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第11章 陰謀編
知らない?
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予想していた通り。
ここはオルセーの家門、レンヌ家の屋敷だった。
なら、どうする?
ギリオンを置いて、俺ひとりで屋敷を去るという手は取れない。
かといって、ギリオンの気配を感じとれない状態で無闇に探し回っても良い結果は望めないだろう。そうすると、屋敷の責任者に会うのが手っ取り早いのだが。
「レンヌのご当主様は外出されているのですね?」
「……ええ」
不在ではどうしようもない。
とはいえ、当主の帰宅を待っている余裕もない。
「では、当主様不在時の責任者はどなたになりますか?」
「オルセー様ですけど……そんなことも知らずに作業を?」
「そもそも、作業とは何なのです?」
「……」
「あなた、本当に下で作業をしてたのですか?」
「どこの業者のどんな業務なんです?」
混乱が治まってきたのか、2人とも不審者を見る目つきになっている。
「正式な業務のでしょうね?」
まあ、少し冷静に考えれば現状をおかしいと思うのは当然だよな。
しかし、ここで騒がれるのはまずいぞ。
「あなた……」
もう少し情報を引き出したいところだが、仕方ない。
彼女たち2人には、このまま。
「まさか、侵入者の一味!?」
ん?
「こんな所まで入っていたの?」
侵入者かと言われれば、その通りではある。
ただ、今の言葉は?
俺以外の誰かがこの屋敷に侵入していると?
「……!」
まさか、ギリオン?
あいつが1人で脱出して階上にいるのか?
「黙ってないで答えなさい」
だとしたら、なぜ感知できないんだ?
俺があの気配を認識できないわけないのに?
いや……。
地下にあれだけの細工がなされてたんだ。階上ではどんな仕掛けがあってもおかしくないか。
「答えられないのね」
「……私は作業していただけです」
「そんな言葉では、信じられないわ」
「そうよ、あやしすぎる」
「と言われましても、地下の通路を内密に修理していただけですから」
「噓おっしゃい。あなた、裏の骨董品店から入ったんでしょ」
「えっ?」
骨董品店って何のことだ?
この建物はレンヌ家の屋敷なんだろ?
「……」
「知らないの?」
「はい」
まずい、反射的に頷いてしまった。
「ほんとに知らない?」
「知ってるのは屋敷の表だけ?」
信じられないといった表情の2人。
やはり、言葉を濁すべきだったか。
とはいえ、今さらだ。
「私は屋敷正面から入りましたので」
もう言い切るしかない。
「嘘をついているようには見えないわね」
「そう、ね」
「とすると、ほんとに何も知らず作業していただけ……」
「はい。何度も言ってますように、私は単なる作業人です」
「「……」」
どうやら、上手く切り抜けられそうだぞ。
なら、この流れで。
「ところで、この屋敷に誰かが侵入したのですか?」
「曲者が2人、裏から入ったと聞いているのだけれど」
2人が、地下からでなく裏から?
ということは、ギリオンじゃない?
ここはオルセーの家門、レンヌ家の屋敷だった。
なら、どうする?
ギリオンを置いて、俺ひとりで屋敷を去るという手は取れない。
かといって、ギリオンの気配を感じとれない状態で無闇に探し回っても良い結果は望めないだろう。そうすると、屋敷の責任者に会うのが手っ取り早いのだが。
「レンヌのご当主様は外出されているのですね?」
「……ええ」
不在ではどうしようもない。
とはいえ、当主の帰宅を待っている余裕もない。
「では、当主様不在時の責任者はどなたになりますか?」
「オルセー様ですけど……そんなことも知らずに作業を?」
「そもそも、作業とは何なのです?」
「……」
「あなた、本当に下で作業をしてたのですか?」
「どこの業者のどんな業務なんです?」
混乱が治まってきたのか、2人とも不審者を見る目つきになっている。
「正式な業務のでしょうね?」
まあ、少し冷静に考えれば現状をおかしいと思うのは当然だよな。
しかし、ここで騒がれるのはまずいぞ。
「あなた……」
もう少し情報を引き出したいところだが、仕方ない。
彼女たち2人には、このまま。
「まさか、侵入者の一味!?」
ん?
「こんな所まで入っていたの?」
侵入者かと言われれば、その通りではある。
ただ、今の言葉は?
俺以外の誰かがこの屋敷に侵入していると?
「……!」
まさか、ギリオン?
あいつが1人で脱出して階上にいるのか?
「黙ってないで答えなさい」
だとしたら、なぜ感知できないんだ?
俺があの気配を認識できないわけないのに?
いや……。
地下にあれだけの細工がなされてたんだ。階上ではどんな仕掛けがあってもおかしくないか。
「答えられないのね」
「……私は作業していただけです」
「そんな言葉では、信じられないわ」
「そうよ、あやしすぎる」
「と言われましても、地下の通路を内密に修理していただけですから」
「噓おっしゃい。あなた、裏の骨董品店から入ったんでしょ」
「えっ?」
骨董品店って何のことだ?
この建物はレンヌ家の屋敷なんだろ?
「……」
「知らないの?」
「はい」
まずい、反射的に頷いてしまった。
「ほんとに知らない?」
「知ってるのは屋敷の表だけ?」
信じられないといった表情の2人。
やはり、言葉を濁すべきだったか。
とはいえ、今さらだ。
「私は屋敷正面から入りましたので」
もう言い切るしかない。
「嘘をついているようには見えないわね」
「そう、ね」
「とすると、ほんとに何も知らず作業していただけ……」
「はい。何度も言ってますように、私は単なる作業人です」
「「……」」
どうやら、上手く切り抜けられそうだぞ。
なら、この流れで。
「ところで、この屋敷に誰かが侵入したのですか?」
「曲者が2人、裏から入ったと聞いているのだけれど」
2人が、地下からでなく裏から?
ということは、ギリオンじゃない?
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