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本編1
ノンケの男にお仕置きする話 【1・友達の話】
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俺は男で、恋愛や性行為の対象も男。つまりゲイだ。
LGBTがどうとか言われるようになって、ゲイだからとあからさまな差別を受けることは少ないけど、世間にはまだまだゲイを差別する人もいるし、少数派なので「どう接したらいいかよくわからない」という人も多い。
それでも幸運なことに、俺の家族や職場や友人には理解のある人が多く、ゲイだからと辛い思いをすることは少ない。
特定の恋人を作るつもりはないけど、モデル体型の美人顔のお陰で結構モテるし、地元にはマナーのいいハッテン場や落ち着いて相手を探せる高級ゲイバーがあるからエッチの相手には困らない。
そして、エッチ抜きでゲイ仲間と楽しく話せる、和気あいあいとしたゲイバーもある。
なかなかいい感じのゲイライフだよね?
俺は今の自分の環境や周囲の人たちが大好きだ。
◆
月曜日から面倒な仕事に追われ、定時で終わったものの精神的にものすごく疲れていた。
こんな日はガンガン激しく抱いてもらって疲れを吹き飛ばすか、ゲイバーで仲のいい友達に愚痴を聞いてもらった後ちょっと猥談でもして気分を変えるか……今日は後者かな。
スーツにビジネスバッグを持ったまま、地元の雑居ビルの三階にあるゲイバーへと足を向けた。
「こんばんは~」
「ユキく~ん!!!!」
ゲイバーのドアを開けると、一〇人掛けのカウンターの中ほどでボロボロに泣いているマオちゃんに名前を呼ばれた。
マオちゃんは俺と同じネコ……受とかボトムとも呼ばれる性志向で、背は低いけどぽっちゃりむっちりした体格に短く刈った髪と顎髭がキュートな熊さんみたいな子だ。
俺もモテるけど、マオちゃんはマオちゃんですごくモテる。
モテるネコ同士、色々と気が合って仲良くしているけど……俺とマオちゃんでは需要のある層が違うから喧嘩にならないってのも仲良くできる一因かな。
「どうしたの? マオちゃん!?」
俺が心配しながら駆け寄ると、マオちゃんの周りにはすでにこの店の常連であるゲイがタチもネコも関係なく一〇人ほど集まっていた。
カウンター一〇席に四人掛けテーブルが三つの店だから、結構ぎゅうぎゅうだ。
「お、俺ぇ……会社、やめる……」
「え?」
マオちゃんは二十七歳の俺より三歳年下で、数年前に服飾系の学校を卒業して憧れの子供服ブランドの会社に入社していた。
就活を頑張っていたのも、入社後に仕事を頑張っていたのも、仕事をしながら更に勉強を頑張っていたのもよく知っている。
「なんで? マオちゃん会社大好きだよね? マオちゃんのデザインした子供服、すごくかわいくて人気だし……!」
俺の言葉にマオちゃんは大粒の涙をぽろぽろとこぼした。
「俺だって辞めたくないよぉ~!」
「マオちゃん……?」
俺が困惑していると、マオちゃんの周りにいたマオちゃんファンのガチムチな髭熊系のお兄さんが怒りをあらわにした口調でマオちゃんの代わりに話し出した。
「聴いてくれよ!ひどい話なんだ! マオちゃんの同僚っつーか、ライバルみたいな奴が、マオちゃんがゲイだっていうのをどこかで知ったらしくて」
「え? ……マオちゃん、会社ではゲイって隠してたよね? もしかして……アウティング?」
俺の言葉に、まだ泣き止まないコマちゃんが頷く。
アウティング……本人の了承を得ずに会社や学校など周囲の人にゲイであることをバラす行為。
最低だ。俺も怒りがわいてきた。
でも、問題はそれだけではなかった。
「ゲイってのをバラすのも最低だけどな、そのバラし方が……マオちゃんが色々な男とラブホに入る瞬間の写真や、路上で俺とキスしていた時の写真を社員全員にメールでばら撒いたらしいんだ!」
「……は?」
「その同僚の野郎、『複数人と関係を持つような卑猥で気持ち悪い人と一緒に働くのは無理です。ブランドのイメージも傷つきます』『いつもマオさんからエロい目で見られて、仕事に集中できなくて困っています』なんてコメントもつけて送ったらしくて……」
「俺、そんな目で見てない、っ! 仕事と、プライベート、分けてるし! あいつ、好きなタイプじゃないし!」
「うんうん! そうだよね! マオちゃん、会社では揉めたくないし、仕事に集中したいからどんなに好みの人がいてもゲイのスイッチが入らないって言ってたし! 」
俺の言葉に周りのゲイも全員がうんうん頷く。マオちゃんの人柄はみんなよく解っている。
それに、複数人と関係って言うのも、確かに遊び人かもしれないけど……ノンケの男でも毎週違う女の子と遊んで自慢する奴とかいるよね? モテる自慢する女の子いるよね? 別に不倫でもないし、個人の自由なのに。
「ここのみんなは、俺のこと解ってくれているし、会社でも、俺のこと信じてくれている人はいっぱいいるけど……部署の半分くらいはあいつの味方だし、俺のこと元々よく知らない別の部署の人たちは、たぶん……なんか、毎日会社でひそひそ言われてて、避けられてて、人事に呼び出されて、否定したけど、でも、なんか……ゲイは……なんか、ゲイ差別みたいなことも言われて……」
マオちゃんがまた俯いて涙をこぼす。
何を言われたかは解らないけど、マオちゃんの味方が社内に少ないのはよくわかった。
はらわたが煮えくり返りそうだった。
マオちゃんはいつも笑顔で俺の愚痴をにこにこ聞いて励ましてくれて、自分もすごく努力して成果を出しているのに、俺が仕事で成果を出した時は自分の時以上に喜んでくれて……すごく良い子だし、すごく仕事にひたむきな子なのに。
ここにいるゲイはみんなそれを知っていて、タチとかネコとか関係なくマオちゃんが大好きなのに。
「たぶん、一ヶ月前に……同僚より先に、次のコレクションのリーダーを任されたから、それで、俺……俺が頑張っただけなのに」
しかも完全な逆恨み。
こんなの許していいはずがない。
「その同僚ボコボコにしてぇ!」
「俺も!」
「俺らで囲んで命乞いするまでボコるかぁ?」
マオちゃんのファンの中でも特にガタイのいい三人がそんなことを言うけど、それは良くない。
俺が嗜めようと口を開くより少し早く、マオちゃんとも俺とも仲がいい、ゲイ風俗のボーイをしているネコのミミくんが立ちあがった。
「それだとすぐに誰がやったか解ってみんなが捕まっちゃうからだめだよ! こういうのはプロに頼もう? うちの店のバックについてる組の若頭にちょっと貸しがあるからさ! 本職の人に心身ともに壊してもらおうよ!」
ミミくん……そういう系列の店なのは知っていたけど……ゆるふわ系の天使みたいな見た目なのに結構ハードな性格してるよね。
「そうだな。その方が良いかもな」
「俺たちよりも容赦なくやってくれそうだし」
「マオちゃんの身の安全を考えると、そういう怖い人が出てくる方が後々いいのかも……」
みんなミミくんの意見を名案だとばかりに頷いているけど、ちょっと待って欲しい。
「ねぇ、ちょっと待って。それはさすがに……」
俺が声をあげると、やっと涙が止まり始めたマオちゃんを含め、全員が俺を見た。
少し不満げな表情だったけど……
「怖い思いや痛い思いをさせるだけって、甘くない?」
俺が思わずにっこりと笑ってしまいながら言うと、周りのみんなの口角も徐々に上がる。
「ゲイを馬鹿にしたんだから、ゲイのことをよ~く知ってもらった方が良いと思うんだよねぇ~俺」
「それ、ユキくんが直々に教えてあげちゃうの?」
ミミくんの少し楽しそうな口調の質問に、満面の笑みで頷いた。
「うん。俺がしっかり、たっぷり、ゲイのことを教えてあげたいと思う。どうかな?」
マオちゃんの方を向くと、マオちゃんは何度か目を瞬かせて、瞳に溜まった涙を流し切った。
ミミくんもマオちゃんも、俺が何をしようとしているのか、だいたい想像がついたみたいだ。
「ユキくん……俺のために、いいの?」
「いいよ。お友だちがお世話になったんだから、当然!」
マオちゃんがまた涙をこぼす。
早く泣き止んで欲しいんだけど、多分さっきまでの涙とは違う理由の涙だから……まぁいいか。
マオちゃんが握りしめているハンカチはすでにびしょびしょだったので、スーツのポケットからハンカチを取り出してマオちゃんに渡した。
「ユキくん、ありがとう……!」
「ユキくん、俺たちに手伝えることがあったら言ってね?」
「うん。上手くいけば手伝ってもらうことがあると思うし、俺が上手くいかなかったらその若頭さんにお願いして」
ミミくんもしっかり頷いてくれて、周りの人たちも口々に「頼んだぞユキさん!」「協力することあったら言ってくれよ!」「ユキさんなら任せられる!」なんて言ってくれる。
そして後ろの方の人たちは……
「うわ、あのユキくんの本気か……その同僚、生き地獄に落ちるな」
「あぁ、やっべぇ……怖ぇ」
本気で怖がっているみたいだった。
ちょっと心外だけど、この作戦が成功しそうって意味だと思えば仕方が無いか。
さっきも言ったけど、俺は男にモテる。
一七八センチのモデル体型だけど、腰回りや胸には程よく肉がついていてむちっとしたエロい体。絶世の美形ではないけど、整っていて美人と言われる顔は、垂れ目がちで色気がある。真ん中で分けた少し癖のある黒髪を掻き上げるだけでエロいと言われる。
何より、俺自身がエッチが大好きで大好きで仕方がないことが見た目ににじみ出ているらしくて、「存在するだけでエロい」「歩くわいせつ物」「エロ同人で凌辱されてそう」「男なのに人妻っぽい」「俺の飼い主様になってくれませんか?」なんてよく言われる。
つまり……
俺の特技は気持ちよくて楽しいセックスをすること。
そして、狙った男を落とすこと♡
普段はこの特技を生かして楽しいセックスライフを送るだけだけど……。
大好きなセックスを楽しくない事情に使うのは嫌いなんだけど……。
友達が泣かされて黙ってなんていられないよね?
俺は自分の持てる技術を総動員して、マオちゃんを陥れたノンケ男に復讐することを決めた。
LGBTがどうとか言われるようになって、ゲイだからとあからさまな差別を受けることは少ないけど、世間にはまだまだゲイを差別する人もいるし、少数派なので「どう接したらいいかよくわからない」という人も多い。
それでも幸運なことに、俺の家族や職場や友人には理解のある人が多く、ゲイだからと辛い思いをすることは少ない。
特定の恋人を作るつもりはないけど、モデル体型の美人顔のお陰で結構モテるし、地元にはマナーのいいハッテン場や落ち着いて相手を探せる高級ゲイバーがあるからエッチの相手には困らない。
そして、エッチ抜きでゲイ仲間と楽しく話せる、和気あいあいとしたゲイバーもある。
なかなかいい感じのゲイライフだよね?
俺は今の自分の環境や周囲の人たちが大好きだ。
◆
月曜日から面倒な仕事に追われ、定時で終わったものの精神的にものすごく疲れていた。
こんな日はガンガン激しく抱いてもらって疲れを吹き飛ばすか、ゲイバーで仲のいい友達に愚痴を聞いてもらった後ちょっと猥談でもして気分を変えるか……今日は後者かな。
スーツにビジネスバッグを持ったまま、地元の雑居ビルの三階にあるゲイバーへと足を向けた。
「こんばんは~」
「ユキく~ん!!!!」
ゲイバーのドアを開けると、一〇人掛けのカウンターの中ほどでボロボロに泣いているマオちゃんに名前を呼ばれた。
マオちゃんは俺と同じネコ……受とかボトムとも呼ばれる性志向で、背は低いけどぽっちゃりむっちりした体格に短く刈った髪と顎髭がキュートな熊さんみたいな子だ。
俺もモテるけど、マオちゃんはマオちゃんですごくモテる。
モテるネコ同士、色々と気が合って仲良くしているけど……俺とマオちゃんでは需要のある層が違うから喧嘩にならないってのも仲良くできる一因かな。
「どうしたの? マオちゃん!?」
俺が心配しながら駆け寄ると、マオちゃんの周りにはすでにこの店の常連であるゲイがタチもネコも関係なく一〇人ほど集まっていた。
カウンター一〇席に四人掛けテーブルが三つの店だから、結構ぎゅうぎゅうだ。
「お、俺ぇ……会社、やめる……」
「え?」
マオちゃんは二十七歳の俺より三歳年下で、数年前に服飾系の学校を卒業して憧れの子供服ブランドの会社に入社していた。
就活を頑張っていたのも、入社後に仕事を頑張っていたのも、仕事をしながら更に勉強を頑張っていたのもよく知っている。
「なんで? マオちゃん会社大好きだよね? マオちゃんのデザインした子供服、すごくかわいくて人気だし……!」
俺の言葉にマオちゃんは大粒の涙をぽろぽろとこぼした。
「俺だって辞めたくないよぉ~!」
「マオちゃん……?」
俺が困惑していると、マオちゃんの周りにいたマオちゃんファンのガチムチな髭熊系のお兄さんが怒りをあらわにした口調でマオちゃんの代わりに話し出した。
「聴いてくれよ!ひどい話なんだ! マオちゃんの同僚っつーか、ライバルみたいな奴が、マオちゃんがゲイだっていうのをどこかで知ったらしくて」
「え? ……マオちゃん、会社ではゲイって隠してたよね? もしかして……アウティング?」
俺の言葉に、まだ泣き止まないコマちゃんが頷く。
アウティング……本人の了承を得ずに会社や学校など周囲の人にゲイであることをバラす行為。
最低だ。俺も怒りがわいてきた。
でも、問題はそれだけではなかった。
「ゲイってのをバラすのも最低だけどな、そのバラし方が……マオちゃんが色々な男とラブホに入る瞬間の写真や、路上で俺とキスしていた時の写真を社員全員にメールでばら撒いたらしいんだ!」
「……は?」
「その同僚の野郎、『複数人と関係を持つような卑猥で気持ち悪い人と一緒に働くのは無理です。ブランドのイメージも傷つきます』『いつもマオさんからエロい目で見られて、仕事に集中できなくて困っています』なんてコメントもつけて送ったらしくて……」
「俺、そんな目で見てない、っ! 仕事と、プライベート、分けてるし! あいつ、好きなタイプじゃないし!」
「うんうん! そうだよね! マオちゃん、会社では揉めたくないし、仕事に集中したいからどんなに好みの人がいてもゲイのスイッチが入らないって言ってたし! 」
俺の言葉に周りのゲイも全員がうんうん頷く。マオちゃんの人柄はみんなよく解っている。
それに、複数人と関係って言うのも、確かに遊び人かもしれないけど……ノンケの男でも毎週違う女の子と遊んで自慢する奴とかいるよね? モテる自慢する女の子いるよね? 別に不倫でもないし、個人の自由なのに。
「ここのみんなは、俺のこと解ってくれているし、会社でも、俺のこと信じてくれている人はいっぱいいるけど……部署の半分くらいはあいつの味方だし、俺のこと元々よく知らない別の部署の人たちは、たぶん……なんか、毎日会社でひそひそ言われてて、避けられてて、人事に呼び出されて、否定したけど、でも、なんか……ゲイは……なんか、ゲイ差別みたいなことも言われて……」
マオちゃんがまた俯いて涙をこぼす。
何を言われたかは解らないけど、マオちゃんの味方が社内に少ないのはよくわかった。
はらわたが煮えくり返りそうだった。
マオちゃんはいつも笑顔で俺の愚痴をにこにこ聞いて励ましてくれて、自分もすごく努力して成果を出しているのに、俺が仕事で成果を出した時は自分の時以上に喜んでくれて……すごく良い子だし、すごく仕事にひたむきな子なのに。
ここにいるゲイはみんなそれを知っていて、タチとかネコとか関係なくマオちゃんが大好きなのに。
「たぶん、一ヶ月前に……同僚より先に、次のコレクションのリーダーを任されたから、それで、俺……俺が頑張っただけなのに」
しかも完全な逆恨み。
こんなの許していいはずがない。
「その同僚ボコボコにしてぇ!」
「俺も!」
「俺らで囲んで命乞いするまでボコるかぁ?」
マオちゃんのファンの中でも特にガタイのいい三人がそんなことを言うけど、それは良くない。
俺が嗜めようと口を開くより少し早く、マオちゃんとも俺とも仲がいい、ゲイ風俗のボーイをしているネコのミミくんが立ちあがった。
「それだとすぐに誰がやったか解ってみんなが捕まっちゃうからだめだよ! こういうのはプロに頼もう? うちの店のバックについてる組の若頭にちょっと貸しがあるからさ! 本職の人に心身ともに壊してもらおうよ!」
ミミくん……そういう系列の店なのは知っていたけど……ゆるふわ系の天使みたいな見た目なのに結構ハードな性格してるよね。
「そうだな。その方が良いかもな」
「俺たちよりも容赦なくやってくれそうだし」
「マオちゃんの身の安全を考えると、そういう怖い人が出てくる方が後々いいのかも……」
みんなミミくんの意見を名案だとばかりに頷いているけど、ちょっと待って欲しい。
「ねぇ、ちょっと待って。それはさすがに……」
俺が声をあげると、やっと涙が止まり始めたマオちゃんを含め、全員が俺を見た。
少し不満げな表情だったけど……
「怖い思いや痛い思いをさせるだけって、甘くない?」
俺が思わずにっこりと笑ってしまいながら言うと、周りのみんなの口角も徐々に上がる。
「ゲイを馬鹿にしたんだから、ゲイのことをよ~く知ってもらった方が良いと思うんだよねぇ~俺」
「それ、ユキくんが直々に教えてあげちゃうの?」
ミミくんの少し楽しそうな口調の質問に、満面の笑みで頷いた。
「うん。俺がしっかり、たっぷり、ゲイのことを教えてあげたいと思う。どうかな?」
マオちゃんの方を向くと、マオちゃんは何度か目を瞬かせて、瞳に溜まった涙を流し切った。
ミミくんもマオちゃんも、俺が何をしようとしているのか、だいたい想像がついたみたいだ。
「ユキくん……俺のために、いいの?」
「いいよ。お友だちがお世話になったんだから、当然!」
マオちゃんがまた涙をこぼす。
早く泣き止んで欲しいんだけど、多分さっきまでの涙とは違う理由の涙だから……まぁいいか。
マオちゃんが握りしめているハンカチはすでにびしょびしょだったので、スーツのポケットからハンカチを取り出してマオちゃんに渡した。
「ユキくん、ありがとう……!」
「ユキくん、俺たちに手伝えることがあったら言ってね?」
「うん。上手くいけば手伝ってもらうことがあると思うし、俺が上手くいかなかったらその若頭さんにお願いして」
ミミくんもしっかり頷いてくれて、周りの人たちも口々に「頼んだぞユキさん!」「協力することあったら言ってくれよ!」「ユキさんなら任せられる!」なんて言ってくれる。
そして後ろの方の人たちは……
「うわ、あのユキくんの本気か……その同僚、生き地獄に落ちるな」
「あぁ、やっべぇ……怖ぇ」
本気で怖がっているみたいだった。
ちょっと心外だけど、この作戦が成功しそうって意味だと思えば仕方が無いか。
さっきも言ったけど、俺は男にモテる。
一七八センチのモデル体型だけど、腰回りや胸には程よく肉がついていてむちっとしたエロい体。絶世の美形ではないけど、整っていて美人と言われる顔は、垂れ目がちで色気がある。真ん中で分けた少し癖のある黒髪を掻き上げるだけでエロいと言われる。
何より、俺自身がエッチが大好きで大好きで仕方がないことが見た目ににじみ出ているらしくて、「存在するだけでエロい」「歩くわいせつ物」「エロ同人で凌辱されてそう」「男なのに人妻っぽい」「俺の飼い主様になってくれませんか?」なんてよく言われる。
つまり……
俺の特技は気持ちよくて楽しいセックスをすること。
そして、狙った男を落とすこと♡
普段はこの特技を生かして楽しいセックスライフを送るだけだけど……。
大好きなセックスを楽しくない事情に使うのは嫌いなんだけど……。
友達が泣かされて黙ってなんていられないよね?
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