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第11章

元凶

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「オレが聞いてんのは、今がどういう状況かってこった!」

 悪いが、こっちも良く分かっていない。

「こんな枷、さっきまではなかっただろうが。誰かが入ってきて、枷をつけたのかよ?」

 分かってるのは。

「ここは、さっきまでいた石牢じゃないぞ」

 この程度。詳しい状況なんて全く掴めていない。

「はあ?」

「意識を失った後に移送されたようだ」

「なっ、移送? 衛兵詰所の地下じゃねえ?」

「そうだな」

「って、おめえも眠らされたのか?」

「ああ、俺も意識を奪われた」

「オレだけじゃなくコーキも……」

「不甲斐ないことにな」

「……」

 目覚めたら、この状況。
 驚くのも当然だ。

「眠らされて移送ってか? で、体は無事だと?」

「そういうことだ」

「んで、移送先は同じような石牢……」

 その気持ち、よく分かるぞ。
 意味が分からないよな。

「いったい、どうなってる?」

「分からない。ただ、こうして2人ともに無事なのは何よりだろ」

「まあ……」

「命があれば、何とかなる。いや、何とかしてやる」

「おう、そうだな!」

 前の石牢同様、ここでも魔法は使えない。
 今すぐ鉄扉を破壊することもできない。
 枷も鎖もだ。

 ただ、それもあと少し。
 魔力阻害の影響を受けない運用法がもうすぐ完成する。
 半刻、いや四半刻もあればそれを使って脱出できる。

「あと少し待ってくれよ。また集中するからな」

「頼んだぜ」

 再び魔力調整のために集中を……。


 コツ、コツ、コツ。

 そこに聞こえてきたのが、階段を下りるような足音。

「おい、誰かが来んぞ」

「ああ」

 コツ、コツ。

 鉄扉の前で足音が止まる。
 そして。

 ギイィィィ。

 扉が開かれ。

「おや、もう目覚めてましたか?」

 耳に入ったのは、そう、覚えのある声だ。

「てめぇ!」

 嘲るようなその声音を聞き、駆け出すギリオン。

 ガシャン!

 が、すぐに鎖と足枷に止められてしまう。

「くっ!」

 この鎖の長さでは鉄扉ギリギリまでしか届かないのだから、仕方ない。

「おお、危ないですねぇ」

「おめえが元凶か?」

「元凶とは、嫌な言葉を使いますねぇ」

「そんなこたぁ、どうでもいい!」

「はぁ~、粗野な冒険者は嫌ですねぇ」

「うるせえ! おめえが元凶なんだろうが」

「ふふ、元の凶ということなら、そこの冒険者でしょ」

「……」

「ですよね」

 嗤いの中に残忍な光を潜ませながら、こちらを見つめてくるのは。

「オルセー……」

 夕連亭と検問所前で戦った、風根衆の魔法剣士。

「おまえ、生きていたのか?」


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