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本編1
え!? ユキくんって●●開発まだしてないの!?【1・相談/前編】
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週のど真ん中、平日の午後六時。
「暇……」
勤め先のゲイ風俗の待機室で、古い皮張りのソファに寝転んでスマートフォンをいじる。
今は一応勤務時間で、指名が入ればプレイ用の個室に移動するんだけど……平日のこんな時間なので俺のお客さんは無し。この後の予約も無し。
アナルの準備はしてあるけど、服装はまだディスカウントショップで買った安いルームワンピースだ。
別に女装趣味があるからじゃない。
うちの店のボーイは、基本的に裸にタオルを巻くだけで接客するから、すぐに脱げるように。
あと、お客さんが来てから脱いでも、腰回りにゴムのあとが残らないように。
これでもゲイ風俗歴十二年のプロだからね。
それに、俺ってかわいい系だから淡い水色のワンピースが似合っちゃうし♡
「ミミちゃん、脚閉じなさい。はしたない」
「すぐにМ字開脚できるようにストレッチなんですぅ」
待機室の端の事務机でノートパソコンに向かっている店長がため息をつく。
店長は元々この店のボーイ。口調はオネエで黒髪ロングのポニーテールだけど、ネコよりもタチとして人気だったらしい。もう四十代後半なのに、背が高くてスタイルが良いし、イケメンだし、今でも結構モテる。ボーイやればいいのに。
「もう。ストレッチするならちゃんとヨガマットでしなさい。買ってあげてるでしょう」
「はいはい。あ、電話だ」
「あら、お客さん?」
「えっと……」
着信画面を見ながら起き上がると、表示された名前はお客さんではなく、ただのゲイ友達だった。
ざーんねん。
でも、この子から電話なんて珍しいな。
「違うけどちょっと出ていい? ユキくんから」
「あら、いいわよ。この前のお礼言っておいて」
「うん」
店長に断って通話ボタンをタップすると、ゲイ友達の中でも特に仲がいいユキくんの柔らかい声が聞こえてきた。
「こんばんは~。ミミくん、今ちょっと大丈夫?」
「大丈夫。どうしたの?」
「うん。実はミミくんに相談というか、お願いがあって……」
珍しい。
ユキくんとはもう五~六年の付き合いで、一緒に飲みに行くことも、旅行に行くことも、ハプニングバーへ4Pしに行くこともある親友と言ってもいい関係だけど、ユキくんは自分のことは何でも自分でできちゃう器用で賢い子だ。相談をするよりも、相談される側ってイメージ。
俺の方が年上だけど、客にストーカーされた時も、元彼に暴力振るわれた時も、お客さんの改造巨根が入らなくて困った時も、ユキくんに相談して助けてもらった。
だから、珍しくて驚いたけど、今までの分もユキくんの助けになれるならめちゃくちゃ嬉しい!
「なになに? 何でも言って!」
「はは。ミミくんは頼もしいな~……実はね、俺……」
なんだろう。
仕事の愚痴は時々きくけど、俺に相談だからゲイ関連だよね?
好きな人ができたとかかな?
言いにくそうだしお金貸してとか……あ! ゲイ風俗で働きたいとか?
ユキくんならすぐに人気出ちゃって俺の指名が減るから困るな~。もちろん応援はするけど。
ユキくんが少し言いにくそうに口ごもっている間に色々考えてしまったけど、ようやくスマートフォンからユキくんの声が聞こえてきた。
「実は……尿道の開発したいんだ」
「にょうどうのかいはつ?」
え……?
えぇ……?
「びっくり」
おもわず素直すぎる感想が漏れてしまった。
だって……ねぇ?
びっくり。
「そうだよね。急に友達に言うことじゃないよね」
「ううん。そうじゃなくて……」
そういうことじゃない。
だって、今までに4Pしたり、一緒にアナルプラグ買いに行ったり、利きローションして遊んだりしている友達だよ? そういう意味ではびっくりしない。
俺がびっくりしたのは……
「ユキくんが、まだ尿道開発してないことが……びっくり!」
「あ、そっち?」
そう、そっち。
だってユキくんは俺と同じでネコ……受とかボトムとかもいう、おちんちんを入れられる専門のゲイで、成人してから七年間、この界隈のゲイバーやハッテン場で沢山の男とセックスしまくっている子だ。
とにかくエッチが大好きで、エッチが大好きだからより楽しめるように努力を惜しまない。
だからエッチが上手い。エッチが上手いと更にエッチが楽しい……そんな感じのエッチの申し子みたいなゲイだ。
ちなみに、見た目もモデル体型でちょっと垂れ目の美人さん。真ん中で分けた癖のある黒髪を掻き上げる仕草なんかは、ネコ専門の俺ですらちょっとドキっとする凄まじいお色気。
よく「歩くわいせつ物」「妖艶」「リアルサキュバス」「エロ同人誌でオークションにかけられてそう」なんて言われているところを目撃する。
そんなユキくんだ。
前立腺も結腸も乳首も口の中も性感帯をしっかり開発しているユキくんだ。
それがまさか……尿道の開発がまだだったなんて!
「俺、ペニスよりアナルの快感を優先していたから……尿道なんて開発できる場所があるのすっかり忘れてたんだよね~。でも、最近エッチした人が尿道気持ちいいって力説するから思い出したんだ」
「あは、ユキくんらしい! でも、それならその人にしてもらったらいいのに」
「うーん。そうだけど……尿道ってちょっと怖くない? 最初は信頼できる人にやってもらった方が良いかなと思って」
信頼か。
仲良しとは思っていたけど、改めて「信頼」なんて言ってもらえるのは嬉しい。
「それに、お店のホームページでミミくんのオプションのところに尿道責めって書いてあったし。お友だちでプロのミミくんなら安心感二倍かなって」
「まぁ、俺の尿道プレイは大好評だからね。じゃあ、ユキくんのためにひと肌脱ごうかな! いつがいい? 俺は次のお休みは来週の……」
「あ、お休みじゃなくて、お店で。指名入れるから」
「……え? えぇ? いいよそんなの! お友だちだし、お金もらうの悪いよ! それに、ユキくんってセックスにお金絡むの嫌がるじゃん。お金なしで楽しくやろうよ~」
俺、知ってるからね?
ユキくんが、色々な人に「お金払うからエッチして!」って言われても、頑なに受け取らないの。
セックスワーカーを否定しているんじゃなくて、「お金が絡むと俺の自由にできないから嫌。俺は俺のやりたいエッチがしたい」とことあるごとに言っているよね?
「だめ。プロにお願いするんだから払うのが当然」
「えー……でも……」
払う方は良いの?
まぁそっか。
ユキくんはモテモテだから毎日のセックスの相手に困っていないだけで、「今日の気分にあった相手」が見つからない時は風俗も選択肢にあるって言ってたような気がする。
……モテモテだからそんなとこ見たことないけど。
「尿道だと時間かかるよね? 二~三時間くらい?」
「全く初めてなら三時間くらいあると色々安心だけど……ほら、時間長いと高くなっちゃうし、休日にのんびりやろうよ」
「じゃあ三時間にオプション料金だね」
もう!
ユキくんってテキトーに見えて結構頑固。
友達からお金とるのって気が引けるし、俺もユキくんもネコだから挿入無しでしょ? 尿道開発だけでお金とるのもなぁ……。
悩んでいると、机にいたはずの店長が俺の近くに来ていた。
「……?」
「暇……」
勤め先のゲイ風俗の待機室で、古い皮張りのソファに寝転んでスマートフォンをいじる。
今は一応勤務時間で、指名が入ればプレイ用の個室に移動するんだけど……平日のこんな時間なので俺のお客さんは無し。この後の予約も無し。
アナルの準備はしてあるけど、服装はまだディスカウントショップで買った安いルームワンピースだ。
別に女装趣味があるからじゃない。
うちの店のボーイは、基本的に裸にタオルを巻くだけで接客するから、すぐに脱げるように。
あと、お客さんが来てから脱いでも、腰回りにゴムのあとが残らないように。
これでもゲイ風俗歴十二年のプロだからね。
それに、俺ってかわいい系だから淡い水色のワンピースが似合っちゃうし♡
「ミミちゃん、脚閉じなさい。はしたない」
「すぐにМ字開脚できるようにストレッチなんですぅ」
待機室の端の事務机でノートパソコンに向かっている店長がため息をつく。
店長は元々この店のボーイ。口調はオネエで黒髪ロングのポニーテールだけど、ネコよりもタチとして人気だったらしい。もう四十代後半なのに、背が高くてスタイルが良いし、イケメンだし、今でも結構モテる。ボーイやればいいのに。
「もう。ストレッチするならちゃんとヨガマットでしなさい。買ってあげてるでしょう」
「はいはい。あ、電話だ」
「あら、お客さん?」
「えっと……」
着信画面を見ながら起き上がると、表示された名前はお客さんではなく、ただのゲイ友達だった。
ざーんねん。
でも、この子から電話なんて珍しいな。
「違うけどちょっと出ていい? ユキくんから」
「あら、いいわよ。この前のお礼言っておいて」
「うん」
店長に断って通話ボタンをタップすると、ゲイ友達の中でも特に仲がいいユキくんの柔らかい声が聞こえてきた。
「こんばんは~。ミミくん、今ちょっと大丈夫?」
「大丈夫。どうしたの?」
「うん。実はミミくんに相談というか、お願いがあって……」
珍しい。
ユキくんとはもう五~六年の付き合いで、一緒に飲みに行くことも、旅行に行くことも、ハプニングバーへ4Pしに行くこともある親友と言ってもいい関係だけど、ユキくんは自分のことは何でも自分でできちゃう器用で賢い子だ。相談をするよりも、相談される側ってイメージ。
俺の方が年上だけど、客にストーカーされた時も、元彼に暴力振るわれた時も、お客さんの改造巨根が入らなくて困った時も、ユキくんに相談して助けてもらった。
だから、珍しくて驚いたけど、今までの分もユキくんの助けになれるならめちゃくちゃ嬉しい!
「なになに? 何でも言って!」
「はは。ミミくんは頼もしいな~……実はね、俺……」
なんだろう。
仕事の愚痴は時々きくけど、俺に相談だからゲイ関連だよね?
好きな人ができたとかかな?
言いにくそうだしお金貸してとか……あ! ゲイ風俗で働きたいとか?
ユキくんならすぐに人気出ちゃって俺の指名が減るから困るな~。もちろん応援はするけど。
ユキくんが少し言いにくそうに口ごもっている間に色々考えてしまったけど、ようやくスマートフォンからユキくんの声が聞こえてきた。
「実は……尿道の開発したいんだ」
「にょうどうのかいはつ?」
え……?
えぇ……?
「びっくり」
おもわず素直すぎる感想が漏れてしまった。
だって……ねぇ?
びっくり。
「そうだよね。急に友達に言うことじゃないよね」
「ううん。そうじゃなくて……」
そういうことじゃない。
だって、今までに4Pしたり、一緒にアナルプラグ買いに行ったり、利きローションして遊んだりしている友達だよ? そういう意味ではびっくりしない。
俺がびっくりしたのは……
「ユキくんが、まだ尿道開発してないことが……びっくり!」
「あ、そっち?」
そう、そっち。
だってユキくんは俺と同じでネコ……受とかボトムとかもいう、おちんちんを入れられる専門のゲイで、成人してから七年間、この界隈のゲイバーやハッテン場で沢山の男とセックスしまくっている子だ。
とにかくエッチが大好きで、エッチが大好きだからより楽しめるように努力を惜しまない。
だからエッチが上手い。エッチが上手いと更にエッチが楽しい……そんな感じのエッチの申し子みたいなゲイだ。
ちなみに、見た目もモデル体型でちょっと垂れ目の美人さん。真ん中で分けた癖のある黒髪を掻き上げる仕草なんかは、ネコ専門の俺ですらちょっとドキっとする凄まじいお色気。
よく「歩くわいせつ物」「妖艶」「リアルサキュバス」「エロ同人誌でオークションにかけられてそう」なんて言われているところを目撃する。
そんなユキくんだ。
前立腺も結腸も乳首も口の中も性感帯をしっかり開発しているユキくんだ。
それがまさか……尿道の開発がまだだったなんて!
「俺、ペニスよりアナルの快感を優先していたから……尿道なんて開発できる場所があるのすっかり忘れてたんだよね~。でも、最近エッチした人が尿道気持ちいいって力説するから思い出したんだ」
「あは、ユキくんらしい! でも、それならその人にしてもらったらいいのに」
「うーん。そうだけど……尿道ってちょっと怖くない? 最初は信頼できる人にやってもらった方が良いかなと思って」
信頼か。
仲良しとは思っていたけど、改めて「信頼」なんて言ってもらえるのは嬉しい。
「それに、お店のホームページでミミくんのオプションのところに尿道責めって書いてあったし。お友だちでプロのミミくんなら安心感二倍かなって」
「まぁ、俺の尿道プレイは大好評だからね。じゃあ、ユキくんのためにひと肌脱ごうかな! いつがいい? 俺は次のお休みは来週の……」
「あ、お休みじゃなくて、お店で。指名入れるから」
「……え? えぇ? いいよそんなの! お友だちだし、お金もらうの悪いよ! それに、ユキくんってセックスにお金絡むの嫌がるじゃん。お金なしで楽しくやろうよ~」
俺、知ってるからね?
ユキくんが、色々な人に「お金払うからエッチして!」って言われても、頑なに受け取らないの。
セックスワーカーを否定しているんじゃなくて、「お金が絡むと俺の自由にできないから嫌。俺は俺のやりたいエッチがしたい」とことあるごとに言っているよね?
「だめ。プロにお願いするんだから払うのが当然」
「えー……でも……」
払う方は良いの?
まぁそっか。
ユキくんはモテモテだから毎日のセックスの相手に困っていないだけで、「今日の気分にあった相手」が見つからない時は風俗も選択肢にあるって言ってたような気がする。
……モテモテだからそんなとこ見たことないけど。
「尿道だと時間かかるよね? 二~三時間くらい?」
「全く初めてなら三時間くらいあると色々安心だけど……ほら、時間長いと高くなっちゃうし、休日にのんびりやろうよ」
「じゃあ三時間にオプション料金だね」
もう!
ユキくんってテキトーに見えて結構頑固。
友達からお金とるのって気が引けるし、俺もユキくんもネコだから挿入無しでしょ? 尿道開発だけでお金とるのもなぁ……。
悩んでいると、机にいたはずの店長が俺の近くに来ていた。
「……?」
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