ゲイのエッチなお兄さん

回路メグル

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本編2

ポリネシアンセックスのために、期間限定の恋人ごっこ【2】ー0日目ー

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「あれ? セイジさん?」
「ソウタくん?」

 普段は地元のハッテン場かアットホームなゲイバーに行くことが多いが、今日は久しぶりに隣町の大箱のゲイバーにやってきていた。
 ダンスフロアもあってゲイバーというよりクラブに近いこの店は、客層が若くナンパがしやすい。
 声をかけることもかけられることも多いが……今声をかけてきたのはナンパではなくゲイ仲間……同じタチであるソウタくんだ。

「よく来るんですか?」
「たまにね。今日はちょっと、気分を変えたくて」
「じゃあ、俺が声かけたら迷惑でした? すみません」
「いや、君ならいいよ。優しくて有名なソウタくん?」

 ソウタくんは確か俺より八歳年下……二四歳くらいか。
 平均的な身長に優しそうな顔、清潔感のある流行の韓流アイドル風の髪型や服で、ユキくんとは違った意味で誰からも好かれる……人畜無害で安心できる子だ。
 
「俺が優しいのはエッチの時だけですよ」

 カウンタ―の中のバーテンダーに軽いカクテルを頼みながら俺の隣のスツールに腰掛けたソウタくんは、確かに人畜無害ではあるが……。
 人が良いのに結構遊んでいるところが気が合って、普段よく行くハッテン場のサウナではゲイらしい話だけでなく、仕事やプライベートな話もする仲だ。
 そういえば、俺は仕事帰りでノーネクタイのカジュアルスーツ、ソウタくんはチノパンにジャケットだけど……服を着た状態で話す方が珍しいので違和感がある。

「ソウタくんこそ、ナンパしに来たんだろ? 俺なんかに声かけていていいの?」
「たまには、タチの先輩とじっくり話をするのも人生経験かなと思いまして。それに……」

 ソウタくんがバーテンダーからカクテルを受け取り、一口飲んでから俺の方を向いた。

「最近、サウナで見なかったから心配していました」
「あぁ……」

 ハッテン場のサウナには週に二~三回は通っていて、繁忙期に頻度が落ちることはあっても、一ヶ月も顔を出さなかったのはここ五年で初めてかもしれない。

「ハルトくんが寂しそうにしていましたよ『恋人できたのかな?』って」

 ハルトは俺とソウタくんの共通のタチ仲間で、俺がマナーやテクニックを仕込んでやった将来有望なタチだ。

「恋人か……だったらよかったんだけどな」
「違うんですか?」
「少し、仕事が忙しくて」
「でも、こっちの店に来る余裕はあるんですね?」

 優しいけど、鋭いんだよなソウタくんは。
 まぁ、彼なら言ってもいいか。

「……実は、海外転勤が決まったんだ」
「海外?」
「フランス本社にね。出世コースなんだよ。その準備や引継ぎで忙しかったんだ。フランス語も一応しゃべれるんだけど念のため教室に通ったりね」
「それは……おめでとうございます」
「ありがとう」

 俺の勤務先はフランスに本社がある食品メーカー。
 三二歳で本社に行かされるのはかなり早い方だ。

「寂しくなりますね」
「あぁ。みんなに会えないのは寂しいけど、フランスは楽しみだよ。パンやコーヒーが好きだから食べ物が楽しみだし、日本よりもゲイに優しそうだし」
「いつまで行くんですか?」
「さぁ。一~二ヶ月では帰れないってのは確かかな」
「そうなんですね……」

 なるべく明るく返すが、ソウタくんは表情を曇らせる。
 俺の強がりを見抜いているんだろう。聡い子だ。

「みんなには言わないんですか?」
「うーん。仕事のことを話していない子もいるから。ハルトとかヨウくんとか、仲良い何人かには連絡するつもりだよ」

 仕事が忙しくてなかなか時間が取れなかったのは本当で、今日やっと時間ができて……最初はいつものバーかハッテン場へ行くつもりだった。
 だが、どうにも気持ちがまとまらなくて……転勤のことをわざわざ言うべきなのか? どう切り出せばいいのか? ……悩んで、ついこっちの店に来てしまったんだ。
 それに……。

「ユキさんには?」

 あぁ、ほら。
 鋭すぎるよ、ソウタくん。

「……話さない、かな」

 なんとなく視線を自分の手元、酒のグラスに落としながら呟くと、ソウタくんが俺の顔を覗き込んだ。

「後悔しませんか?」

 ソウタくんの視線はやけに真剣で……観念するか……。

「……ソウタくん、俺ってそんなに解りやすかった?」

 誰にも言っていないのに。
 他のみんなと同じで、「ユキくんは俺のアイドル」くらいのノリでいたつもりなのに。
 気づかれていたのか。
 取り繕っていた自分が恥ずかしい。

「いえ、今ユキさんの名前が出なかったから気になっただけですよ」

 俺が顔を上げると、ソウタくんが肩をすくませる。
 それなら、よかったというべきか……今日はそこに気が回らないほど悩んでいるということか。

「……そうか……皆には内緒にしておいて欲しいな。ユキくんはみんなのアイドルだから」
「えぇ。俺のアイドルでもありますし」
「そうだったね」
 
 ソウタくんもユキくんに憧れていて、最初は自信が無かったのにユキくんとセックスをしてから自信を付けてとても魅力的なタチになった。
 彼にとってユキくんはアイドルであり恩人みたいなものだ。

「俺は、ユキさんの彼氏になりたいなんて畏れ多いことは思っていませんけど……セイジさんが一番『ユキさんの彼氏』に近いと思っていました。ユキさんと五回以上ヤっているのはセイジさんだけだし、二人でたまに食事も行っていますよね? セイジさんってユキさん好みの外見だし、テクニックもすごいし……」

 嬉しいことを言ってくれるが、それは単なる俺の努力だ。

「ユキくんの好みになれるように頑張っているからね。一時期、ユキくん好みの塩顔に整形しようかとも思っていたくらいに」
「え? 今でも充分かっこいいのに」
「俺、目力ありすぎるんだよ。一重に生まれたかった」
「一重の人が二重になりたいって話の方がよく聞きますけど……確かにユキさんは塩顔好きですよね。ほら、火曜日のドラマで主演やってる人とか」
「あぁ、主題歌も歌っている俳優だろ? あんな顔だったらな……」

 ユキくんが好きな芸能人をきかれたときに、「顔はあの歌手兼俳優さんで、体も込みならあの朝ドラとか出てた俳優さん」と答える歌手兼俳優の方だ。ユキくんはファンクラブにも入っているらしくて正直あの歌手兼俳優が羨ましくて仕方がない。

「あんな顔なら、ユキさんに告白していました?」
「……いや、しないな」
「ですよね」

 ユキくんが特定の相手を作らないことは周知の事実。
 それに、何度かみんなの前で告白されているユキくんを見たことがあるが……

「ごめん。本当にごめんね。俺、彼氏つくれないタイプだから……君みたいな素敵なタチに折角告白してもらってるのに、応えられないビッチで、ごめん……」

 こんな風に、振られた側よりも悲しそうにユキくんが謝る。
 告白が成功する可能性はゼロではないのかもしれないが、失敗した場合ユキくんにそんな顔をさせるのは辛い。
 だから、ユキくんを真剣に好きになればなるほど、告白できなくなるんだ。

「セイジさん、本当にユキさんのことが好きなんですね」
「……あぁ。五年は片想いしてる」
「……五年か……すごい忍耐力」
「持久力と我慢が俺の特技だから」

 この特技、良いのか悪いのか解らないな。
 ユキくんとのセックスでは役に立っているが。

「持久力……忍耐力……」

 ……?
 ソウタくんが俺の言葉を聞いて急に何か考え込む。
 おかしなことは言っていないと思うが……?

「……セイジさん、フランスに行くまでに、もう一回くらいユキさんとしたいと思っていませんか?」
「そりゃあしたいよ。でも、最近3Pだけどユキくんとヤったところだから、難しいかな」

 さっき話に出たハルトを巻き込んで、数ヶ月前に今年二回目のセックスをさせてもらった。
 年に一回のペースだったのに年に二回もできて今年はラッキーだなと思っていたくらいだ。
 なりふり構わず「フランスに行くのでお願いします最後に抱かせてください」と土下座でもすれば、ユキくんは優しいから抱かせてくれるとは思うが……そんなことをしてもユキくんが楽しめないからしたくはない。
 それはソウタくんも解っていると思うが……?

「いえ、もしかしたら大丈夫かもしれませんよ」
「大丈夫……?」

 ソウタくんがにこにこと人当たりの良い笑顔を俺に向けた。

「餞別代りにいいこと教えてあげます。俺には無理だけど、セイジさんならきっとできるので」

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