30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

覚醒者?

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「アフッ、フゥ、フゥ……」

 口から吐く息は白く濁り、異様な生臭さを放ってくる。

「うっ!」

 剣姫が顔をしかめる程の悪臭だ。

「フッ、フゥ……」

「駄目だ。ここまで禁具に侵されたら、手の施しようがない」

「……」

「もう、肉も魂も全て消し去るしか」

 さっきの状態ですら、殺すしかないと言ってたんだ。
 こうなってしまった以上、単に殺すだけではなく消し去る必要があるんだろう。

「私も手伝う。だから、すぐに縄を解いてくれ」

 どうする?

「……」

 剣姫は無言で首を振っている。
 そうだよな。
 解放なんてできないよな。

 やはり、ここは俺ひとりで。

「あいつを始末していいんですね、バシモスさん?」

「ああ、だが、その前にこの縄を!」

「必要ありません」

「相手は禁具覚醒者なんだぞ!」

「そうですね」

「っ! 無理だ、無謀だ!」

「とりあえず、やってみますよ」

 さあ決着をつけようか、オルセー。

「フゥ、フゥ……」

 バケモノと化したオルセーは動きを止めている。
 なら、先手は貰うぞ。

 抜き身の剣を右手に持ち接近。
 間合いに入っても動こうとしないオルセーに向かって、横薙ぎに一閃。

 ガッ!

 が、人の身を斬ったとは思えないような音と共に、剣身がオルセーの胸で止まってしまった。

「……」

 想像以上の硬さだ。

「ガアァァァ!」

 怒声とも悲鳴ともつかない声を出すオルセーから剣を引き抜き、いったん後退する。

「なっ! あの体に傷をつけたのか?」

 こんなものは浅傷にすぎない。
 まったく足りていない。
 なので、より強力な一撃を。

 ガキッ!

 これでも駄目か。
 ほんと、とんでもない肉体硬化だな。

「アアァァ!」

 と、今まで動きを止めていたオルセーが手を振るってきた。
 これまた人外の威力に違いないので、剣で受けずに跳躍して距離を取る。

「……」

 防御力と攻撃力は俺の想像をはるかに超えているようだ。
 が、動きは単純そのもの。オルセーらしい狡猾な動きは完全に消え失せている。
 油断しない限り、一撃もらうこともないだろう。

 ん?
 距離をおいて観戦していた剣姫が手と目を意味ありげに動かしている。
 これは?
 遠慮なく倒せってことか?

「フゥ、フゥ……」

 禁具でバケモノ化してもオルセーは魔物じゃない、一応人間だからな。
 相応の戦いをと考えていたんだが……。

「アリマさん!」

「……」

 分かったよ。
 対人というかせも、事後の処理も全て無視して戦ってやる。
 剣姫の指示とバシモスの了解があるんだ、それでいいんだろ。

 まずは、剣内部と外部の二重強化を……。

 強化完了。
 これで、あのオルセーも斬り裂けるはずだ。
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