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第11章 陰謀編
発動
しおりを挟む<ヴァーンベック視点>
「……説明は後だ。まずは屋敷を出よう」
「ちょっと待て。コーキが見つかってねえのに、オレだけ出るわけにゃあいかねえ」
「その件は外に出てから対処できる」
「……本当か?」
「うむ」
ギリオンという証人がいて冒険者ギルドの力を使える幻影ヴァルターなら、まあ。
「とはいえ、コーキ殿がこの屋敷にいるかどうかは不明なんだがな」
「コーキがいねえ?」
「いるかいないか、半々だろう」
「……」
「とにかく、今は指示通り動いてくれ」
「……分かった、動いてやるよ。けどなぁ、コーキに万一のことがあったら許さねえぞ」
「ああ」
「なら、行くか」
今まで渋ってたくせに、1人で先に部屋を出ようとするギリオン。
「おい待て、油断すんな」
「するわけねえだろ」
そう言いながらも扉に手をかけている。
「だから、待てって。外に出んのは気配を探ってからだ」
「……」
ということで室外を探ったところ、幸いなことに付近に人の気配がないことが判明した。
「行くぞ」
ゆっくりと扉を開き。
ギリオン、ヴァルター、俺という順番で部屋の外に足を踏み出す。
すると、迷宮回廊ではなく通常の廊下が目に入ってきた。
もちろん、人の姿は見えない。
分かっていたことだが、それでも、少なからず安心するものがある。
そんな思いを心に抱きつつ歩を進めると。
「ん?」
「何だ?」
この空気は?
****************************
ベリニュモナの護宝で2度も蘇り、ロシュノワの瞬宝で距離を取り、そして次は。
「エリルエイル」
マリスダリスの刻宝。
こいつ、どれだけ宝具を隠し持っているんだ?
「ベアサマ」
と、このままじゃ発動が完了してしまう。
どうする?
常道にするか、それとも……。
「メニケアイニシャ」
宗主はまだ宝具を持っているかもしれない。
それが未知の宝具なら、厄介なことになるだろう。
なら、ここは意表をつくべきだ。
「リゼンタリネムソウ」
宗主が文言を唱え終わった。
その瞬間。
俺の身体に、あの得体のしれない感覚が襲いかかってくる。
「……」
マリスダリスの刻宝を受けるのは3度目。
効果はよく分かっている。
ただ、分かっていても身体の自由を奪われるこの感覚は、決して気持ちの良いものじゃない。
「アリマさん!」
両手、両膝を床につけた俺に声を掛けてくる剣姫。
大丈夫、心配は無用。
そう答えたいが、今は口にできない。
だから、この目で察してくれ。
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