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第11章

脱出

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 ガギーーン!!

 眠気で溢れる頭に響く金属音。
 これまでと違うこの音は?

「……」

 成功だ。
 鉄扉を破壊できたぞ。

 よし!
 これで外に出れる。

「ギリオン!」

 一緒に脱出するぞ。 
 そのためには、意識を失い横たわっているおまえを運ぶ必要がある。
 素早く鉄扉に背を向け。
 ギリオンのもとへ駆け寄ろうとする、が。

「なっ?」

 2歩目を踏み出したところで躓いてしまった。

「これは……」

 痺れだ。
 脚全体が痺れ、感覚がおかしくなっている。

「……」

 それでも、気力を奮い立たせ何とか歩行体勢を保つことはできた。
 ただし、痺れが消えるわけじゃない。

「ぅぅ」

 両脚ともにもつれて上手く進めない。
 魔法薬を口に含んでも、効果は見られない。
 さらに眠気まで……。

「それがどうした!」

 今はもう泣き言を言ってる場合じゃない。
 時間がないんだ。

「ぐっ!」

 痺れる足を引きずりながらも歩を進め。
 ギリオンに接近し、肩に担ぎ上げてやる。

「行くぞ!」

 気合いを入れなおし、ギリオンを担いだまま鉄扉に向かう。
 思うように動かない足を無理やり魔力で支え前進する。

 脱出だ。
 絶対外に出るからな。

「……」

 鉄扉はもう目の前。
 すぐそこには廊下も見える。

 なのに、ここで。

 ダン!

 転んでしまった。
 躓くどころじゃない。
 派手に転んでしまった。

「大丈夫か、ギリオン?」

 返事はない。
 依然として穏やかな表情で眠ったまま。

「……」

 分かってはいたけれど、かなり強烈な睡魔なんだろう。
 その証拠に、俺の眠気も勢いを増す一方だ。

 これは、急いで脱出しないとまずいことになるぞ。
 とはいえ、出口まではあと数歩。
 もう一度立ち上がりさえすれば……。

「!?」

 立てない?
 足裏に、膝に力が入らない。
 目もかすんできた。

「……」

 だったら、立たなくていい。
 このまま外に出てやる。

「うっ、ぐっ!」

 ギリオンを背に床を這いながら前へ、前へ。
 鉄扉の外へ。

 もう、脱出以外何も考えられない。

「……」

「……」

「……」


 ここは?
 外?

 間違いない。
 石牢の外だ!
 脱出できたんだ!

 ただ……。

 これ以上は動けない。
 せっかく脱出できたのに。
 ここで意識を失ったら……。

「ギリオン?」

「……」

 どうすればいい?
 今の俺ができることは?
 最悪の事態を回避する術は?

「……」

 頭が上手く働かない。
 論理的に考えられない。

 眠い。
 意識を失ってしまう。

 駄目だ!
 それだけは回避しないと。

 なら、ここで動くべき。
 今すぐ決断を。

 だから……。

 使ってしまった。
 ほぼ無意識に。
 ずっと迷っていた異世界間移動を。

 そして、俺は無事日本の自室に戻り。
 そのまま意識を手放して……。


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