ゲイのエッチなお兄さん

回路メグル

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本編2

わぁ、好みの外見すぎ♡【6】

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【side セイジ】


「セイジさんこんばんは~……そっちは昼ですか?」
「久しぶり、ソウタくん。あぁ、昼の二時くらいだよ」

 休日、フランスのオシャレだけど狭い単身用アパートで一人用のダイニングテーブルに置いたノートパソコンに向かう。
 俺の手元にはボルドー産の赤ワイン。パソコンの画面には日本にいるゲイ仲間のソウタくんがビール片手に写っていて、いわゆる「リモート飲み会」だ。
 
「休日の貴重な時間にすみません」
「全然いいよ。久しぶりに日本語で気兼ねなく話せるのが嬉しいし、ソウタくんがフランス旅行するなんてきいたら、ね?」

 数日前、ソウタくんから「今度フランスで開催されるマラソン大会に参加するんで、フランスのホテルとか食事とか色々教えてもらえませんか? あと、大会の前後にセイジさんに会いに行っても良いですか?」という連絡がきて、もちろん快諾し、今日のリモート飲み会兼打ち合わせになった。

「実は以前から参加してみたいマラソン大会があって、迷っていたんですよ。それで、調べたらセイジさんが今いる場所と大会の開催場所が近かったんで……これはいいタイミングかなと」
「俺も調べたけど、楽しそうな大会だね。給水所にワインが置いてあって、有名なシャトーを巡るんだよね? ワイン好きだから羨ましいな」
「だったらセイジさんも参加しましょうよ。セイジさん持久力あるしいけますよ」
「うーん。その持久力とは違うからなぁ。あぁ、そうだ。早速だけど、候補で送ってきていたホテルは来月から工事に入るらしくてね……」
「そうなんですね。最近SNSで話題のホテルだったから気になっていたんですけど……残念」
「オシャレなところだよね」
「セイジさんの部屋もオシャレそうですね?」
「オシャレだよ。でも……ちょっとカメラ動かすから見てよ。この狭さはひどくない?」
「え!? ビジネスホテル……?」
「じゃなくて、普通にアパートの一室。会社が借りてくれてるから文句言えないけど、こっちの都市部は家賃が高いうえに空きがなかなかなくて。広かったらホテルなんか取らずに泊りにおいでって言うんだけどね」
「広かったとしてもそこまで甘えませんよ。折角フランスまで行くなら話題のホテルに泊まりたいですしね」
「ははっ、じゃあ、そんなソウタくんにオススメのホテルがあるんだけどどう? フランスのテレビでよく取り上げられている新しいところで、大会会場へのアクセスもいいし、すぐそばに日本食の買えるスーパーもあるんだよ」
「あ、画面共有ありがとうございます……へー……! オシャレっていうかカッコイイ! いいですね、ここ!」

 気心の知れたソウタくんとの会話は楽しくてスムーズで、その後ホテルや予定がサクサク決まった。
 フランスの仕事仲間は気さくでいい人が多いし、フランス語にも自信があるけど、やはり母国語のゲイ仲間と話すのはいいな。落ち着く。
 落ち着くんだが……。

「……これで聞きたいことは全部聞けました!」
「他にも気になることあったらいつでも連絡して」
「はい。ありがとうございます」

 会話がひと段落したところで、ずっと……一ヶ月ほど前にソウタくんのSNSに上がっている写真を見てからずっと気になっていたことが頭をかすめる。
 ソウタくんは優しいから素直に訊けばいいのかもしれないが……。

「そういえば、ソウタくんのSNS、いつも楽しく見せてもらってるよ」
「本当ですか? 俺の更新頻度多いと思うんで、ウザかったらミュートしてくださいね」
「うざいなんて……日本のみんなが元気そうにしている様子も見られるし感謝しているよ」

 ソウタくんもユキくんのことが好きだと言っていた。
 俺の「好き」とは違って、「アイドルに対する好き」のような感情だとは言っていたが、そんな相手にデリケートなことを尋ねるのは気が引けて、遠回しな会話になってしまったのに……。

「セイジさん……」

 ソウタくんはビールの缶を煽ってから、少し揶揄うような笑顔で口を開いた。

「日本のみんなが、じゃなくてユキさんが、なんじゃないですか?」

 ……バレバレか。
 仕方がない。

「っ……いつもユキくんの写真を載せてくれてありがとう」
「いえいえ。自分のSNSに美人を載せたいからしているだけです」

 もう正直に訊こう。

「そういえば、最近俺の知らない子がよく映ってるよね? ほら、月島ゲンジに似ている……」
「あぁ、ケイくんですね。少し前に引っ越してきたタチで、歳が近いし気の良い奴なんでよく一緒にいます」

 俺の言葉に、ソウタくんはなんてことないように頷いた。
 この様子、安心してもいいのか……?

「そうなんだ。タチってことは……その……」
「あぁ、ユキさんもエッチしてましたよ」
「やっぱり……!」

 そうだよな。ユキくんが放っておくはずがない。
 外見が好みかどうかにかかわらず、だいたいのゲイとは一度関係を持ちたいと思っているような子だから当然か。

「あんなユキさん好みのかわいい塩顔イケメンで細マッチョ、ユキさんがつまみ食いしないわけがないじゃないですか。一目見た瞬間にエッチに誘っていましたよ」
「そう……か……」

 一目見た瞬間……それって一目惚れなんじゃ……?

「ついでにケイくん、極太の絶倫で、一晩中個室にこもってヤってることもあるくらい体力あるんですよ」
「極太……絶倫……」

 ユキくんの大好きなガンガン突かれて沢山かわいがってもらえるセックスができるわけか……。

「ユキさん、すごく気に入ったみたいで、一ヶ月で三回はヤってましたね」
「一ヶ月で三回……!」

 ユキくんにしてはハイペース。
 最高記録かもしれない。

「……ユキくん、その男のことが気に入ったんだな……」

 好きな子が楽しいなら喜ばしいことだ。
 しかし……

「……」

 口を開くと情けないことを言ってしまいそうで、無言で項垂れていると、画面の向こうからソウタくんのため息が聞こえた。

「はぁ……セイジさんって意外とユキさんのこと解っていないんですね?」
「え?」

 顔を上げると、ソウタくんはニコニコと人の良い笑顔でビールの缶を傾けた。

「先週、ユキさんが言っていたんですけど……『顔には飽きないけど、セックスには飽きちゃうんだよね』……だそうですよ」
「!?」

 脳内で、困ったような笑顔で、でも楽しそうにそう言うユキくんの姿が完璧に想像できた。
 そうか……そうだな……ユキくんは、そういう子だ。
 そうだった。

「最近はもう、顔を見て『かっこいい♡』って言うだけです」
「そう……か」
「セイジさん、前にユキさん好みの顔に整形しようかなとか言ってましたけど、しなくて良かったですね」
「ははっ、確かにそうだな」

 ユキくんの「好みの顔」でもユキくんを繋ぎとめていられないのか。
 そうか……

「……ぶれないなぁ。ユキくん。安心した」

 この様子なら、俺が帰国するまで……いや、その後も、ユキくんが一人の物になることはなさそうだな。
 誰の物にもならない。
 そして、俺の大好きな、自由奔放でいつでも刺激に囲まれて楽しそうにしているユキくんでいてくれるんだ。
 あぁ、なんでだろう。
 惚れ直した。
 俺、本当にユキくんのことが好きなんだな……。
 うん。

 俺が穏やかな気持ちでワインで口を潤していると、ソウタくんがおずおずと口を開いた。

「安心したところ申し訳ないんですが……」
「ん?」
「実は先週、ユキさんとイメージプレイしたんですよ」
「イメージ、プレイ……?」

 ソウタくん……?
 この話の流れで、なんで今そんなことを……?

「俺が童貞高校生で、ユキさんがエッチな保健室の先生って設定で」
「……!?」

 ユキくんが保健室の先生?
 しかも、相手が童貞……?
 
「白衣に眼鏡のユキさん、ものすっごかったんで……ちょっとだけ自慢していいですか?」

 白衣?
 眼鏡?

「あ……」

 色々と複雑な気持ちが渦巻く。
 渦巻くが…………………………………………素直に口を開いた。

「詳しくきかせて」

 俺もいい加減、色々とこじらせている自覚は……ある。



→次回更新予定【イメージプレイ編】
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