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第11章

犯罪者

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「騙したうえに、不意打ちとは」

 覚醒したばかりのバシモスが憤怒の表情で睨みつけてくる。

「許さぬぞ!」

 雷撃で眠らせた後、まだ僅かな時間しか経過していない。
 レンヌの者たちのタフさを考慮しても、ちょっと早すだろ。

「……」

 一方、オルセーは床に伸びたまま。
 そうだよな。
 雷撃の効果は、これくらい持続して当然なんだ。
 やはり、バシモスは普通じゃない。

「が、まずは聞いておこう。オルセーの意識を奪ったのもきさまだな?」

「……」

「狙いは何だ?」

「……少し話を聞こうと思いまして」

「話を聞く相手を眠らせ拘束しただと? 馬鹿馬鹿しい」

 本当のことなんだが。

「言い訳はそれだけか?」

「……」

「いいだろう。あとでゆっくりと聞いてやる」

 殺気を溢れさせ剣を手に取るバシモス。
 まあ、そうなるよな。
 さて、このまま戦ってもいいが。

「1つ質問させてください。ギリオンがどこにいるか知りませんか?」

「……ギリオン? 何者だ?」

「オルセー殿に囚われていたと聞いています」

「知らぬな」

「冒険者ギリオンですよ」

「知らぬ」

 監禁の事実どころか、ギリオン自体知らない?

「そのような名前、聞いたこともないわ」

 この様子、嘘とは思えない。
 ってことは、今回の件とバシモスは無関係。全てはオルセーの独断専行だったと?
 つまり、下の階で眠らせた女性2人と同様、無関係の相手に雷撃を放ってしまったんだな。
 
 この状況では仕方ないこととはいえ……。

「話はここまでだ、覚悟しろ!」

 バシモスの殺気がさらに膨れ上がっていく。
 そこに歩み寄ってきたのが公爵令嬢姿の剣姫。

「バシモス殿」

「サヴィアリーナ様、危険ですので離れていてください」

「ですが」

「大丈夫、賊は私に任せていただければ」

「……」

 バシモスは俺と剣姫の会話を聞いていなかったようだ。
 これは悪くないな。


「いくぞ!」

 バシモスが大剣を抜き放ち斬りかかってきた。
 巨体に似合わぬ敏捷な動きだ。

 キン!

 その剣を真正面から受け止め。

 キン、キン!

 ギン、ギン!

 2度3度、剣を斬り結んでやる。

「ぬっ!」

 キン、キン、ギン!

 気配から分かっていたことだが、かなりの腕前だな。
 とはいえ、脅威というほどではない。

 キン、キン!

 こうしてさばくのも難しいことじゃない。
 ただ、問題はどこまでやるかだ。

 キン、ギン、キン!

 ギリオンと俺の監禁に関与していないバシモス。
 レンヌ家門の一員としての責はあるだろうが、個人的な責任はない。
 公爵令嬢から仕事を任される関係にあるなら、王太子からの依頼も何度も受けているはず。さらには、あいつにとっての俺は不法侵入者であり暴行を加えた犯罪者ってことになる。


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