいいし、「早くこっちでゲイ友達欲しいんだ」と言って積極的にみんなに声をかけていて、こうして自宅にも招いてくれて……すっかり仲の良い友達になっていた。
 そして、ケイくんの住んでいるのは、親戚が転勤の間借りているというファミリー向けの一軒家。
 ……気心の知れたゲイ友達、声を気にしなくていい一軒家、関西仕込みの美味しいタコ焼き、ついでにビールや缶チューハイ。
 ある程度おいしい物を堪能したら……。

 話は自然とアッチになる。

「それでね、俺思うんだけど~……ゲイの初体験って、男女みたいに『恋人と♡』って絶対に少数派!」

 たまたまみんな観ていた流行の恋愛ドラマの話の流れで、ミミくんがこんなことを言い出して……みんなのスイッチが入ったのが解った。
 まず、最初に返事をしたのはケイくん。

「確かに。俺は、マッチングアプリで知り合ったワンナイトの人とだったな。正直に童貞だってプロフに書いていたから、童貞を食うのが好きなネコのお兄さんに筆おろしさせてもらって……俺は初めてでいっぱいいっぱいだったけど相手はすごく楽しそうだったからまぁまぁ良い初体験だったかな」

 ケイくんがタコ焼きを焼く手を止めて、ビールの缶を開けながらダイニングチェアに腰を下ろした。
 これは話し込む体勢だな。
 確かにみんなの初体験は気になる。

「そうそう。そういうこと! 最近はアプリの人多いよね~。俺はゲイバーでナンパしてきた人だけど、マスターがちゃんと『この子初めてだから優しく教えてあげなさいよ』って言ってくれたのもあって、優しくしてもらえた♡ その後も誘ってもらって二~三回はヤって、『付き合わない?』ってお誘いもされたけど……折角エッチの楽しさ知ったから他の人ともいっぱいしたくてごめんなさいしちゃったなぁ♡」

 ゲイセックスが大好きでゲイ風俗のボーイをやっているミミくんらしいな。
 ……まぁ、ミミくん以外にもこういうことを言いそうな人がこの場には何人もいるけど。
 だって俺たちは「馴染みのハッテン場やゲイバーでよく会うゲイ仲間」だから。
 恋人がいない、遊んでいるゲイばかりだ。

「ミミくんらしいなぁ。でも、俺もそうかも~」
「マオちゃんも?」

 ほら。
 くまさんみたいな可愛らしい癒し系に見えるけど……マオちゃんも結構エッチなんだよなぁ。
  
「俺も初体験はマッチングアプリの人で、初めてってプロフに書いたら沢山お誘い来たんだよね。その中で一番経験人数多い人にお願いしたんだけど……俺もすっごく気持ちよかったし、相手もすっごく楽しんでくれちゃって、終わった瞬間に『俺の彼氏になってください!』って言われちゃった♡」

 初体験でいきなり告白か。
 初めてのネコがすごいテクニックを持っているわけはないけど……マオちゃんって最高に触り心地のいいマシュマロボディだからなぁ。かわいい髭熊系の顔もゲイうけがいいし。

「で、断ったんだ?」
「うん。ミミくんと一緒ですごく気持ちよかったから、他の人とならどうかなって興味沸いちゃって……あ、でも、その最初の上手な人が男らしい顔で体毛が濃い目の人だったから、今でもそういう人が好みかも♡」
「わかる。最初に出会った人とか、初めて見たAVで好みや性癖きまるよね」

 ミミくんがまた頷くと、俺も含めてその場の全員が深く頷いた。
 俺も初めて観たゲイビが年上のエッチな教師に筆おろししてもらうやつだったから、今でもエッチな年上に弱いし、手持ちのゲイビは全部そういう系統だ。
 ゲイじゃなくても、ノンケの男でもこれは共感できる話なんじゃないかな?
 でも、この理屈で言うと……

「ヨウくんも頷いてるけど、確かヨウくんの初めてって……」

 俺がこの中で一番若い素直で朴訥な大柄の大学生ヨウくんに視線を向けると、ヨウくんは少し慌てた様子で下を向いてからチラっと、一番奥に座る人物に視線を向ける。

「あ……えっと、はい……」

 ヨウくんの返事になっていない返事に、視線を向けられた人物……ユキさんが嬉しそうに笑った。

「ふふっ。俺、ヨウくんの良い思い出になれた?」

 ……うわ、エッチ。
 ユキさんは界隈で一番エロいと言われている魔性のゲイで……もう、ほら!
 垂れ目気味の目を細めながら、緩く癖のついた黒髪をかき上げるその仕草で、もう色気がやばくて勃ちそうになる。
 今日は普通に食事会だからここまでずっとエロい表情はしていなかったのに……一瞬でスイッチが入れられるのは尊敬するけど下半身に悪い。
 それに、俺とユキさんは仕事帰りだから無難なスーツなんだけど……ユキさん、いつの間にネクタイ外してシャツの胸元三つあけたんだ? そのスーツでそんなにエロくできるの、ユキさんくらいだと思う。

「あ、は、はい……すごく……! あの、俺、エッチで年上で美人な人が好きなの、ユキさんの影響です……! 初体験、最高だったんで!」
「よかった♡」

 ヨウくんが、ここにいるメンバーがホームにしているハッテン場でユキさんに筆おろししてもらったことはみんな知っている。
 知っているけど……ユキさんはみんなのアイドルみたいな存在なので、正直羨ましい。

「いいなぁ。俺も初体験はユキさんが良かった!」

 あ。羨ましいと思ったのは俺だけじゃなかったようだ。
 ため息交じりに声をあげたハルトは、チャラそうな外見のわりにゲイセックス歴がヨウくんとそう変わらないため、普段から二人で情報交換をして切磋琢磨する仲だ。それもあってか、本気で悔しがっているように見えた。

「ふふっ。俺もハルトくんの初体験もらってあげたかったなぁ。でも、ハルトくんはハッテン場に通うまでに脱童貞してたんじゃなかった?」
「そうなんッすよ。俺のゲイセックス初体験は、ゲイ風俗だったから気持ちいいのはすごく気持ちよかったし、優しいボーイさんだったから色々褒めたり教えてくれたりで最高だったけど……」
「けど?」

 ゲイ風俗でボーイをしているミミくんが首を傾げる。
 ボーイとして気になるんだろう。

「俺の財布が厳しくて、時間がたっぷりとれなかったのが辛い」
「あー……」
「それは……」

 みんなが憐みのような同情のような表情を向ける。
 ゲイ風俗は店によって時間設定も値段設定も様々だけど、最高の体験ができるような店なら……。

「いい風俗選んだから、ボーイさんのレベルが高い分料金も高くて……なんで四十五分コースにしたのか、今でもめっちゃくちゃ後悔してる……!」
「童貞で四十五分は短いね……」
「慣れていれば気軽にサクっと抜いて充分だけど、童貞ならちょっと焦る時間だろうな」

 ミミくんとケイくんの同情する声でふと気づいた。
 ……ハルトが早漏気味なのって……いや、黙っておこう。

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