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本編2
ポリネシアンセックスのために、期間限定の恋人ごっこ【5】ー恋人2日目ー
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【恋人二日目 -ポリネシアンセックス一日目-】
「幸せすぎる……」
会社の昼休み、デスクで確認したスマートフォンの画面には「今日、ちょっと早く帰れるから晩御飯作って待ってるね♡」というユキくんからのメッセージが表示されている。
このメッセージだけじゃない。
昨夜、これからの一週間の生活のルールを仲良く決めて、恋人としてのルールも決めて、就寝時には軽くキスをして同じベッドで眠った。
おはようのキスも、いってらっしゃいのキスもした。
「先輩、昼飯行きませんかー……あ、今日はパンですか? 」
にやける顔を頑張って引き締めながら、昼食用に買ってきた家の近くにある有名ベーカリーの袋をデスクに置くと、時々昼飯に行く仲の後輩が後ろから声をかけてきた。
このパンも、出社時にユキくんと一緒にパン屋に寄って一緒に選んだものだ。
手作り弁当でもない、ただ「朝一緒に買った」というだけで食べ慣れたパン屋のパンが特別な物に見えた。
「あぁ、悪い。今週は持ってくることが多そうだ」
「……その締まりのない笑顔……もしかして……え~ちょっと、今度詳しく聞かせてくださいよ!」
俺は普通に返事をしたつもりだったが、後輩は急にニヤニヤと笑った後俺の背中を叩いてデスクから離れていった。
後輩の茶化す態度がまた、何とも言えないくすぐったい気分にさせられた。
◆
「ただいま」
「おかえりなさい♡」
恋人と一緒に住むどころか、恋人やセフレを家にあげた経験もない。
実家以外で「おかえりなさい」なんて言われたのは初めてで……ドアを開けてくれたユキくんは薄手のモスグリーンのハイネックのニットに細身のデニム、それにシンプルな紺色のエプロンという姿で……顔はいつもの色っぽい笑顔で……。
嬉しい気持ちと共に、なぜか脳内に「人妻」という単語が浮かんだ。
「……おかえりって言ってもらえるの嬉しいな。ずっと一人暮らしだから」
「本当? 実はこういう時に言ってみたい台詞もあるんだけど、今日は『一日目』だから我慢したんだよね」
ドアを閉めると、俺に抱き着いて軽く唇を啄んでくれたユキくんが言っているのは定番の「ご飯にする?」から始まるアレか。
……言われたかったがポリネシアンセックスのためだ、仕方がない。
「我慢して正解だよ。言われていたらユキくんを選んでた」
「もう♡ ほら、早くご飯食べて……一日目、しよう?」
俺からも頬に軽くキスをすると、ユキくんが嬉しそうに目を細めた。
どこからどう見ても、俺たちは同棲を始めたてのカップルだ。
「妹がよく食べに来るから、妹の好きな料理ばっかり上手くなるんだよね」
そんなことを言いながらユキくんが用意してくれた夕食は、一汁三菜の立派な夕食だった。
ひじき入りの豆腐ハンバーグに豆腐の味噌汁、ブロッコリーのおかか和え、ナスと鶏むね肉の煮びたし。
「メインと味噌汁で豆腐かぶっちゃった。ごめんね」
なんてことも言っていたが……。
驚いた。
昔から、「外食と自炊半々」と聞いていたし、「ダイエット中の妹に豆腐ハンバーグ作ってあげたら喜ばれて~」なんて話も聞いていた。
それでも、普段あまり生活感がないユキくんが普通に料理ができて一汁三菜の丁寧な食卓を用意してくれているところが……驚いた。
驚いたし、嬉しかった。
この嬉しさは、「俺のために作ってくれて嬉しいな」という気持ちはもちろんだが、「きっとこんなユキくんの姿、ゲイ仲間では俺しか知らない」という優越感からくる嬉しさが大きかった。
「いただきます」
「口に合うといいんだけど」
ユキくんは少し心配そうだったが、料理はどれもお世辞抜きに美味しくて……このダイニングテーブルに向かい合って座って、ユキくんの手料理を食べているという状況があまりにも幸せで……人生で食べたどんなご馳走よりも美味しく感じた。
「どれもとても美味しいよ。毎日食べたいな」
「レパートリー少ないからあと二日くらいしか無理。それに、セイジさんが料理得意なの知ってるからね?」
ユキくんが箸を置いて少し身を乗り出し、俺の顔を覗き込む。
「食べたいな♡」
「……じゃあ、明日は俺が作るよ」
「やった! 楽しみだな、セイジさんのご飯」
ユキくんの嬉しそうな顔を見て、俺も自然と笑顔になる。
作ってもらうことと同等に、作ってあげられることも嬉しかった。
「幸せすぎる……」
会社の昼休み、デスクで確認したスマートフォンの画面には「今日、ちょっと早く帰れるから晩御飯作って待ってるね♡」というユキくんからのメッセージが表示されている。
このメッセージだけじゃない。
昨夜、これからの一週間の生活のルールを仲良く決めて、恋人としてのルールも決めて、就寝時には軽くキスをして同じベッドで眠った。
おはようのキスも、いってらっしゃいのキスもした。
「先輩、昼飯行きませんかー……あ、今日はパンですか? 」
にやける顔を頑張って引き締めながら、昼食用に買ってきた家の近くにある有名ベーカリーの袋をデスクに置くと、時々昼飯に行く仲の後輩が後ろから声をかけてきた。
このパンも、出社時にユキくんと一緒にパン屋に寄って一緒に選んだものだ。
手作り弁当でもない、ただ「朝一緒に買った」というだけで食べ慣れたパン屋のパンが特別な物に見えた。
「あぁ、悪い。今週は持ってくることが多そうだ」
「……その締まりのない笑顔……もしかして……え~ちょっと、今度詳しく聞かせてくださいよ!」
俺は普通に返事をしたつもりだったが、後輩は急にニヤニヤと笑った後俺の背中を叩いてデスクから離れていった。
後輩の茶化す態度がまた、何とも言えないくすぐったい気分にさせられた。
◆
「ただいま」
「おかえりなさい♡」
恋人と一緒に住むどころか、恋人やセフレを家にあげた経験もない。
実家以外で「おかえりなさい」なんて言われたのは初めてで……ドアを開けてくれたユキくんは薄手のモスグリーンのハイネックのニットに細身のデニム、それにシンプルな紺色のエプロンという姿で……顔はいつもの色っぽい笑顔で……。
嬉しい気持ちと共に、なぜか脳内に「人妻」という単語が浮かんだ。
「……おかえりって言ってもらえるの嬉しいな。ずっと一人暮らしだから」
「本当? 実はこういう時に言ってみたい台詞もあるんだけど、今日は『一日目』だから我慢したんだよね」
ドアを閉めると、俺に抱き着いて軽く唇を啄んでくれたユキくんが言っているのは定番の「ご飯にする?」から始まるアレか。
……言われたかったがポリネシアンセックスのためだ、仕方がない。
「我慢して正解だよ。言われていたらユキくんを選んでた」
「もう♡ ほら、早くご飯食べて……一日目、しよう?」
俺からも頬に軽くキスをすると、ユキくんが嬉しそうに目を細めた。
どこからどう見ても、俺たちは同棲を始めたてのカップルだ。
「妹がよく食べに来るから、妹の好きな料理ばっかり上手くなるんだよね」
そんなことを言いながらユキくんが用意してくれた夕食は、一汁三菜の立派な夕食だった。
ひじき入りの豆腐ハンバーグに豆腐の味噌汁、ブロッコリーのおかか和え、ナスと鶏むね肉の煮びたし。
「メインと味噌汁で豆腐かぶっちゃった。ごめんね」
なんてことも言っていたが……。
驚いた。
昔から、「外食と自炊半々」と聞いていたし、「ダイエット中の妹に豆腐ハンバーグ作ってあげたら喜ばれて~」なんて話も聞いていた。
それでも、普段あまり生活感がないユキくんが普通に料理ができて一汁三菜の丁寧な食卓を用意してくれているところが……驚いた。
驚いたし、嬉しかった。
この嬉しさは、「俺のために作ってくれて嬉しいな」という気持ちはもちろんだが、「きっとこんなユキくんの姿、ゲイ仲間では俺しか知らない」という優越感からくる嬉しさが大きかった。
「いただきます」
「口に合うといいんだけど」
ユキくんは少し心配そうだったが、料理はどれもお世辞抜きに美味しくて……このダイニングテーブルに向かい合って座って、ユキくんの手料理を食べているという状況があまりにも幸せで……人生で食べたどんなご馳走よりも美味しく感じた。
「どれもとても美味しいよ。毎日食べたいな」
「レパートリー少ないからあと二日くらいしか無理。それに、セイジさんが料理得意なの知ってるからね?」
ユキくんが箸を置いて少し身を乗り出し、俺の顔を覗き込む。
「食べたいな♡」
「……じゃあ、明日は俺が作るよ」
「やった! 楽しみだな、セイジさんのご飯」
ユキくんの嬉しそうな顔を見て、俺も自然と笑顔になる。
作ってもらうことと同等に、作ってあげられることも嬉しかった。
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