65 / 190
本編2
ポリネシアンセックスのために、期間限定の恋人ごっこ【1】ー0日目ー
しおりを挟む
朝、目が覚めた瞬間に愛しい恋人の顔が見える。
絶世の美人ではないかもしれないが、誰もが「美人」と答える美形で、垂れ目気味の目を嬉しそうに細めるところが色っぽい。少し癖のある黒髪を耳にかける仕草も色気があって、寝起きの頭が一気に冴える。
「おはよう、セイジさん♡」
先に起きているのに、俺の腕の中で待っていてくれたようで……。
色っぽいのにかわいい。俺の恋人は今日も最高だ。
「おはよう、ユキくん」
「ん……ふふっ♡」
抱きしめなおしながら唇を啄むと、嬉しそうに恋人からも啄み返してくれる。
調子に乗っておそろいのスウェットの中に手を入れれば、やんわりと止められる。
「あ、だめ。これ以上は夜……ゆっくり、ね?」
「あぁ。ゆっくりしよう」
二人でベッドから起きて、軽く身支度を整えてからキッチンへ向かう。
「今日は少し遅くなるかも」
「俺も早くはないかな……時間が合えば車でそっちまで行くよ?」
「ありがとう。時間解ったら連絡するね」
今日の予定を話ながら、恋人がコーヒーを淹れてくれて、俺がパンをトースターにセットし、ヨーグルトや野菜など冷蔵庫からそれぞれが食べたいものをテキトーに取り出す。気心の知れた同棲カップルらしいいい具合に肩の力の抜けた朝食がダイニングテーブルに並んだ。
「いただきます」
「いただきます」
「今日も美味いな、ユキくんが淹れてくれるコーヒーは」
「セイジさんが美味しい豆買ってくれたからだよ。でももうなくなったから帰りにコーヒー屋さん寄らない?」
テキトーな朝食、普通の会話。
それでも、ダイニングテーブルに向かい合って恋人のキレイな顔を見ながら食べる朝食は、三ツ星ホテルや老舗旅館の朝食よりも確実に美味いと感じる。
食後、食器を洗っている後ろから抱き着いても「も~洗いにくいよ?」なんて言いながら好きにさせてくれるのもかわいいし、「今日はセイジさんのネクタイ貸して♡」なんて言ってもらえるのも同性の同棲カップルの特権であまりにかわいい。
仕事へ出かける時にはいってらっしゃいのキスをしてくれて……これで一日頑張ろうと思える。
あぁ、俺はなんて幸せなんだ。
おそらく、この瞬間世界一幸せなのは俺だ。
……この幸せは、あと四日間だけだが。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺はこの五~六年、ユキくんという男の子にずっと片想いをしていた。
ユキくんは外見の良さに加えて、エッチが好きで好きでたまらないというのがにじみ出ているため、モテる。尋常ではないほどモテる。
本人にもモテる自覚があって、その日の気分で様々な男と寝る魔性のゲイ、ビッチ、メスお兄さん……遊び人といえばそうなのだが、不思議とみんなに好かれる……まぁそんな子だ。
俺が通っていたハッテン場に初めてやってきた時からそうで、最初は「俺も一回位お相手してもらいたいな」程度だった。
しかし……初めてユキくんを抱いた日、あまりに楽しそうにセックスをするユキくんに心臓を鷲掴みにされた。
確か、ユキくんが二一歳、俺は二六歳くらいの時だ。
そのころの俺は、「歌舞伎役者みたい」と言われる流し目が得意な和風のそこそこ整った顔で、身長も一七九センチと高い方。和顔に合わせた黒髪の緩く後ろに流した七三分けもこのころから定着していて、体形や服装、スキンケア、外見には気を使っていた。ペニスも平均よりは大きくて、持久力自慢でもあって、同年代のタチの中ではモテる方。相手には困っていなかった。
ユキくんほどではないが、セックスが好きで、気ままにワンナイトを繰り返して、色々なネコの男の子と寝るのは楽しかった。
楽しかったが……。
何年も遊ぶうちに、だんだんセックスが面倒になってきていた。
特に俺が面食いなのが良くなかった。
美形のネコを捕まえて、タチとして相手に奉仕して、喜ばせて、よがらせるセックスが俺の定番で、俺が好きなセックスだと思っていたが……「俺はこんなに美しいんだから奉仕されて当然」という態度の美形が多く、その態度に気持ちが萎えることが多かった。
美形に奉仕はしたい。
でも、それをもっと素直に喜んで欲しい。
そんなセックスができる相手を求めていて……できたのが、ユキくんだった。
「そんなこともしてくれるの?」
「それ大好き、嬉しい♡」
「んんっ、感じてるセイジさんかっこいい♡ 顔見てしたい♡」
「セイジさんおちんちん大きい、もっと欲しい♡」
「こんなに長時間可愛がってくれる人、最高♡」
俺の体を、俺がやることを、全て喜んで全力で楽しんでくれた。
こんなに美人なのに素直に喜ぶユキくんは本当にかわいくて仕方が無くて、もっともっと、いくらでも奉仕して、かわいがってやりたかった。
毎日でも誘いたかった。
……しかし、ユキくんは同じ相手と何度も寝るタイプではなかった。
馴染みのハッテン場で、ユキくんとの二回目を望む男を何度も見かけたが、一度寝てすぐに二回目が成功することはほとんどなかった。
「ユキさん、先週は最高だったね。今日もどう?」
そんな風に誘われれば、ユキくんはいつも困った笑顔で断ってしまう。
「うーん。今日はちょっと違うエッチの気分なんだ。ごめんね?」
とか、
「ごめんね。俺、何度もすると飽きちゃうから、もう少し期間あけてからでいい?」
こんな風に。
かなりビッチな発言ではあるが、みんなユキくんがセックスが好きすぎて、真剣にセックスを楽しもうとしていることを知っているので「ユキくんが楽しめるのが一番だから仕方がないな」「ユキくんを狙っている男は多いから、独占するのも良くないし」なんて言いながら納得していた。
俺も納得したふりをして……重いことを言ってユキくんに嫌われるのが怖くて、何度も誘ってユキくんに飽きられるのが怖くて……年に一回程度しかセックスのお誘いができないでいる。
年に一回でも彼に飽きられないように、ジムで彼好みに体を鍛えて、セックスのテクニックを磨いて、時には他のタチを巻き込んで刺激的な3Pに誘って……。
ユキくんに恋人ができる気配もないし、このまま数年ユキくんの友達として過ごし、彼も俺も性欲が落ち着いたころにまた違った関係が作れればいいと思っていた。
俺は一歩踏み出す勇気が無い、臆病者だった。
絶世の美人ではないかもしれないが、誰もが「美人」と答える美形で、垂れ目気味の目を嬉しそうに細めるところが色っぽい。少し癖のある黒髪を耳にかける仕草も色気があって、寝起きの頭が一気に冴える。
「おはよう、セイジさん♡」
先に起きているのに、俺の腕の中で待っていてくれたようで……。
色っぽいのにかわいい。俺の恋人は今日も最高だ。
「おはよう、ユキくん」
「ん……ふふっ♡」
抱きしめなおしながら唇を啄むと、嬉しそうに恋人からも啄み返してくれる。
調子に乗っておそろいのスウェットの中に手を入れれば、やんわりと止められる。
「あ、だめ。これ以上は夜……ゆっくり、ね?」
「あぁ。ゆっくりしよう」
二人でベッドから起きて、軽く身支度を整えてからキッチンへ向かう。
「今日は少し遅くなるかも」
「俺も早くはないかな……時間が合えば車でそっちまで行くよ?」
「ありがとう。時間解ったら連絡するね」
今日の予定を話ながら、恋人がコーヒーを淹れてくれて、俺がパンをトースターにセットし、ヨーグルトや野菜など冷蔵庫からそれぞれが食べたいものをテキトーに取り出す。気心の知れた同棲カップルらしいいい具合に肩の力の抜けた朝食がダイニングテーブルに並んだ。
「いただきます」
「いただきます」
「今日も美味いな、ユキくんが淹れてくれるコーヒーは」
「セイジさんが美味しい豆買ってくれたからだよ。でももうなくなったから帰りにコーヒー屋さん寄らない?」
テキトーな朝食、普通の会話。
それでも、ダイニングテーブルに向かい合って恋人のキレイな顔を見ながら食べる朝食は、三ツ星ホテルや老舗旅館の朝食よりも確実に美味いと感じる。
食後、食器を洗っている後ろから抱き着いても「も~洗いにくいよ?」なんて言いながら好きにさせてくれるのもかわいいし、「今日はセイジさんのネクタイ貸して♡」なんて言ってもらえるのも同性の同棲カップルの特権であまりにかわいい。
仕事へ出かける時にはいってらっしゃいのキスをしてくれて……これで一日頑張ろうと思える。
あぁ、俺はなんて幸せなんだ。
おそらく、この瞬間世界一幸せなのは俺だ。
……この幸せは、あと四日間だけだが。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺はこの五~六年、ユキくんという男の子にずっと片想いをしていた。
ユキくんは外見の良さに加えて、エッチが好きで好きでたまらないというのがにじみ出ているため、モテる。尋常ではないほどモテる。
本人にもモテる自覚があって、その日の気分で様々な男と寝る魔性のゲイ、ビッチ、メスお兄さん……遊び人といえばそうなのだが、不思議とみんなに好かれる……まぁそんな子だ。
俺が通っていたハッテン場に初めてやってきた時からそうで、最初は「俺も一回位お相手してもらいたいな」程度だった。
しかし……初めてユキくんを抱いた日、あまりに楽しそうにセックスをするユキくんに心臓を鷲掴みにされた。
確か、ユキくんが二一歳、俺は二六歳くらいの時だ。
そのころの俺は、「歌舞伎役者みたい」と言われる流し目が得意な和風のそこそこ整った顔で、身長も一七九センチと高い方。和顔に合わせた黒髪の緩く後ろに流した七三分けもこのころから定着していて、体形や服装、スキンケア、外見には気を使っていた。ペニスも平均よりは大きくて、持久力自慢でもあって、同年代のタチの中ではモテる方。相手には困っていなかった。
ユキくんほどではないが、セックスが好きで、気ままにワンナイトを繰り返して、色々なネコの男の子と寝るのは楽しかった。
楽しかったが……。
何年も遊ぶうちに、だんだんセックスが面倒になってきていた。
特に俺が面食いなのが良くなかった。
美形のネコを捕まえて、タチとして相手に奉仕して、喜ばせて、よがらせるセックスが俺の定番で、俺が好きなセックスだと思っていたが……「俺はこんなに美しいんだから奉仕されて当然」という態度の美形が多く、その態度に気持ちが萎えることが多かった。
美形に奉仕はしたい。
でも、それをもっと素直に喜んで欲しい。
そんなセックスができる相手を求めていて……できたのが、ユキくんだった。
「そんなこともしてくれるの?」
「それ大好き、嬉しい♡」
「んんっ、感じてるセイジさんかっこいい♡ 顔見てしたい♡」
「セイジさんおちんちん大きい、もっと欲しい♡」
「こんなに長時間可愛がってくれる人、最高♡」
俺の体を、俺がやることを、全て喜んで全力で楽しんでくれた。
こんなに美人なのに素直に喜ぶユキくんは本当にかわいくて仕方が無くて、もっともっと、いくらでも奉仕して、かわいがってやりたかった。
毎日でも誘いたかった。
……しかし、ユキくんは同じ相手と何度も寝るタイプではなかった。
馴染みのハッテン場で、ユキくんとの二回目を望む男を何度も見かけたが、一度寝てすぐに二回目が成功することはほとんどなかった。
「ユキさん、先週は最高だったね。今日もどう?」
そんな風に誘われれば、ユキくんはいつも困った笑顔で断ってしまう。
「うーん。今日はちょっと違うエッチの気分なんだ。ごめんね?」
とか、
「ごめんね。俺、何度もすると飽きちゃうから、もう少し期間あけてからでいい?」
こんな風に。
かなりビッチな発言ではあるが、みんなユキくんがセックスが好きすぎて、真剣にセックスを楽しもうとしていることを知っているので「ユキくんが楽しめるのが一番だから仕方がないな」「ユキくんを狙っている男は多いから、独占するのも良くないし」なんて言いながら納得していた。
俺も納得したふりをして……重いことを言ってユキくんに嫌われるのが怖くて、何度も誘ってユキくんに飽きられるのが怖くて……年に一回程度しかセックスのお誘いができないでいる。
年に一回でも彼に飽きられないように、ジムで彼好みに体を鍛えて、セックスのテクニックを磨いて、時には他のタチを巻き込んで刺激的な3Pに誘って……。
ユキくんに恋人ができる気配もないし、このまま数年ユキくんの友達として過ごし、彼も俺も性欲が落ち着いたころにまた違った関係が作れればいいと思っていた。
俺は一歩踏み出す勇気が無い、臆病者だった。
50
お気に入りに追加
2,511
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる