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本編1
世界一サキュバスが似合う男(もしかして本物か?)【1・ハロウィンナイト】
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明日はハロウィンという土曜日の夜。
飲み屋街の大きめのゲイバーで行われるハロウィンイベントは「コスプレがドレスコード」ということで、たまたま手に入った詰襟の神父服で参加してみたが……
「わぁ、あの人カッコイイ!」
「神父のコスプレ似合い過ぎ~!」
カウンターで紫色の甘ったるいカクテルを飲んでいると、後ろからそんな声が聞こえた。
自信過剰かもしれないが、俺に向けての言葉で間違いないだろう。
「……」
チラっと俺が振り向くと、魔女のコスプレをした小柄でかわいい男の子と、狼男のコスプレをしたぽっちゃり髭熊系の男の子が俺の方を熱っぽく見ていた。ほら。そうだ。
「……」
笑顔だけ返してすぐに視線を外すと、後ろからは「やっぱりカッコイイ! ハリウッド俳優みたい」「わかる。前にエルフ役していた人みたいな……」「そうそう。あの俳優をもうちょっと男らしくした感じ♡」なんて声が聞こえる。
ハリウッド俳優は言い過ぎだと思うが、日本人離れという意味では正しくて、俺の母は日本人だが父親はドイツ人。後ろに流したミルクティー色の髪や一八十五センチの長身、骨太でがっしりした体格は父譲りだ。
この容姿のお陰で、男にも女にもモテるし、昨年、芸能事務所にスカウトされて大学卒業と共に舞台俳優としても活動を始めたところだ。
少しずつ売れて来たし、目立つ容姿だからそろそろ男遊びはやめないといけない。
だから今日はじっくりと好みの子を探して、吟味して、良い思い出を作ろうと考えている。
「……」
DJブースが設置され、フロアで様々な系統のゲイが踊ったり密着していい雰囲気になっていたりする中、俺と同じように相手を探しているゲイはバーカウンターやフロアの外周にいくつか置かれたバーテーブルで酒を飲んでいるが……あまり好みの男がいない。
先ほどのかわいい男も髭熊系の男も、魅力的だと思うが、俺の好みはもっと美人系でエロくてエッチなメスお兄さんという感じの……
……あ。
ちょうどフロアから俺の近くのバーテーブルへとやってきた一人の男に目が釘付けになった。
俺と同じくらい……いや、ヒールだから実際は低いのか? どちらにしろ長身でモデル体型、でも腰回りや胸の辺りに薄く肉がついてむちっとエロい体。絶世の美形ではないが、役者として美形を見慣れている俺でも素直に美人だと思える整った顔は少し垂れ目で妙にエロい。女顔と言うわけでもないのに真っ赤な口紅も似合っている。
そしてコスプレだ。緩く癖のある黒髪に映える赤い悪魔の角のカチューシャ、細身なのにむっちりした体を見せつける、レザーのチューブトップは胸元が紐で編み上げられていて、同じレザーのショートパンツも両サイドが編み上げ。しかもこのホットパンツがかなりのローライズで下腹部の際どいところまで露出していて、そこにいわゆる「淫紋」のような文様が黒いインクで描かれていた。
網目の大きいニーハイの網タイツに、ピンヒールのロングブーツ。
背中にはコウモリのような羽、ショートパンツからは短い悪魔の尻尾もたれている。
似合い過ぎだろう。
エロい美形にエッチな悪魔のコスプレ。最高だ。
しかも俺より少し年上に見える。
理想通りのエッチなお兄さんだ。
「……」
じっと見つめていると、向こうも俺に気づいたようで視線が合った。
にこっと、エロい見た目に似合わず案外かわいらしい笑顔を向けられ、俺も笑顔を返したが視線は逸れない。
これは……いけるな。
グラスを持って、悪魔のコスプレをした男のバーテーブルへ向かった。
「こんばんは……悪魔、だよね?」
「こんばんは。ふふっ。神父様にはバレちゃった?」
あぁ、この遊んでいる感じの返しもいい。
「あぁ。悪魔を見つけて捕まえるのが仕事なんだ」
父は熱心なクリスチャンだが、息子の俺は残念ながらキリスト教の知識は映画や漫画程度。今日の神父服も宗派なんてテキトーで、神父の仕事がどんなものか解っていない。
ごめんな親父。
心の中で少しだけ懺悔をして、悪魔の腰に腕を回すと、悪魔は素直に俺に寄り掛かった。
「あーあ。捕まっちゃった。捕まえた悪魔はどうするの?」
「ホテルでお仕置き、かな?」
「お仕置きか~。抵抗しちゃうよ? 俺って悪魔の中でもサキュバスだから……神父様の精液搾り取っちゃうかも♡」
サキュバス……男ならインキュバスじゃないのか? いや、男の相手ならサキュバスでいいのか。
とにかくサキュバスは確か夢魔で、その中でも精気を吸い取るエッチな悪魔。
最高じゃないか。
「俺はしっかり修業した神父だから、悪魔に少しくらい精液搾り取られても平気だよ」
悪魔の視線は、返事をする俺の顔ではなく股間に向けられる。
期待されているのが解るが、プレッシャーは感じない。
裾の長い詰襟の上着とスラックス越しのそこも、父の遺伝のお陰か日本人の平均よりは立派で自信があるんだ。
「え~本当? 俺、腹ペコでいっぱい精液欲しいんだけど?」
「大丈夫。お腹いっぱいにしてあげる」
耳元で囁けば嬉しそうに俺の体に擦り寄ってくる。
ノリがいい。これは最高のエッチに持ち込める。
そう思った瞬間、目の前の悪魔が笑顔のまま少しだけ真面目な顔をして俺を覗き込んだ。
「……ちょっと我儘言っていい?」
「ん? 何?」
「折角のコスプレだから、ベッドでも神父とサキュバスでプレイしたいんだけど……」
「あぁ、もちろん」
たまにはそういうプレイも面白そうだし、この流れだ。俺も大賛成。
しかし、彼の要求はそれだけではないようで……。
「それでね……俺、ストイックで敬虔な敬語の堅物な感じの神父様がセックスでとろとろに堕ちちゃうのが見たいな~って。そういうのダメ?」
なるほど。
シチュエーションプレイのお誘いか。
俺に堅物の神父を演じてくれと。
これはなかなかの我儘だが……。
「えぇ。構いませんよ。その代わり、あなたも本物のサキュバスのように私を誘惑してくださいね?」
こういうことだろう?
恭しく胸元に手を当てて返事をすれば、目の前のサキュバスがとても嬉しそうに……そしてめちゃくちゃ妖艶に笑った。
「うん、わかったぁ♡」
まだデビューしたてだが、俺はプロの役者だ。
しっかり演じ切る自信がある。
そして……
俺はモテるし、経験人数も豊富。
堅物神父の演技はしても、最後に堕とされてやるつもりは微塵もない。
神父×サキュバスプレイで最後は俺の演技とテクニックでサキュバスをトロトロに堕としてやる。
このエッチなお兄さんのイキ狂ってよがりまくるところを楽しく鑑賞させてもらう。
演技でも、セックスでも、素人に負けるわけがない。
内心ではそんなことを思いながらゲイバーのすぐ裏のラブホテルへ向かった。
飲み屋街の大きめのゲイバーで行われるハロウィンイベントは「コスプレがドレスコード」ということで、たまたま手に入った詰襟の神父服で参加してみたが……
「わぁ、あの人カッコイイ!」
「神父のコスプレ似合い過ぎ~!」
カウンターで紫色の甘ったるいカクテルを飲んでいると、後ろからそんな声が聞こえた。
自信過剰かもしれないが、俺に向けての言葉で間違いないだろう。
「……」
チラっと俺が振り向くと、魔女のコスプレをした小柄でかわいい男の子と、狼男のコスプレをしたぽっちゃり髭熊系の男の子が俺の方を熱っぽく見ていた。ほら。そうだ。
「……」
笑顔だけ返してすぐに視線を外すと、後ろからは「やっぱりカッコイイ! ハリウッド俳優みたい」「わかる。前にエルフ役していた人みたいな……」「そうそう。あの俳優をもうちょっと男らしくした感じ♡」なんて声が聞こえる。
ハリウッド俳優は言い過ぎだと思うが、日本人離れという意味では正しくて、俺の母は日本人だが父親はドイツ人。後ろに流したミルクティー色の髪や一八十五センチの長身、骨太でがっしりした体格は父譲りだ。
この容姿のお陰で、男にも女にもモテるし、昨年、芸能事務所にスカウトされて大学卒業と共に舞台俳優としても活動を始めたところだ。
少しずつ売れて来たし、目立つ容姿だからそろそろ男遊びはやめないといけない。
だから今日はじっくりと好みの子を探して、吟味して、良い思い出を作ろうと考えている。
「……」
DJブースが設置され、フロアで様々な系統のゲイが踊ったり密着していい雰囲気になっていたりする中、俺と同じように相手を探しているゲイはバーカウンターやフロアの外周にいくつか置かれたバーテーブルで酒を飲んでいるが……あまり好みの男がいない。
先ほどのかわいい男も髭熊系の男も、魅力的だと思うが、俺の好みはもっと美人系でエロくてエッチなメスお兄さんという感じの……
……あ。
ちょうどフロアから俺の近くのバーテーブルへとやってきた一人の男に目が釘付けになった。
俺と同じくらい……いや、ヒールだから実際は低いのか? どちらにしろ長身でモデル体型、でも腰回りや胸の辺りに薄く肉がついてむちっとエロい体。絶世の美形ではないが、役者として美形を見慣れている俺でも素直に美人だと思える整った顔は少し垂れ目で妙にエロい。女顔と言うわけでもないのに真っ赤な口紅も似合っている。
そしてコスプレだ。緩く癖のある黒髪に映える赤い悪魔の角のカチューシャ、細身なのにむっちりした体を見せつける、レザーのチューブトップは胸元が紐で編み上げられていて、同じレザーのショートパンツも両サイドが編み上げ。しかもこのホットパンツがかなりのローライズで下腹部の際どいところまで露出していて、そこにいわゆる「淫紋」のような文様が黒いインクで描かれていた。
網目の大きいニーハイの網タイツに、ピンヒールのロングブーツ。
背中にはコウモリのような羽、ショートパンツからは短い悪魔の尻尾もたれている。
似合い過ぎだろう。
エロい美形にエッチな悪魔のコスプレ。最高だ。
しかも俺より少し年上に見える。
理想通りのエッチなお兄さんだ。
「……」
じっと見つめていると、向こうも俺に気づいたようで視線が合った。
にこっと、エロい見た目に似合わず案外かわいらしい笑顔を向けられ、俺も笑顔を返したが視線は逸れない。
これは……いけるな。
グラスを持って、悪魔のコスプレをした男のバーテーブルへ向かった。
「こんばんは……悪魔、だよね?」
「こんばんは。ふふっ。神父様にはバレちゃった?」
あぁ、この遊んでいる感じの返しもいい。
「あぁ。悪魔を見つけて捕まえるのが仕事なんだ」
父は熱心なクリスチャンだが、息子の俺は残念ながらキリスト教の知識は映画や漫画程度。今日の神父服も宗派なんてテキトーで、神父の仕事がどんなものか解っていない。
ごめんな親父。
心の中で少しだけ懺悔をして、悪魔の腰に腕を回すと、悪魔は素直に俺に寄り掛かった。
「あーあ。捕まっちゃった。捕まえた悪魔はどうするの?」
「ホテルでお仕置き、かな?」
「お仕置きか~。抵抗しちゃうよ? 俺って悪魔の中でもサキュバスだから……神父様の精液搾り取っちゃうかも♡」
サキュバス……男ならインキュバスじゃないのか? いや、男の相手ならサキュバスでいいのか。
とにかくサキュバスは確か夢魔で、その中でも精気を吸い取るエッチな悪魔。
最高じゃないか。
「俺はしっかり修業した神父だから、悪魔に少しくらい精液搾り取られても平気だよ」
悪魔の視線は、返事をする俺の顔ではなく股間に向けられる。
期待されているのが解るが、プレッシャーは感じない。
裾の長い詰襟の上着とスラックス越しのそこも、父の遺伝のお陰か日本人の平均よりは立派で自信があるんだ。
「え~本当? 俺、腹ペコでいっぱい精液欲しいんだけど?」
「大丈夫。お腹いっぱいにしてあげる」
耳元で囁けば嬉しそうに俺の体に擦り寄ってくる。
ノリがいい。これは最高のエッチに持ち込める。
そう思った瞬間、目の前の悪魔が笑顔のまま少しだけ真面目な顔をして俺を覗き込んだ。
「……ちょっと我儘言っていい?」
「ん? 何?」
「折角のコスプレだから、ベッドでも神父とサキュバスでプレイしたいんだけど……」
「あぁ、もちろん」
たまにはそういうプレイも面白そうだし、この流れだ。俺も大賛成。
しかし、彼の要求はそれだけではないようで……。
「それでね……俺、ストイックで敬虔な敬語の堅物な感じの神父様がセックスでとろとろに堕ちちゃうのが見たいな~って。そういうのダメ?」
なるほど。
シチュエーションプレイのお誘いか。
俺に堅物の神父を演じてくれと。
これはなかなかの我儘だが……。
「えぇ。構いませんよ。その代わり、あなたも本物のサキュバスのように私を誘惑してくださいね?」
こういうことだろう?
恭しく胸元に手を当てて返事をすれば、目の前のサキュバスがとても嬉しそうに……そしてめちゃくちゃ妖艶に笑った。
「うん、わかったぁ♡」
まだデビューしたてだが、俺はプロの役者だ。
しっかり演じ切る自信がある。
そして……
俺はモテるし、経験人数も豊富。
堅物神父の演技はしても、最後に堕とされてやるつもりは微塵もない。
神父×サキュバスプレイで最後は俺の演技とテクニックでサキュバスをトロトロに堕としてやる。
このエッチなお兄さんのイキ狂ってよがりまくるところを楽しく鑑賞させてもらう。
演技でも、セックスでも、素人に負けるわけがない。
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