ゲイのエッチなお兄さん

回路メグル

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本編2

ポリネシアンセックスのために、期間限定の恋人ごっこ【9】ー恋人4日目ー

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【恋人四日目 -ポリネシアンセックス三日目-】



 今日は俺もユキくんも少し残業で、ちょうど同じくらいの時間に終わりそうということだったので、ユキくんの会社の最寄り駅まで俺が愛車で迎えに行った。
 オフィスビルの並ぶビジネス街のはずれ、地下鉄の駅へと降りる階段の側で待っているとメールが入っていたが……。

「ユキくんと……女の子?」

 待ち合わせ場所には、通勤用の無難なスーツを着たユキくんと、少し真剣な顔で話し込んでいるスーツ姿の女の子が立っていた。
 スーツは地味なのに、アイドルグループにいそうな華やかな顔立ちの女の子だ。

「……あ! セイジさん」

 俺がすぐそばに車を停めるとユキくんが駆け寄ってくれた。

「お待たせ」
「わざわざありがとう」

 助手席のドアを開けて身を乗り出すと、ユキくんは先ほどまでの真剣な顔から一瞬でオフっぽい笑顔に変わった。
 そのユキくんの反応には安心したが、後ろの女の子は……?

「え~もしかしてぇ……?」

 ユキくんの後ろの女の子が、俺の顔へと視線を向ける。
 ちょっと媚びた感じのしゃべり方にイラっとしてしまうが……

「うん。自慢の彼氏」

 振り返ったユキくんがきっぱりと言うと、女の子は一気に華やかな顔を華やかな笑顔にした。

「やっぱり~! 先輩の好きそうな感じの人でお似合いですね~!」
「でしょ?」

 二人のやりとりに一瞬驚いて、すぐに何とも言えない照れが襲ってくる。

「あ、私後輩の田井中ですぅ。今日は私の仕事のトラブルのせいで先輩まで残業になってしまって……すみませ~ん!」

 田井中と名乗った女の子は申し訳なさそうな顔で頭を下げる。
 あぁ、なんだ。良い子じゃないか。
 話し方はちょっと独特だが。

「俺も残業だったからちょうど良かったよ。自慢の彼氏なんて嬉しい言葉も聞けたし」
「彼氏さん優しい~! 先輩がランチの時に惚気ていた通りですね!」
「惚気……?」
「田井中ちゃん、それ以上は恥ずかしいから内緒だよ?」
「え~? ってことは、先輩って彼氏さんに言ってないんですかぁ?」

 言ってない……?
 何をだ?

「ほら、時間遅いから気を付けて帰って。ね?」
「はーい! 今日はご迷惑かけてすみませんでしたぁ。明日は先輩の分もしっかり頑張りますね!」

 二人のやりとりに頭がついていかない間に、田井中さんは地下鉄の駅へと降りていった。

「セイジさん、ごめんね。賑やかで」

 ユキくんも助手席に乗り込んで、慣れた動作でシートベルトをつける。

「元気でかわいい後輩ちゃんだね。楽しく仕事ができそうだ」
「そう! ムードメーカーだし仕事ができる自慢の後輩。三つ年下なんだけど妙に気が合って、仲良いんだよ」
「俺のこと惚気るくらいに?」
「っ……!」

 車を走らせながら少し意地悪く声をかけると、ユキくんは声を詰まらせた後、照れたように窓の方を向く。
 ちなみに、俺もユキくんと同じくゲイであることを職場でオープンにしているし、一週間の恋人生活にあたって同棲をするということもあり「周囲に恋人の存在を明かしてもいい」という話はしていた。
 オープンなユキくんのことだから「ポリネシアンセックス楽しいよ♡」みたいなことを言っているかもしれないなとは思っていた。
 でも、まさか惚気てくれていたなんて……。
 俺との恋人生活を楽しんでくれているようで良かった。
 嬉しさよりも安心の方が大きい。
 そんな気持ちだったのに……

「だって、恋人って俺……」

 ユキくんがやはり、ドア側の窓の方を向いたまま、消え入りそうな声で呟いた。
 
「初めてだから……浮かれてる」

 初めて……?
 ユキくんが恋人を作らないのは知っていた。
 この五~六年、恋人がいる所は見たことが無かった。
 でも、心のどこかでは過去に恋人がいたんだろうと思っていた。
 こんなにモテる子が、こんなに魅力的な子、一度も付き合ったことが無いなんて……思わないだろう?

「俺、ユキくんの初めての恋人?」
「……うん」
 
 そうか。
 あぁ……そうか……。

「ユキくん……」
「セイジさん?」
「……どうしよう。嬉しくてたまらない」

 経験豊富なユキくんには、もう初めてのことなんてないはずなのに。
 こんな……。
 たった一週間とはいえ、こんな嬉しすぎる初めてがもらえるとは思わなかった。
 今すぐユキくんを抱きしめたいけど、今は運転中。
 自宅マンションまであと一ブロック……。

「……嬉しい?」
「あぁ。嬉しい。大好きな子の初めては何でも嬉しいけど……」

 マンションの一階駐車場に入った。

「嬉しすぎて、今すぐ抱きしめてキスしたい」
「セイジさん……」

 ユキくんがやっと俺の方を向いたのと、車が駐車場に停まったのはほぼ同時だった。

「俺も」
「んっ……!」

 ユキくんからキスをしてくれて、唇が離れたと思ったら、セックス中のような熱っぽい視線を向けられる。
 
「……セイジさん」

 唇が触れそうな至近距離で名前を呼ばれて、完全にスイッチが入った。
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