ゲイのエッチなお兄さん

回路メグル

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番外編1(全13話)

【番外編】若頭(改造巨根)と舎弟の話【13】

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「悪い。無茶させた。あんなに自制が効かなくなるとは思わなかった」
「え!? 俺、めちゃくちゃ嬉しかったっすよ!」

 翌朝、いつも以上に足腰がガタガタでベッドから起き上がれない俺に、タカさんが頭を下げた。
 そんな必要、全くないのに。

「それに、タカさんのチンポを全部受け入れられて嬉しいっす! 満足っていうか……」

 タカさんと深く繋がれる嬉しさもあるし、今まで頑張った甲斐があったってのも嬉しい。俺のアナル、成長したなぁ。
 腰は痛いけど締まりのない笑顔を浮かべてしまっていると……あれ? なんでタカさんまた頭を下げるんだ?

「……悪い」

 何が?
 今度こそ、謝られる理由が解らない。

「結腸には届いたが、もう少し入っていない」
「え?」

 あれで?
 すっげぇ深かったのに?

「そんな……」

 思わず声が震えた。

「悪い。あれより奥なんて怖いだろう? 無理にこれ以上は……」

 タカさんが何か謝っているけど耳に入らない。
 体も声も震える。
 怒りで。

「何で、全部入れてくれてないんですか!?」
「……」
「次は絶対に全部入れてくださいよ?」
「……」
「チッ……全部入ったと思って喜んだのに……」
「……」
「早くタカさんともっと深く、全部繋がりてぇ……」
「……」
「あー……俺ももっとアナルの開発しねぇと」
「……」

 優しすぎるタカさんの気遣いと、そういう風に情けをかけられてしまう自分の不甲斐なさに、怒りが沸いて仕方がない。
 俺がもっとしっかりすればいいんだよな。頑張ろう。

「リョウ……」
「わっ! え? タカさん?」

 俺の言葉をじっと無言で聞いていたタカさんが、急にベッドに飛び込んで俺の体を抱きしめる。

「……次は絶対に全部突っ込む」

 腕、強い、腰痛ぇ……なんで急に?
 よくわからないけど……入れてくれるならなんでもいいか。

「はい! 楽しみにしてます!」

 次のセックスが楽しみで楽しみで仕方がなかった。


      ◆


 タカさんと結腸をキメた数日後、ミミから連絡があった。
 例のノンケへの復讐がうまくキマって、ミミの友達は無事に良い仕事ができたということだ。
 顔も見たことない奴だけど、よかったな。
 そして……

「「「「マオちゃん、おめでとう! かんぱーい!」」」」

 ミミの友達……マオという髭熊系のゲイが、協力者にお礼をしたいと言うことで、小さなゲイバーを貸し切って簡単な打ち上げを開催した。
 俺は車で待っていただけなのに、タカさんと一緒に招待されて、ゲイバーに入ってからずっとタカさんに腰を抱き寄せられている。
 俺は役に立っていないし、タカさん以外で面識があるのはミミだけだし、ゲイでもないから少し居心地が悪い。
 何より、ここには当然あのメモを書いた「ユキさん」もいるわけで……。

「タカさん♡ この前はありがとう♡」
「ユキさん……借りを返しただけだ。礼には及ばない」
「借り? そんなのあった?」

 タカさんに話しかけてきた「ユキさん」は、癖のある黒髪のモデル体型美人で……。
 美人で……。

「あんた……」
「ん?」
「アダルトグッズの店で……!」

 ローションだのゴムだのをアドバイスしてきた男だった。
 これだけの美形、見間違うはずがない。
 普通、こんな偶然あるか?
 ないよな?
 ……もしかして……?

「……」
「さぁ?」

 隣にいたミミを睨みつけると、とぼけた顔で肩をすくませやがった。
 その顔は絶対に確信犯だろ!

「タカさん、話には聞いていたけど素敵なパートナーさんだね。よかったね♡」
「全部ユキさん、あんたのお陰だ。いくら感謝してもしたりない」
「きっと俺がいなくてもいつかは付き合っていたと思うけどな♡ あ、でも……」

 タカさんの方を向いていたユキさんが、俺の方へ妙に色気のある笑顔を向けてくる。

「ねぇ、セックス気持ちいい?」

 ……色気のある笑顔だけど……なんだろう。少し心配しているような……。 

「……あぁ。すっげぇ気持ちいい」

 素直に返事をすると、ユキさんはあまり色っぽくない満足そうな笑顔になった。

「よかった。それだけは俺のお手柄かな?」

 ……ユキさんは俺より先に、俺より上手く、タカさんとセックスをした人だ。
 嫉妬や悔しい気持ちが無いわけではない。
 でもそれ以上に……

「あぁ、そうだと思う。ありがとう……ユキさん」

 感謝の気持ちの方が強くて、素直に頭を下げた。
 この人がいなければ、あのメモを渡してくれなければ、俺はタカさんとセックスできていない。
 タカさんの役に立てていない。
 タカさんと恋人になれていない。
 タカさんとのセックスを……こんなにも気持ちいいと思えていない。

「ふふっ。お幸せにね」

 俺の返事にまた満足そうに笑ったユキさんは、俺とタカさんに手を振って他の男たちのテーブルへと歩いていった。

「ユキさん、いい男っすね」

 ノンケへの復習計画といい、ただのビッチかと思ったらそうでもないようで……悔しさと感謝と尊敬とが入り混じりながら呟くと、タカさんは小さなため息をつきながら頷いた。

「気持ちは解るけどなぁ……」

 あれ? なんで不機嫌?
 さっきまでユキさんとにこやかに話していたのに?

「俺の隣で、他の男を褒めるな」
「……!」

 え?
 嫉妬……ってことだよな?
 ユキさんも抱かれる方なのに。
 普通は俺が嫉妬する方だと思うのに。
 もしかして、入店からずっと腰を抱いてるのも、俺が他のゲイに狙われないようにか?

「……あ、うわ……ユキさんにマジで感謝しねぇと!」
「だから……」

 タカさんが言葉を濁した後、舌打ちをして俺から視線を外す。
 怒っているようだけど、耳が赤くて……か、かっわいい!
 タカさんにかわいいなんて思っちゃいけないけど、すごくかわいい!
 かわいいし……なんか、すっごく……嬉しいっていうか……。

「あ、あの……タカさん……」
「なんだ?」

 タカさんが誤魔化すように酒の入ったグラスを煽る。
 あぁ、やっぱりかわいい。タカさん、すげぇかわいい……。
 かわいくて、嬉しくて、心臓が高鳴る。
 つまり……

「なんか俺、すっげぇセックスしたい……っす」

 他の奴に聞こえないように、タカさんに聞こえるか心配なくらい小声だったけど、どうやらきちんと聞こえたみたいだ。

「……!?」

 タカさんがめちゃくちゃ驚いた顔で俺の方を見た。
 今までに、タカさんの役に立ちたくて抱いてくれとは言ったけど、使ってくれとは言ったけど……。
 俺がヤりたくてヤりたくてたまらなくて「セックスしたい」と言ったのは初めてかもしれない。

「リョウ……あぁ、クソ……」

 タカさんが緩んでしまう表情を無理やり抑え込んでいるような微妙な顔をして、酒の入ったグラスをテーブルに置いた。
 腰を掴む手に力が入って、握りつぶされそうだった。


      ◆


 ゲイバーを早々に後にして、一番近くにある狭いラブホに駆け込んだ。
 貪りあうように、性急に服を脱がし合ってベッドになだれ込んだけど、今日は後ろの準備をしていない日。
 抱き合って、キスをして、手や口で丁寧に高め合うだけ。
 でも、それがすごく気持ち良くて、すごく満たされた。
 性欲がって言うか、気持ちが……?
 
 やっべぇなぁ……。
 俺、どんどんセックスが好きになる。
 
「ん……」

 セックスを終えても俺はタカさんの腕の中にいる。
 高級なホテルのベッドでも、タカさんの家のこだわりベッドでもない、ラブホのデカいだけで安っぽいベッドなのに、すごく気持ちが良くて……すげぇ幸せだ。
 タカさんを幸せにするつもりが、俺がこんなに幸せで良いのか?
 なんか申し訳ない気もするけど……

――お幸せにね

 ふと思い出したユキさんの別れ際の言葉と、俺の隣で無防備に眠るタカさんの緩んだ寝顔に、俺も幸せになっていいのかもなと思えた。

「タカさん、これからもいっぱいセックスしてくださいね」

 タカさんの役に立ちたいのは変わらない。
 でも、タカさんとのセックスはもう、タカさんのためだけじゃない。

 俺、タカさんが恋人として好きなった。
 セックスも好きになった。

 ……タカさんとのセックスが、すげぇ好きになった。

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