令嬢連続誘拐事件

明之 想

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「何人かは、ここから連れ出されて……」

「戻って来なかった?」

「……はい」

 既に何人かの犠牲者が出ている。
 そういうこと、か。

「……」

 ある程度分かってはいたものの、実際にその事実を突きつけられると……。
 憤り、後悔、焦り、そんなものが一気に胸を締め付け、言葉に詰まってしまう。

「でも、無事かもしれません。私もこの部屋に移される前は、他の部屋に監禁されていましたから。もしかしたら皆さんはそちらにいるかも」

 他にも監禁場所がある?
 ということは、誘拐された令嬢の数は何人になるんだ?

「メローネ嬢、あなたがいたその部屋には、他の令嬢も監禁されていたのか?」

「今ここにいるナナ様とその姉妹の方々がいらっしゃいました」

 いたんだな。

「その場所は? ここと似た部屋なのか?」

「室内は似ていましたが……ここよりは暖かくて多少は過ごしやすかったと思います」

「確かに、ここは寒くて暗くて不快な部屋だからな」

「はい。こんな部屋にずっといたら身体を壊してしまいそうで……」

 その通り。
 この寒さは南で育った私にはかなり堪える。
 長く過ごせるとは思えない。

 とはいえ……。
 身体を壊す前に、命を失う可能性の方が高いかもしれないが。

「……」

 いや、弱気になってる場合じゃないな。
 何とか捜査をして、彼女たちと脱出する方法を考えないといけないぞ。

 ただ、問題は……。
 今の私には外部と連絡を取る手立てがないということ。
 おそらく拉致された時に所持品を回収されたのだろう。

「……5さん?」

「ああ……。それで、今現在ここにいるのはジョーヌ家門に、レッド家門、イエロー家門の娘たちか」

「はい。ジョーヌ家のシトロン様、レッド家のアポ様、イエロー家のナナ様とその御令妹の皆さんになります」

「……」

 いずれも名の知れた家の娘たち。
 このような場所に閉じ込められなんて、許されることじゃない。
 早く陽のあたる世界・・・・・・・に戻してやらないと!





 監禁されて5時間が経過。
 状況に変化はない。
 脱出の目途も立っていない。

 犯人逮捕のためのおとり捜査だというのに、全く手が出せない現状に焦りが募ってくる。

「5さん……大丈夫ですか?」

 私に話しかけてくるのはメローネ嬢だけ。
 他の者はやはり近づいても来ない。

「私は問題ない。あなたの方こそ大丈夫なのか?」

 さっきより元気がないようだが。

「私も平気です。ナナ様たちに比べると私はまだまだ」

 イエロー家門のナナ嬢とその令妹。
 確かに、かなり顔色が悪いな。
 もちろん、この状況に対する不安もあるだろうが、それだけじゃないだろう。
 明らかに体調不良に見えるぞ。

 このまま放置もできない、か。

「少し話してみよう」

「はい」

 ということで、イエロー家姉妹の近くに近づこうとした、その時。

 ゴゴォォ!

 大きな音を立て扉が開かれ。
 そして……。

「きゃあぁぁ!」

 イエロー家の妹が!

「ナナお姉さま助けて、お姉さま!」

「離しなさい! 妹を返して!」

「お姉さまぁぁ!!」

「やめて、妹を離して!!」

「ああぁぁぁ」

 ……連れ去られてしまった。

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