ゲイのエッチなお兄さん

回路メグル

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番外編1(全13話)

【番外編】若頭(改造巨根)と舎弟の話【10】

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 ミミの友達を陥れたノンケの男への復讐計画はこうだ。
 ユキさんというエロい美人がノンケ男にゲイセックスの楽しさを教えた後、ノンケ男よりも上手いセックスや質のいい男とのセックスをみせつけて自尊心をバッキバキにする。
 上げて、落とす。
 精神的に追い詰める。
 えぐい。
 ヤクザの俺よりえぐいこと思いつくな、そのユキさんは。
 ちょっと尊敬する。さすがあのメモの人だ。

 そして、この計画の中でタカさんの役目はもちろん……。

「じゃあ行ってくる」
「はい。気を付けて。俺、向こうの駐車場で待機してるんで」
「あぁ。少し長くなるが頼む」

 ハッテン場になっているサウナのあるビルへとタカさんが入っていく。
 ハッテン場で、ノンケ男の目の前であの最強改造巨根を見せつけて、自信喪失させる役。
 ユキさんに「あぁん♡ ノンケの租チンと違って、パール入りの巨根最高♡」って言われる役。
 あの改造巨根を見れば、租チンじゃなくても心が折れるからめちゃくちゃ適役。

「……」

 近くのパーキングに車を止めて、タカさんが入っていったビルを眺める。

「……」

 タカさん、ユキさんって人のこと、気に入ってるんだな。
 つーか、ノンケをメロメロにおとすって……ユキさんはものすごく美人でテクもすごいんだろうな。

「……」

 タカさん、見せつけるって……ヤんのかな?
 そのノンケの前で、ユキさんをアンアン言わせんのかな……。
 ……俺よりも上手な人とセックス、すんのかな……。
 
「嫌だなぁ………………あれ?」

 いや、違うだろ?
 タカさんが楽しくセックスできるならいいじゃないか。
 俺は、他の人ができないから、俺を使ってもらっているだけで、別に、もっと上手なセックスができる人がいるなら、タカさんが楽しめるなら、喜ばしいことじゃないか。

 そう思うのに。 

「タカさんも、俺専用ならいいのに……」

 こんな調子に乗ったことを思ってしまった。
 俺はただの舎弟なのに。
 俺は特別じゃないのに。

 左手首にはまった腕時計が、妙に重く感じた。
 

      ◆


「待たせたな」

 ハッテン場に入ってから三時間ほどでタカさんが戻ってきた。

「お疲れ様です!」

 車から降りて、後部座席のドアを開き、タカさんが座ったのを確認してゆっくりとドアを閉めた。

「上手くいきました?」
「あぁ。あのノンケ、俺のチンポを見て震えてやがった。このチンポもなかなか役に立つな」

 運転席に戻って、バックミラー越しに見るタカさんの顔はとても上機嫌で……髪が少し乱れている。
 ……ユキさんとヤったんだろうな……見せつけたんだろうな。

 ……楽しかったんだろうな。

「……リョウ?」

 つい変なことを考えて黙ってしまった俺を、タカさんが怪訝そうに見ていて我に返った。

「へ? あ、はい! すげぇっすよね! アニキのチンポ! でも、それが入るユキって人もすげぇなって」
「リョウ?」

 バックミラーから目を逸らして、エンジンをかけようとするけどなぜか上手くできない。
 あれ?

「俺、慣れてきたけど、まだまだうまくできねぇし」
「おい、リョウ!」
「え……!」

 タカさんに肩を掴まれて無理やり後ろを向かされる。
 まずい。
 ばれた。

 泣いてるの、ばれた。

「あ……っ、俺……すんません……こんなめんどくさい、こと、すんません」
「……悪い」

 俺の顔を見たタカさんが泣きそうな顔になる。
 やさしい人だ。
 でも、タカさんが悪いことなんて何一つない。

「ちがいます、俺が……」
「俺が悪い。勘違いさせた」
「……かんちがい?」

 タカさんが顔を近づけて、真っすぐ俺を見つめて、ゆっくり、俺に言い聞かせるように口を開く。

「抱いてない」
「……だいてない?」
「ユキさんとは、個室に入ってヤっているふりをしただけだ。抱いてない。ユキさんは後ろの準備もしていなかったし、俺も入れるつもりはなかった」
「……え、なんで……?」

 俺の開発途中のアナルより、極上の出来上がったアナルの方がいいんじゃ……?
 首をひねる俺を、タカさんは悔しそうな表情で睨みつけた。
 どうしよう。
 俺、何か怒らせた?
 あれ?

「お前がいるのに、他の奴を抱くわけがないだろう!」

 タカさんは怒鳴った後、唇をかんで、少し視線を逸らしてから、またすぐに俺と視線を合わせてくれた。

「俺のために、ここまで頑張ってくれる奴を、裏切るわけがないだろう? ……お前が俺専用なんだから、俺はお前専用だ」
「せんよう?」
「俺はもう、お前を懐に入れたつもりでいた。俺だけが浮かれていたのか?」
「ふところ?」
「……お前、俺のことが好きなんだろう? 俺はその気持ちを便利に使うだけの男に見えるか?」

 タカさんの声は力が入りすぎていて、微かに震えていた。

「タカさん……?」

 ためらいながら名前を呼ぶと、タカさんは一瞬表情を緩めて深く呼吸をした後、ものすごく真剣な顔を俺に向けた。

「……俺は、お前のことを恋人だと思っている」
「こいびと?」

 俺が? タカさんの?
 俺みたいなのが?

「違うのか?」

 タカさんの顔が近づく。

「なぁ?」

 俺なんかに、懇願するような顔で、肩を掴む手が痛いくらいに食い込んで……。
 タカさん……?

「タカさん……俺でいいんすか?」

 やっと絞り出せた一言を聞いたタカさんは、険しかった顔をふっと緩めて、少し泣きそうな笑顔で頷いた。

「お前が、かわいくてしかたないんだ」

 あ……。
 うわ………。
 どうしよう。
 俺、タカさん大好きだ。
 大好き。
 でも、タカさんが大好きで、タカさんが全てだけど、この好きは恋かどうか解らない。
 恋人という形になりたいかはよくわからない。

 わからないけど……。
 俺専用のタカさん。
 俺のことをかわいいと思ってくれるタカさん。

 これって、体が震えるほど嬉しい。

「あ、お、俺! 嬉しい! すげぇ、嬉しいです!」
「リョウ……!」
「嬉しい……! タカさん、俺、嬉しい……! 嬉しい!」

 また泣いてしまいながら、馬鹿みたいに嬉しいしか言えなかった。
 男らしくないとかヤクザのメンツとか、普段だったら絶対にどやされるのに、タカさんは優しく頭を撫でてくれるだけだった。

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