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本編2
リベンジ【1】
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一年半前、二三歳になりたてのころだ。
一八〇センチの長身で、真ん中で分けたアッシュブラウンの髪が似合う、ちょっとかわいい感じのアイドル顔という外見を生かしてホストになった俺は、なってすぐにそれなりに客がついて浮かれていた。
小学生の頃からずっとモテていたけど、やっぱり俺ってモテるな、と。金にできるレベルなんだ、と。
モテるのが好き。
あと、セックスも大好き。
男でも女でも顔がキレイなら抱けるバイセクシャルで、客への営業でもプライベートでもセックスの相手に困らなかった。
キレイな女やキレイな男を好き勝手に抱いて、俺の下でアンアン言わせるのが楽しかった。
俺は男として、タチとして、オスとして、すごく優秀だと思い込んでいた。
そんな風に調子に乗って派手に遊んでいたある日、俺はヤバイ男に出会った。
◆
「あ、うわ、うわぁ、あ、ひっ、うぐっ、やべ、俺、やばい、って! も、もう!」
「あはっ♡ 喘ぎ声すごくエッチでかわいい♡ 俺も興奮しちゃう♡」
「も、おれ、また、もう、イ、イく、イくッ!」
無難なラブホテルのベッドに寝転んだ俺の上で、めちゃくちゃ色っぽい美形の男が腰を振っている。
男が腰を振るたびに俺が喘ぐ。
まるで俺が突っ込まれているみたいだけど……違う。
突っ込んでいるのは俺の方だ。
「早いなぁ。かわいい♡」
「あ、ちょ、イ、イったから、またイったから! 腰、まじ、むり、いいひぃ、ひ、ぐっ、あ!」
イってもさらに責められて、チンコは蕩けそうで、頭も蕩けそうで、外見がキレイでアナルの具合が最高でテクニックも半端ない年上のキレイなお兄さんにとにかくどろっどろに溶かされていた。
他人から見れば「なんだよソレ、羨ましい」と言われるかもしれない。
でも、こんな好き勝手されて、男でタチの俺が大声で喘いでマグロでいるしかできないなんて情けなくて仕方が無かった。
……ものすごく気持ちが良かったけど。
「ごめんねぇ♡ 今日はかわいい子をかわいがりたい気分だったんだ。セナくんすごくかわいいから、気分がノってやりすぎちゃったぁ♡」
どうやらその日ゲイバーで引っ掻けた美形のネコ……「ユキさん」は、たまたまそういう気分で、徹底的に俺を昂らせて、責めて、潮吹きまでさせて、そんな様子を見ることに興奮していたらしい。
ものすごく気持ちが良かったけど、腹が立った。
ものすごく気持ちが良かったけど、情けなかった。
ものすごく気持ちが良かったけど、悔しかった。
ものすごく気持ちが良かったけど、男として、タチとして、自尊心が傷ついた。
ものすごく気持ちが良かったけど、俺は男として優秀なはずなのに。抱く側なのに。
……ものすごく気持ちが良かったけど。
「素敵なセックスありがとう。それじゃあ、俺がいるとゆっくり休めないと思うし、ついついまた襲っちゃいそうになるからもう出ていくね?」
「……は?」
「別の相手を探しに行くから、セナくんは安心して休んでいってね。朝までの部屋代、置いておくから」
「え? 別? は? 嘘?」
しかも、俺がイキすぎて一瞬気を失っている間に身支度を整え、何とか目を覚ましても腰が抜けて動けない間にホテル代を払ってユキさんは出ていった。
出ていくだけじゃない。「まだしたい」「別の相手を探す」と言った。
俺とのセックスに満足していないんだ。
俺はもうできないのに、ユキさんはまだまだできるんだ。
……。
もう、悔しいとか情けないとか言っている場合じゃないと思った。
「……絶対にリベンジしてやる……」
一年半前、俺はそう心に誓った。
◆
リベンジをすると決めた翌日から、俺はまずジム通いを始めた。
体力をつけるためと、セックスでよりアクロバティックな体位や責め方ができるようになるためだ。
ほぼ毎日二時間、休日はもっと長く。一生懸命通っていたら、すぐにジム仲間もできた。
「へ~。ホストっていうから女の子ウケがいいように体形維持するためだと思っていたら……セックスのためか。俺の目的もそんな感じだから、一緒に頑張ろう」
「しかもゲイセックスなのね。そういうことならお兄さんがアドバイスしてあげるわよ」
「ありがとうございます!」
ゲイが多めの街のジムを選んだお陰と、ホストを職業にしただけある俺のコミュ力で、ジムの常連の経験豊富なゲイのお兄さんたちからセックスが強くなる体の鍛え方や食生活のアドバイスをしっかり受けた。
特に、男の俺から見て一番「モテそう」と感じたセイジさんという歌舞伎役者みたいな顔のゲイは、セックスに必要な体の鍛え方を教えてくれるだけでなく、持久力を高めるサプリメントや射精管理についても教えてくれた。
更に、セックス中に触れ合って気持ちがよくなるような全身のスキンケア、香水の選び方、爪や口内のケアまで教えてくれて……ちょっと優し過ぎないか?
「なんでこんなに教えてくれるんですか?」
知り合って一ヶ月ほどたったころ、ジムで汗を流した後のロッカールームで質問すると、細マッチョの惚れ惚れする体のセイジさんは逆に不思議そうに首を傾げた。
「なんで……って?」
「だって、こういう男の武器みたいなのって、普通は隠すものだと思うんですけど。俺の方がセイジさんよりいい男になっちゃってもいいんですか?」
俺の言葉に、着替え途中で上半身裸のセイジさんは声をあげて笑った。
そんなにおかしいこと言ったか?
「ははっ! 俺よりいい男になる気なんだ? いいね。そういう気合の入った若い子は応援したくなる」
「セイジさん……?」
セイジさんがハンドクリームとハンドマッサージでしっかり手入れしている綺麗な……でも男らしい手で俺の肩をバンバンと遠慮なく叩く。
「それに、俺は本命の大好きな子がいて、その子のために自分磨きをしているだけだから」
まるで青春ドラマみたいなことを言いながらも、セイジさんの態度には大人の余裕というか、男の余裕のようなものを感じる。
イケメンでセックスに強い体格のベテランゲイ。
いいなぁ。こんな人ならユキさんを思い切りよがらせられるのかもしれない。
改めてセイジさんへの感謝と尊敬を感じていると、セイジさんが少し視線をそらしてごく小さな声で何か呟いた。
「……それに、ユキくんが楽しいセックスができるなら俺も嬉しいし」
……?
「なんか言いました?」
聞き取れなくて声をかけると、セイジさんは笑顔で首を振った。
「ん? なんでもないよ。でも、そうだなぁ。教えた理由っていうなら、イケメンホストのセナくんに、もっともっと人気になってもらって、うちの会社のワインをお客さんにたくさん飲んでもらって欲しいから……ってのもあるかな」
「そうか、セイジさんの会社ってあの高級ワインの輸入元ですよね? 了解です。お客さんにいっぱいオススメして、シャンパンタワーもワインタワーにしてもらいます!」
「頼もしいなぁ」
俺一人の売り上げなんて、もし俺がナンバーワンになったとしても大したことないのに、こんなことを言ってくれるところも、大人の余裕があってかっこいい。
よし、ますますセイジさんをお手本に頑張ろう!
一八〇センチの長身で、真ん中で分けたアッシュブラウンの髪が似合う、ちょっとかわいい感じのアイドル顔という外見を生かしてホストになった俺は、なってすぐにそれなりに客がついて浮かれていた。
小学生の頃からずっとモテていたけど、やっぱり俺ってモテるな、と。金にできるレベルなんだ、と。
モテるのが好き。
あと、セックスも大好き。
男でも女でも顔がキレイなら抱けるバイセクシャルで、客への営業でもプライベートでもセックスの相手に困らなかった。
キレイな女やキレイな男を好き勝手に抱いて、俺の下でアンアン言わせるのが楽しかった。
俺は男として、タチとして、オスとして、すごく優秀だと思い込んでいた。
そんな風に調子に乗って派手に遊んでいたある日、俺はヤバイ男に出会った。
◆
「あ、うわ、うわぁ、あ、ひっ、うぐっ、やべ、俺、やばい、って! も、もう!」
「あはっ♡ 喘ぎ声すごくエッチでかわいい♡ 俺も興奮しちゃう♡」
「も、おれ、また、もう、イ、イく、イくッ!」
無難なラブホテルのベッドに寝転んだ俺の上で、めちゃくちゃ色っぽい美形の男が腰を振っている。
男が腰を振るたびに俺が喘ぐ。
まるで俺が突っ込まれているみたいだけど……違う。
突っ込んでいるのは俺の方だ。
「早いなぁ。かわいい♡」
「あ、ちょ、イ、イったから、またイったから! 腰、まじ、むり、いいひぃ、ひ、ぐっ、あ!」
イってもさらに責められて、チンコは蕩けそうで、頭も蕩けそうで、外見がキレイでアナルの具合が最高でテクニックも半端ない年上のキレイなお兄さんにとにかくどろっどろに溶かされていた。
他人から見れば「なんだよソレ、羨ましい」と言われるかもしれない。
でも、こんな好き勝手されて、男でタチの俺が大声で喘いでマグロでいるしかできないなんて情けなくて仕方が無かった。
……ものすごく気持ちが良かったけど。
「ごめんねぇ♡ 今日はかわいい子をかわいがりたい気分だったんだ。セナくんすごくかわいいから、気分がノってやりすぎちゃったぁ♡」
どうやらその日ゲイバーで引っ掻けた美形のネコ……「ユキさん」は、たまたまそういう気分で、徹底的に俺を昂らせて、責めて、潮吹きまでさせて、そんな様子を見ることに興奮していたらしい。
ものすごく気持ちが良かったけど、腹が立った。
ものすごく気持ちが良かったけど、情けなかった。
ものすごく気持ちが良かったけど、悔しかった。
ものすごく気持ちが良かったけど、男として、タチとして、自尊心が傷ついた。
ものすごく気持ちが良かったけど、俺は男として優秀なはずなのに。抱く側なのに。
……ものすごく気持ちが良かったけど。
「素敵なセックスありがとう。それじゃあ、俺がいるとゆっくり休めないと思うし、ついついまた襲っちゃいそうになるからもう出ていくね?」
「……は?」
「別の相手を探しに行くから、セナくんは安心して休んでいってね。朝までの部屋代、置いておくから」
「え? 別? は? 嘘?」
しかも、俺がイキすぎて一瞬気を失っている間に身支度を整え、何とか目を覚ましても腰が抜けて動けない間にホテル代を払ってユキさんは出ていった。
出ていくだけじゃない。「まだしたい」「別の相手を探す」と言った。
俺とのセックスに満足していないんだ。
俺はもうできないのに、ユキさんはまだまだできるんだ。
……。
もう、悔しいとか情けないとか言っている場合じゃないと思った。
「……絶対にリベンジしてやる……」
一年半前、俺はそう心に誓った。
◆
リベンジをすると決めた翌日から、俺はまずジム通いを始めた。
体力をつけるためと、セックスでよりアクロバティックな体位や責め方ができるようになるためだ。
ほぼ毎日二時間、休日はもっと長く。一生懸命通っていたら、すぐにジム仲間もできた。
「へ~。ホストっていうから女の子ウケがいいように体形維持するためだと思っていたら……セックスのためか。俺の目的もそんな感じだから、一緒に頑張ろう」
「しかもゲイセックスなのね。そういうことならお兄さんがアドバイスしてあげるわよ」
「ありがとうございます!」
ゲイが多めの街のジムを選んだお陰と、ホストを職業にしただけある俺のコミュ力で、ジムの常連の経験豊富なゲイのお兄さんたちからセックスが強くなる体の鍛え方や食生活のアドバイスをしっかり受けた。
特に、男の俺から見て一番「モテそう」と感じたセイジさんという歌舞伎役者みたいな顔のゲイは、セックスに必要な体の鍛え方を教えてくれるだけでなく、持久力を高めるサプリメントや射精管理についても教えてくれた。
更に、セックス中に触れ合って気持ちがよくなるような全身のスキンケア、香水の選び方、爪や口内のケアまで教えてくれて……ちょっと優し過ぎないか?
「なんでこんなに教えてくれるんですか?」
知り合って一ヶ月ほどたったころ、ジムで汗を流した後のロッカールームで質問すると、細マッチョの惚れ惚れする体のセイジさんは逆に不思議そうに首を傾げた。
「なんで……って?」
「だって、こういう男の武器みたいなのって、普通は隠すものだと思うんですけど。俺の方がセイジさんよりいい男になっちゃってもいいんですか?」
俺の言葉に、着替え途中で上半身裸のセイジさんは声をあげて笑った。
そんなにおかしいこと言ったか?
「ははっ! 俺よりいい男になる気なんだ? いいね。そういう気合の入った若い子は応援したくなる」
「セイジさん……?」
セイジさんがハンドクリームとハンドマッサージでしっかり手入れしている綺麗な……でも男らしい手で俺の肩をバンバンと遠慮なく叩く。
「それに、俺は本命の大好きな子がいて、その子のために自分磨きをしているだけだから」
まるで青春ドラマみたいなことを言いながらも、セイジさんの態度には大人の余裕というか、男の余裕のようなものを感じる。
イケメンでセックスに強い体格のベテランゲイ。
いいなぁ。こんな人ならユキさんを思い切りよがらせられるのかもしれない。
改めてセイジさんへの感謝と尊敬を感じていると、セイジさんが少し視線をそらしてごく小さな声で何か呟いた。
「……それに、ユキくんが楽しいセックスができるなら俺も嬉しいし」
……?
「なんか言いました?」
聞き取れなくて声をかけると、セイジさんは笑顔で首を振った。
「ん? なんでもないよ。でも、そうだなぁ。教えた理由っていうなら、イケメンホストのセナくんに、もっともっと人気になってもらって、うちの会社のワインをお客さんにたくさん飲んでもらって欲しいから……ってのもあるかな」
「そうか、セイジさんの会社ってあの高級ワインの輸入元ですよね? 了解です。お客さんにいっぱいオススメして、シャンパンタワーもワインタワーにしてもらいます!」
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俺一人の売り上げなんて、もし俺がナンバーワンになったとしても大したことないのに、こんなことを言ってくれるところも、大人の余裕があってかっこいい。
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