３０年待たされた異世界転移

第１１章

石牢の中

　異世界間移動で戻った俺の目に入ってきたのは、移動前と変わらぬ石牢。
　俺が破壊した後、修理もされず放置されたままの石牢と……。

　無人の回廊。
　無人の地下空間……だけ。

　いない。
　いないぞ！

「ギリオン！？」

　どこだ？
　どこにいった？

「……」

　異世界間移動を発動する直前、この床の上にはギリオンと俺がいた。
　石牢を出てすぐの場で、ギリオンは意識を失っていた。
　あの時の朦朧としていた頭でも、それだけははっきりと覚えている。
　間違いない。

　あれから４時間。
　廊下にも石牢にもギリオンの姿は見えない。
　気配も感じられない。

　ただ、いくつかの鉄扉が視界の端に。

「……」

　閉じ込められている間は気づけなかったが、ここには複数の石牢が存在しているんだな。なら、目の前のこの破壊された石牢ではなく、他の石牢にギリオンがいる可能性も考えられるんじゃ？

「……ギリオン？」

　声を落として問いかけながら、１つずつ扉を調べていく。

「いないのか？」

　返事は返ってこない。

「いるんだろ？」

　格子の間から石牢の中を覗いても、目に入るのは無人の空間だけ。
　人っ子一人見当たらない。

「……」

　分かっていた。気配感知の結果から、この階が無人だということは。それでも、ここは魔法阻害が働く地下空間なんだ。感知ミスということも考えられる。どこかの石牢に虜囚がいてもおかしくはない。そう期待したのに。

「ギリオン……」

　残る石牢はあと１つ。
　ここで見つからなければ、地下にいないことが確定してしまう。
　最後の鉄扉。

「！？」

　人？
　人が倒れてる。

　薄暗い石牢の奥に横たわる人影を、眼に魔力を集めて凝視すると……。

　死体だ。
　それも白骨化した。

「ギリオン……じゃないよな？」

　不在だったのは僅か４時間。
　その時間で白骨化なんてするわけない。
　が、この世界には魔法や魔道具が存在する。
　短時間でそういうことも？

　いや、違うぞ。
　服が別物だ。
　だから、あの骨はギリオンじゃない。

「よかった」

　しかし、そうなると……。

　ギリオンが目を覚まして自力で脱出したのか？
　それとも、連れ去られたのか？
　まさか、オルセーの手に掛かったなんてことは？

「くっ！」

　すぐにギリオンを見つけ出さないと！
　一刻も早く階上の探索を！

　いや、ちょっと待て。
　その前に気配探知だ。
　階上の様子と、ギリオンの気配を精査すべきだろ。

　こんな時こそ冷静に。
　正確に探知、感知するためにも。

「ふうぅぅぅ」

「ふぅぅ」

　深呼吸。
　ゆっくりと呼吸を繰り返す。
　気を整え、魔力を整える。