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第11章 陰謀編
迷ってる?
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「しかし、こうなるとオルセーは捨て置きがたいな。いっそ、このまま裁きの場まで連れて行くか? どうだ、アリマ?」
「いえ」
俺にそんな時間はない。
まずはギリオンを見つけ出し安否の確認をするのが先なんだから。
と、告げたところ。
「ならば、私も手伝おう」
そう言って力強く頷いてくれた。
ほんと、頼もしい人だよ。
「では、まずは2人を連れてここを出るぞ」
「連れて行くんですね?」
「ふむ。件の事情を聞いたあとでは放置も選びづらい。それに、アリマなら2人を連れても問題ないであろう?」
「それは、まあ……起こします?」
「いや、目を覚ますと厄介だ。このまま担いで行こう」
確かに、その方が楽だな。
「ところで、さっきの戦闘」
うん?
「アリマも剣内部に魔力を込めることができるようになったのだな」
「ええ、何とか」
エビルズピークの悪意が創り出した異空間で共に励んだ内部魔力付与。
剣姫にはかなり遅れてしまったが、今回ようやく身につけることができた。
「ふふ、心強いことだ」
こちらこそだよ。
**********************
<ヴァーンベック視点>
「まだなんですか?」
いまだ目覚めないギリオンを担いでの脱出行。
かなり歩いているというのに、まったく出口が見えてこねえ。
「……」
「行きは、もう少し早く地下牢に辿り着けましたよね」
迷路のような通路を歩き続けるのは厄介極まりない。
それでも、さっきはギリオンのもとまで順調に到着できたんだ。
どうしても気が急いじまう。
そんな俺を無視するように淡々と足を運び続けるヴァルター。
はあぁぁ。
大変なこったぜ。
「……」
まあな。俺ひとりなら間違いなく迷っていただろうから、無事ギリオンを見つけ出せたのはヴァルターのおかげなんだ。分かってるさ。ただ、そうは言っても、ちょっとおかしくはないか?
裏を知ってんのか、何らかの手段を持っているのか分かんねえけどよ、説明くらいしてくれたってバチは当たんねえだろ。
まさか?
「ヴァルターさん……」
あんたも迷ってるんじゃ?
「……」
薄暗く単調な通路空間に響くのは、俺の声と足音のみ。
ヴァルターはずっと無言を貫いている。
「ヴァルターさん!」
「……」
本当に迷ってる?
だとすると……ギリオンを助け出したはずが、助けてねえってことになるぞ。それどころか、俺たちまで囚われちまう。
ちっ、コーキもまだ見つけてねえのに。
「脱出口が分からないのですか? ひょっとして迷ってるのでは?」
「……」
無言のヴァルターの足は止まらない。
「答えてください」
「……今はこのまま進むしかない」
やっとだ。
やっと喋りやがった。
けど。
「どういう意味です?」
「いえ」
俺にそんな時間はない。
まずはギリオンを見つけ出し安否の確認をするのが先なんだから。
と、告げたところ。
「ならば、私も手伝おう」
そう言って力強く頷いてくれた。
ほんと、頼もしい人だよ。
「では、まずは2人を連れてここを出るぞ」
「連れて行くんですね?」
「ふむ。件の事情を聞いたあとでは放置も選びづらい。それに、アリマなら2人を連れても問題ないであろう?」
「それは、まあ……起こします?」
「いや、目を覚ますと厄介だ。このまま担いで行こう」
確かに、その方が楽だな。
「ところで、さっきの戦闘」
うん?
「アリマも剣内部に魔力を込めることができるようになったのだな」
「ええ、何とか」
エビルズピークの悪意が創り出した異空間で共に励んだ内部魔力付与。
剣姫にはかなり遅れてしまったが、今回ようやく身につけることができた。
「ふふ、心強いことだ」
こちらこそだよ。
**********************
<ヴァーンベック視点>
「まだなんですか?」
いまだ目覚めないギリオンを担いでの脱出行。
かなり歩いているというのに、まったく出口が見えてこねえ。
「……」
「行きは、もう少し早く地下牢に辿り着けましたよね」
迷路のような通路を歩き続けるのは厄介極まりない。
それでも、さっきはギリオンのもとまで順調に到着できたんだ。
どうしても気が急いじまう。
そんな俺を無視するように淡々と足を運び続けるヴァルター。
はあぁぁ。
大変なこったぜ。
「……」
まあな。俺ひとりなら間違いなく迷っていただろうから、無事ギリオンを見つけ出せたのはヴァルターのおかげなんだ。分かってるさ。ただ、そうは言っても、ちょっとおかしくはないか?
裏を知ってんのか、何らかの手段を持っているのか分かんねえけどよ、説明くらいしてくれたってバチは当たんねえだろ。
まさか?
「ヴァルターさん……」
あんたも迷ってるんじゃ?
「……」
薄暗く単調な通路空間に響くのは、俺の声と足音のみ。
ヴァルターはずっと無言を貫いている。
「ヴァルターさん!」
「……」
本当に迷ってる?
だとすると……ギリオンを助け出したはずが、助けてねえってことになるぞ。それどころか、俺たちまで囚われちまう。
ちっ、コーキもまだ見つけてねえのに。
「脱出口が分からないのですか? ひょっとして迷ってるのでは?」
「……」
無言のヴァルターの足は止まらない。
「答えてください」
「……今はこのまま進むしかない」
やっとだ。
やっと喋りやがった。
けど。
「どういう意味です?」
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