ゲイのエッチなお兄さん

回路メグル

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本編1

ノンケの男にお仕置きする話 【9・男としての自信を無くす/後編】

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 また別の日にもサウナにやってきた。
 今度こそ……!
 そう思うのに、その日は一時間待っても二時間待ってもユキさんは来なかった。

「はぁ……帰るか」

 ユキさんが来るまでの間、他のネコの男に声をかけられることも無いし、周りの男はみんな俺よりチンコがデカいし、ガタイがいいし……ここにいてもつまらない。帰ろう。
 そう思ってサウナを出た時、ちょうど入ってきた男とぶつかった。

「わっ!」
「っ!」

 俺にぶつかって床に尻もちをついてしまった男は、なかなかかわいい子だった。
 ふわふわの金髪に目が大きくて色が白くて、俺よりも背が低くてゆるふわの天使系。
 こういう子なら、男でもちょっといいかもしれない。

「大丈夫?」

 手を差し出すと、天使系の男は素直に俺の手を握ってじっと俺の顔を見た後、かわいい顔でかわいらしく笑った。

「うん。あ、やっぱり大丈夫じゃないかも」
「え?」
「大丈夫じゃないから、長椅子に連れてって?」

 これは……。

「ぶつかって体痛いから、マッサージして? ね?」

 お誘いだな。
 こんなかわいい子が、俺を誘っているんだな。
 そうかそうか。
 ユキさんといい、この天使といい、俺は美形の男にモテるのか。

「わかった。マッサージしてあげる」
「優しくね? 痛くしたら嫌だよ?」
「大丈夫。俺マッサージ得意だから」

 ユキさんにあれだけ褒められたんだ。
 俺は男とのセックスが上手いはず。
 この天使をよがらせまくって、このサウナの他の男たちの自尊心を削ってやろう。
 今日までさんざん削られた仕返しだ。
 
 ……そうやって意気揚々とセックスに挑んだが……。

「やめろって言ってるだろ! 下手くそ!」

 挿入して暫く腰を振ったところで……俺は気持ちよくなってきたところで……小柄な男から本気の蹴りを腹に入れられた。

「うぐっ!」
「最悪! 童貞でももっとマシなセックスするだろ! 租チンの上にテク無しとかもうマジ最悪!」
 
 俺が腹を押さえている間に、かわいらしかった顔を思い切り歪ませて男が俺から離れていった。
 それだけでもショックなのに……

「あれはないよな」
「レイプでももうちょっとマシだろ」
「しかも租チンとか救いようねぇわ」

 周りの男たちがクスクスと笑う。
 怒りと羞恥心と、もう何とも言えない感情が渦巻いて体が震える。
 俺はユキさんに最高だと言われたセックスをしただけなのに。
 クソ! なんなんだよ!?
 俺がいたたまれなくて項垂れている間に、俺から離れていった天使のような男はもう別の男に声をかけていた。

「あ、ソウタくーん!シよ♡ さっき最悪のエッチの相手したからお口直し♡」
「最悪……? よく解らないけど、ミミくんのかわいい喘ぎ声をいっぱい聞かせてもらいたいから、がんばるね?」

 俺の後にどんな男を選んだんだ?
 ……なんだ。俺と同じ……いや、若干だけ俺よりもたぶん粗チンだ。たぶん。
 顔も体つきも地味で平凡だし。
 あれじゃあどうせまたあの小柄な男に蹴りを入れられる。
 俺が悪いんじゃない。
 あの小柄な男が……

「あぁん♡ ソウタくん♡ 上手♡ それ気持ちいい♡」

 遠巻きに見ていたが、セックスが始まって早々に俺の時には「いや」「やだ」「ちがう」「やめろ」しか言わなかった小柄な男が甘ったるい声で喘ぎだした。
 今突っ込んでいる男だって、俺と同じくらいのチンコなのに。
 何で……? チンコの大きさではないなら……。
 俺が下手ってことなのか? 
 いや、違う。
 ユキさんはよがっていたんだ。
 俺は下手じゃない。
 下手じゃない。

 下手じゃない……けど……自尊心が大きく削られた。


     ◆


 それから何度サウナに通ってもユキさんに出会えず、他の人には相手にされず、毎日のように通い続けて二週間ほどしたころ。

「ユキさん!」
「あ……シンくん」

 やっと一人でサウナに座っているユキさんに出会えた。

「ユキさん! 俺とヤろう? ほら、この前俺とのセックス気持ちいいって言ってただろ? なぁ?」
「ちょっと、シンくん、痛いって……落ち着いて?」

 ユキさんの腕を掴んで強引にサウナの外に連れ出し、雑魚寝部屋の方へ向かう。
 やっとヤれる。
 ユキさんなら上手くできるんだ。
 俺とユキさんのセックスを見せつければここに通っている他の奴らも俺を馬鹿にしない。
 ユキさんとヤりたい。
 ユキさんと!

「待って、シンくん! ちょっと!」

 ユキさんの声なんてもう耳に入っていなくて、強引に床に押し倒した時だった。

「おい、何やってるんだ?」

 背後からドスの効いた声が聞こえて肩を掴まれた。

「邪魔するな! ……っ、え?」

 手を振り払いながら後ろを見ると……興奮しきった頭が一瞬で冷めた。

「誰に何やってるんだって聞いてるんだ。おい? 答えろ」

 後ろにいたのは筋骨隆々で上半身に何か所も刃物傷があり、オールバックでいかつい顔。わざと不自然に体を傾けて見せつけてくる背中には全面に龍の入れ墨……ヤクザ……?

「今日は俺の相手をしてもらう約束なんだが?」
「ひっ! や、や、やくそく?」

 髪の毛を掴まれて、鋭い眼光が間近に迫る。
 後ろの方で「あれ、あの組の若頭じゃねぇか」「このあたりの風俗店のケツモチの組か」なんて声が聞こえる。
 マズイ。マジもん……!?
 
「タカさん……!」

 俺の下から逃げたユキさんがヤクザの背中に抱き着いた。
 ……あ、これ俺死ぬ?

「よかった~……今日はタカさんと約束してたのに強引に迫られて困ってたんだ」

 ユキさんがうっとりした視線をヤクザに向ける。

「だって今日は絶対にタカさんのペニスで結腸ぶちぬいて欲しかったから♡」

 ……え?
 俺が戸惑っている間に、ヤクザが俺から離れる。
 そこで気が付いた。
 このヤクザのチンコ、やばい。
 俺より三回りはでかい。カリの張り方がえぐい。
 そして何より……あの凸凹なんだ? 噂だけは聞いたことがある、パールを埋めるやつか? 
 もう凶器だろ、アレ。
 ユキさんがその凶器をうっとりと見つめて、ヤクザはヤクザで俺の股間を見て……

「……はぁ。そうだな。こんな小物に関わっているだけ時間の無駄だな」

 小物……何に対してかは解らないけど、反論はできなかった。
 でも、ちょっと待って欲しい。

「ユキさん……俺とまたしたいって……! 俺のセックスいいって言ってくれただろ? なんでいつも他の男とヤるんだよ!?」

 もうヤクザに腰を抱かれていたユキさんは俺の顔でもヤクザの顔でもなく、ヤクザの股間の凶器を熱っぽく見ながら返事をした。

「うん。シンくんとのエッチ気持ちよかったよ♡ ただ、シンくんより気持ちのいいエッチができる人がいっぱいいるんだよね。ここにいる人全員にペニスでもテクニックでも勝てたらまたヤってね♡」
「ははっ、そりゃあいいな。それくらいになったら俺もお前に順番譲ってやるよ」

 ヤクザが楽しそうに笑ってユキさんと並んで奥の個室へ消えていった。

 俺の自尊心はもう欠片しか残っていなかった。
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