ゲイのエッチなお兄さん

回路メグル

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本編1

え!? ユキくんって●●開発まだしてないの!?【6・その後】

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「はぁ~♡ すっごかったぁ♡」
「ふふ。それならよかった!」

 ユキくんの体をベッドに寝かせて、道具を片付けて、約一五分。
 ユキくんが目を覚まして一番に楽しそうに笑った。
 きっとそう言ってくれると思ってた。

「ユキくん、尿道の才能あるよ。普通の人は初めてでこんなに気持ちよくなれないからね」

 お仕事で何度か尿道初めての人とプレイしたことがあるけど、みんなもっと怖がって、怖がるせいで上手く受け入れられなくて……気持ちよくなるまでに時間がかかることがほとんど。
 それに、気持ちよくなれなかったり痛くなったりする人もいた。
 だけどユキくんは、俺のことを信頼して、任せて、リラックスしてくれていたから上手くできたし、元々ユキくんが前立腺を開発しているから気持ちよくなれた。
 気持ち良かったんなら、俺の力じゃなくてユキくんの力。
 そう思うのに……
 
「ミミくんのお陰だよ。俺、ミミくんじゃないとこんなにリラックスできなかったから」

 屈託のない笑顔でこんなことを言ってくれる。

「そう? まぁ、俺プロだからね! ユキくんを尿道の気持ち良さに目覚めさせられたならよかった!」
「うん。目覚めちゃった♡ 尿道オナニー用に道具買っちゃおう。通販で買えるんだよね?」

 ユキくんが今すぐにでも通販する気なのか、枕もとに置いていたスマートフォンを手に取った。
 ……っていうか……。

「うん。むしろ通販でしか買えないのが多いよ。っていうか……オナニー? ユキくんがオナニーしてるところ想像できない! ムラムラしたらすぐに男ひっかけに行きそうなのに!」

 ね?
 そう思うよね?
 仕事で疲れていても「疲れたから癒しのためにエッチしてくれる人捕まえに行こう♡」って言ってるユキくんだよ?
 一人でもするの?
 体力足りないでしょ? 信じられない。
 俺が無意識に顔を歪ませていると、ユキくんは笑いながら答えた。

「え~俺だってオナニーくらいするよ! セックスの方が回数多いけど」

 あ、そこはやっぱり多いんだ。

「ほら~! だったら尿道もオナニーじゃなくてセックスでしたら?」

 俺の言葉に、ユキくんは笑顔のまま少し困った表情になる。

「うーん。尿道はまだ他の人に触られるのは怖いかな」
「あぁ、怪我とか怖いよね。尿道はきちんと知識のある人にしてもらわないと」

 これね、絶対そう。俺のオプションの尿道責めも、やる方はOKだけでされる方はNGにしてる。
 素人にガンガン突っ込まれて尿道傷ついたり突き破ったりしたら本っっっっ当にやばいからね。

「それもあるけど……すっごく気持ちよくなった時に、ミミくんなら安心して失神できるけど、他の人だとできるかな~……やり疲れて寝ることはあるけど、失神するほどって本気で身をゆだねられないと無理だから」

 それって……もう尿道で気持ちよくなる自信があるってことで……そして……。

「……俺、そんなに信頼してもらえてるんだ」
「うん。友達としても、ベテランゲイ風俗ボーイとしても、世界で一番信頼してるし、最高だと思ってるよ」

 世界で一番か……。
 めちゃくちゃ嬉しい。
 友達としてすごく嬉しい。
 でもさ……風俗ボーイとしては……友達として一番だから、信頼があるからだよね~?

「嬉しいな。でも、ベテランっていうか年取ってるだけだよ。うちの店のボーイの中で最年長だし、お客さんも若い子が好きだし……」

 お客さんにも店長にも、他の友達にも同僚にも言ってなかったけど……俺にこんなこと言ってくれてるユキくんには言っておこうかな。

「予定ガラ空きだっていったでしょ? 最近指名も減ってるから……実は、風俗の辞め時かなって思ってたんだよね」

 若く見えるけど、俺ってもう三〇代。
 この店で三〇代は俺以外にもいるけど、みんなタチ。
 年齢が理由なら、もっと年配の……おじさんのネコを集めたお店に移ればいいかなと思ったけど、俺のこのかわいい外見ってそういう店では受けが悪い。
 だから、もういいかなって。
 肩身が狭いなら、もういいかなって。
 ……あ、しまった。ちょっと泣きそう。

「え~!? もったいないよ! ミミくんの超絶性技、これからも色々な人の役に立てるべきだよ♡」

 ユキくんは暗くなったりせずに、いつものようにちょっとエロい顔でにこにこ笑いかけてくれた。

「俺は自分が楽しむセックスは得意だけど、ミミくんは相手を楽しませるセックスの天才だよね? 今日だってミミくん勃起してないし。俺の体に負担かからないようにしてくれたから初めての尿道のあとなのに元気だし、もう尊敬! 若い子の下手なセックスよりも絶対にお金とる価値ある! この技術が失われるの勿体ないなぁ……」
「え~そう? ユキくんみたいにエッチに慣れまくっている子に言われたら自信ついちゃった」

 ユキくんに褒めてもらったから指名が増えるとも思えないし、いくらテクニックがあっても若い子に勝てるとは思えないけど……。

 俺、長年勤めたかいがあったなぁ。
 ユキくんに認められるテクニックってすごくない?

 俺、ゲイ風俗やっててよかったなぁ……。
 
 満足した♡


      ◆


 ユキくんの尿道開発をしてから三日。
 相変わらず指名は少ない。
 ユキくんにテクニックを認めてはもらったけど、指名が入らないと披露する機会が無い。
 やっぱりもうそろそろ潮時だよね。
 ずっともやもや考えていたけど、ユキくんに褒めて応援してもらったお陰で、逆にスパっと満足して心置きなく辞められそう。
 もうやりきったよ、俺。

「あら。お手入れ?」
「うん。ずっと俺が使ってたけど、一応店全体の備品だし」

 待機室で尿道用のアイテムのお手入れをしていると、少し遅れてやってきた店長が俺の手元をじっと眺める。

「そう……」

 ちょっと元気のない声。
 バレたかな。そろそろ俺が店を辞めるつもりでお手入れしてるって。
 この店にももう五年近く。ゲイ風俗歴一二年の中で一番長く続いた店だから……居心地のいい店だから辞める決心がなかなかできなかったってのもあるよね。
 このオネエの店長、面倒見が良くて気が利く良い人なんだよ。

「ねぇ、ミミちゃん」
「な~に~?」

 店長の神妙な声にできるだけ明るく返事をすると、思いがけない提案が帰ってきた。

「ネコのお客さんの指名もうけてみない?」
「え?」

 ネコのお客さん……?
 確かに今は俺の属性はネコ専門で、タチの人の指名しかうけない。この前のユキくんはイレギュラーだった。
 これってつまり、タチなら歳いっても需要あるから転向しろってこと?

「タチをやれって言うんじゃないのよ。この前のユキさんとのプレイみたいに、ネコの気持ちよくなる方法を色々教えてあげるの。ベテランの風俗ボーイのレクチャーで気持ちよくなりながらエッチが上手くなれるなんて最高じゃない?」
「そう……かな?」
「えぇ。教わりたい子沢山いると思うわ」

 そうかな……? セックス塾とかあるとはきくけど……。

「実は私も一時期、似たようなことをしていたの」
「店長も?」

 店長はタチもネコもする人で、超絶テクニックの人気のボーイだったことは知ってるけど……。

「ネコの子にレクチャーしたり、タチの子にレクチャーしたり。それにお客さんも、タチだけど実はネコもして見たかったとか、ネコの子が気持ちよさそうだからアナルやってみたいとか、ネコとネコの百合プレイがしたい人なんかもいるしね。ゲイって……ゲイに限らないのかもしれないけど、性癖をひとくくりにするの難しいじゃない?」
「それは……そうかも」

 俺もこの前、自分のテクニックでユキくんが気持ちよくなっちゃうのをかわいいな♡ と思った。
 勃起はしないし、ユキくんにおちんちんを入れたい入れられたいとは思わないけど……すごく楽しくてドキドキして、自分の新しい性癖の扉が開く感じはした。

「お客さんだけじゃないわ。お店の若いスタッフにもレクチャーして……それが高じて店長になったの」
「そうなんだ~!」

 俺は最初からテクニックがある経験者としてこの店に入ってきたけど、未経験の若い子は店長に教わっているところを時々見る。やたら人気の講習だし、講習を良く受けるボーイほど指名が増えていくとは思っていたけど……。

「ミミちゃんも、向いてると思うのよ。テクニックあるし、エッチなこと大好きだし、人当たりいいし」
「……それって」

 店長が口角を上げてウインクをした。

「将来的に、二号店作りたいのよね」

 俺、満足したし辞めて良いと思った。
 でも……

「……頑張る」
「えぇ。期待してるわ♡」

 本当はこの仕事、大好き。
 お客さんの気持ちよくなる顔、大好き。
 頑張って身に着けたスキル、活かしたい。

 だから……嬉しくてちょっと泣いちゃった。
 もう自分の気持ちに折り合い付けないといけないと思ったから。
 もう一二年もやってて、新しい扉なんて開かないと思ってたから。

 店長の期待に応えるためにもしっかり頑張ろう。

 それと、ユキくんには今度かわいくて極太の尿道バイブをプレゼントしよう。

 そう決意したタイミングでスマートフォンが鳴った。
 ユキくんからの着信だ。

「もしもし? え? 一〇ミリのバイブ買ったから入れるの手伝ってって? わかった~♡」

 困ったな。
 別のプレゼント探さなきゃ♡
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