30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

ギリギリ

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<ヴァーンベック視点>



「……」

 俺とヴァルターの5歩左。
 そこに怪物が転がっている。

「グッガッ△□$……」

 もちろん、俺がやったのでもなければ、ギリオンやヴァルターでもない。
 こんな芸当ができるのは。
 そう、こいつだけだろ。

「コーキ!」

「コーキ殿!」

「……やっとかよ」

 ほんと、ギリギリだった。

「遅すぎだぜ」

「悪い」

 そう答えるコーキの姿はいつも通り。
 普段と変わらぬその口調と雰囲気に、弛緩が止まらない。
 一気に緊張が解けちまう。

「みんな、大丈夫か?」

「……ああ」

「まったく問題ねえ」

 満身創痍の2人の顔にも余裕が生まれている。
 だからだろう。

「そんで、今まで何してたんだ?」

 ギリオンがしかめっ面でコーキに詰め寄っていく。

「……ちょっとな」

「ちょっとって、おめえ!」

「……」

 コーキがどこで何をしていたか?
 気にならないと言えば嘘になる。
 それでも、今はまず。

「ギリオン、コーキを心配していたおまえの気持ちはよく分かるが、そんな話してる場合じゃないぞ」

「なっ、心配なんかしてねえわ!」

「分かった、分かった。だから、質問はあとにしろよ」

「……ちっ」

「ってことで、コーキ、さっさと倒しちまおうぜ」

「ああ」

 力強く頷くコーキの目の先。
 通路に倒れていた怪物が立ち上がろうとしている。

「俺がやる。3人は休んでいてくれ」

「……了解だ」

「コーキ殿、申し訳ない」

「はあ?」

 戦闘に加わろうとするギリオンを何とか抑え、数歩後退。
 悪いが、ギリオンとヴァルターの治療に専念させてもらうぞ。




****************************




「オレは戦えるつってんだ!」

「いいから、おまえも来い」

 渋るギリオンをヴァーンとヴァルターが引っ張っていく。

「なっ、てめえら!」

「戦いたいなら、まず治療しろ」

「……」

 ふたりともに手慣れたものだな。

「もう、いつでもいいぞ」

「了解」

 さて、これで舞台は整った。
 戦闘に集中できる。

「オルセー、今度こそ決着をつけてやろう」

「オオォォォ」

 最後に語りかけてみるが、返ってくるのは呻きに似た声音だけ。
 やはり、オルセーとしての自我なんて欠片も残っていないのか。
 堕ちるとこまで堕ちてしまったんだな。

 なら、すぐ楽にしてやる。
 人外の姿から解放してやる。


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