30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

迷ってる?

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「しかし、こうなるとオルセーは捨て置きがたいな。いっそ、このまま裁きの場まで連れて行くか? どうだ、アリマ?」

「いえ」

 俺にそんな時間はない。
 まずはギリオンを見つけ出し安否の確認をするのが先なんだから。
 と、告げたところ。

「ならば、私も手伝おう」

 そう言って力強く頷いてくれた。
 ほんと、頼もしい人だよ。

「では、まずは2人を連れてここを出るぞ」

「連れて行くんですね?」

「ふむ。件の事情を聞いたあとでは放置も選びづらい。それに、アリマなら2人を連れても問題ないであろう?」

「それは、まあ……起こします?」

「いや、目を覚ますと厄介だ。このまま担いで行こう」

 確かに、その方が楽だな。

「ところで、さっきの戦闘」

 うん?

「アリマも剣内部に魔力を込めることができるようになったのだな」

「ええ、何とか」

 エビルズピークの悪意が創り出した異空間で共に励んだ内部魔力付与。
 剣姫にはかなり遅れてしまったが、今回ようやく身につけることができた。

「ふふ、心強いことだ」

 こちらこそだよ。




**********************

<ヴァーンベック視点>



「まだなんですか?」

 いまだ目覚めないギリオンを担いでの脱出行。
 かなり歩いているというのに、まったく出口が見えてこねえ。

「……」

「行きは、もう少し早く地下牢に辿り着けましたよね」

 迷路のような通路を歩き続けるのは厄介極まりない。
 それでも、さっきはギリオンのもとまで順調に到着できたんだ。
 どうしても気が急いじまう。

 そんな俺を無視するように淡々と足を運び続けるヴァルター。

 はあぁぁ。
 大変なこったぜ。

「……」

 まあな。俺ひとりなら間違いなく迷っていただろうから、無事ギリオンを見つけ出せたのはヴァルターのおかげなんだ。分かってるさ。ただ、そうは言っても、ちょっとおかしくはないか?

 裏を知ってんのか、何らかの手段を持っているのか分かんねえけどよ、説明くらいしてくれたってバチは当たんねえだろ。

 まさか?

「ヴァルターさん……」

 あんたも迷ってるんじゃ?

「……」

 薄暗く単調な通路空間に響くのは、俺の声と足音のみ。
 ヴァルターはずっと無言を貫いている。

「ヴァルターさん!」

「……」

 本当に迷ってる?
 だとすると……ギリオンを助け出したはずが、助けてねえってことになるぞ。それどころか、俺たちまで囚われちまう。

 ちっ、コーキもまだ見つけてねえのに。

「脱出口が分からないのですか? ひょっとして迷ってるのでは?」

「……」

 無言のヴァルターの足は止まらない。

「答えてください」

「……今はこのまま進むしかない」

 やっとだ。
 やっと喋りやがった。
 けど。

「どういう意味です?」


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