2 / 13
2
しおりを挟む
「何人かは、ここから連れ出されて……」
「戻って来なかった?」
「……はい」
既に何人かの犠牲者が出ている。
そういうこと、か。
「……」
ある程度分かってはいたものの、実際にその事実を突きつけられると……。
憤り、後悔、焦り、そんなものが一気に胸を締め付け、言葉に詰まってしまう。
「でも、無事かもしれません。私もこの部屋に移される前は、他の部屋に監禁されていましたから。もしかしたら皆さんはそちらにいるかも」
他にも監禁場所がある?
ということは、誘拐された令嬢の数は何人になるんだ?
「メローネ嬢、あなたがいたその部屋には、他の令嬢も監禁されていたのか?」
「今ここにいるナナ様とその姉妹の方々がいらっしゃいました」
いたんだな。
「その場所は? ここと似た部屋なのか?」
「室内は似ていましたが……ここよりは暖かくて多少は過ごしやすかったと思います」
「確かに、ここは寒くて暗くて不快な部屋だからな」
「はい。こんな部屋にずっといたら身体を壊してしまいそうで……」
その通り。
この寒さは南で育った私にはかなり堪える。
長く過ごせるとは思えない。
とはいえ……。
身体を壊す前に、命を失う可能性の方が高いかもしれないが。
「……」
いや、弱気になってる場合じゃないな。
何とか捜査をして、彼女たちと脱出する方法を考えないといけないぞ。
ただ、問題は……。
今の私には外部と連絡を取る手立てがないということ。
おそらく拉致された時に所持品を回収されたのだろう。
「……5さん?」
「ああ……。それで、今現在ここにいるのはジョーヌ家門に、レッド家門、イエロー家門の娘たちか」
「はい。ジョーヌ家のシトロン様、レッド家のアポ様、イエロー家のナナ様とその御令妹の皆さんになります」
「……」
いずれも名の知れた家の娘たち。
このような場所に閉じ込められなんて、許されることじゃない。
早く陽のあたる世界に戻してやらないと!
監禁されて5時間が経過。
状況に変化はない。
脱出の目途も立っていない。
犯人逮捕のためのおとり捜査だというのに、全く手が出せない現状に焦りが募ってくる。
「5さん……大丈夫ですか?」
私に話しかけてくるのはメローネ嬢だけ。
他の者はやはり近づいても来ない。
「私は問題ない。あなたの方こそ大丈夫なのか?」
さっきより元気がないようだが。
「私も平気です。ナナ様たちに比べると私はまだまだ」
イエロー家門のナナ嬢とその令妹。
確かに、かなり顔色が悪いな。
もちろん、この状況に対する不安もあるだろうが、それだけじゃないだろう。
明らかに体調不良に見えるぞ。
このまま放置もできない、か。
「少し話してみよう」
「はい」
ということで、イエロー家姉妹の近くに近づこうとした、その時。
ゴゴォォ!
大きな音を立て扉が開かれ。
そして……。
「きゃあぁぁ!」
イエロー家の妹が!
「ナナお姉さま助けて、お姉さま!」
「離しなさい! 妹を返して!」
「お姉さまぁぁ!!」
「やめて、妹を離して!!」
「ああぁぁぁ」
……連れ去られてしまった。
「戻って来なかった?」
「……はい」
既に何人かの犠牲者が出ている。
そういうこと、か。
「……」
ある程度分かってはいたものの、実際にその事実を突きつけられると……。
憤り、後悔、焦り、そんなものが一気に胸を締め付け、言葉に詰まってしまう。
「でも、無事かもしれません。私もこの部屋に移される前は、他の部屋に監禁されていましたから。もしかしたら皆さんはそちらにいるかも」
他にも監禁場所がある?
ということは、誘拐された令嬢の数は何人になるんだ?
「メローネ嬢、あなたがいたその部屋には、他の令嬢も監禁されていたのか?」
「今ここにいるナナ様とその姉妹の方々がいらっしゃいました」
いたんだな。
「その場所は? ここと似た部屋なのか?」
「室内は似ていましたが……ここよりは暖かくて多少は過ごしやすかったと思います」
「確かに、ここは寒くて暗くて不快な部屋だからな」
「はい。こんな部屋にずっといたら身体を壊してしまいそうで……」
その通り。
この寒さは南で育った私にはかなり堪える。
長く過ごせるとは思えない。
とはいえ……。
身体を壊す前に、命を失う可能性の方が高いかもしれないが。
「……」
いや、弱気になってる場合じゃないな。
何とか捜査をして、彼女たちと脱出する方法を考えないといけないぞ。
ただ、問題は……。
今の私には外部と連絡を取る手立てがないということ。
おそらく拉致された時に所持品を回収されたのだろう。
「……5さん?」
「ああ……。それで、今現在ここにいるのはジョーヌ家門に、レッド家門、イエロー家門の娘たちか」
「はい。ジョーヌ家のシトロン様、レッド家のアポ様、イエロー家のナナ様とその御令妹の皆さんになります」
「……」
いずれも名の知れた家の娘たち。
このような場所に閉じ込められなんて、許されることじゃない。
早く陽のあたる世界に戻してやらないと!
監禁されて5時間が経過。
状況に変化はない。
脱出の目途も立っていない。
犯人逮捕のためのおとり捜査だというのに、全く手が出せない現状に焦りが募ってくる。
「5さん……大丈夫ですか?」
私に話しかけてくるのはメローネ嬢だけ。
他の者はやはり近づいても来ない。
「私は問題ない。あなたの方こそ大丈夫なのか?」
さっきより元気がないようだが。
「私も平気です。ナナ様たちに比べると私はまだまだ」
イエロー家門のナナ嬢とその令妹。
確かに、かなり顔色が悪いな。
もちろん、この状況に対する不安もあるだろうが、それだけじゃないだろう。
明らかに体調不良に見えるぞ。
このまま放置もできない、か。
「少し話してみよう」
「はい」
ということで、イエロー家姉妹の近くに近づこうとした、その時。
ゴゴォォ!
大きな音を立て扉が開かれ。
そして……。
「きゃあぁぁ!」
イエロー家の妹が!
「ナナお姉さま助けて、お姉さま!」
「離しなさい! 妹を返して!」
「お姉さまぁぁ!!」
「やめて、妹を離して!!」
「ああぁぁぁ」
……連れ去られてしまった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる