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第11章

分からない

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 発動しない?
 いや、そんなわけないだろ。
 なら、もう一度。

「異世界間移動」

「……」

「異世界間移動!」

「……」

 連続で発動を試みるも、何も起きない。
 やっぱり移動できない。
 魔法だけじゃなく、異世界間移動も使えないのか?

 いったいどうなってるんだ、この石牢は?

「うっ」

 困惑している俺に襲い掛かってきたのは、さらなる眠気。
 抗えないほどに強烈な睡魔が身体を侵食してくる。

「ぅぅ……」

 ああ、だめだ。
 意識を保てない。

 これ以上は……。
 ねむい……。




 コツ、コツ。

 コツ、コツ、コツ。

 コツ。

「ふふ」

「……」

「はははは」

 薄れいく意識の中。
 俺の耳に届いたのは、不快な嗤い声。
 どこかで聞いたような……。

「随分と待ちました」

「……」

「耐え忍んでいたんですよ。この時を待って、ずっと、ずっと」

「……」

「ですが、これで! これで、借りを返せそうです」

「……」

「ようやくね」




************************

<ヴァルター視点>



 ギリオンが消えて5日。
 屋敷にまだ戻って来ない。
 連絡もない。
 確定情報も掴めていない。
 これはもう、どう考えてもただ事じゃないな。

 こっちのあずかり知らぬところで何かが起きている?
 その可能性が高いのでは?

 もちろん、単なる事故、単純な事件という線もありえる。
 が、冒険者としての勘が告げてくる、不穏な予感を。

 裏で何か大きな力が動いている。
 そんな気がしてならない。

「……」

 仮にそれが真実だとして。
 その力は何なのか?
 オレの手に負えるものなのか?

 分からない。
 今のオレに分かるわけがない。

 ただし、動くことはできる。
 そのために使える力、伝手は。

「……」

 風根衆は避けた方がいいだろう。
 ウィル様の現状では、深く関わるべきじゃないからな。

 となると、頼れるのは冒険者ギルド。
 長年この身を置き、貢献してきたギルドの伝手しかない。

 ということで、ギルドで得た情報をもとに辿り着いたのが。

「ここか」

 白都の南方に設置された衛兵詰所。
 この詰所地下にある石牢にギリオンが勾留されているらしい。

「……」

 もちろん、これは確定した事実じゃない。
 それでも確度は低くないはずだ。



「何か用かな?」

 詰所前で立ち止まっている姿を見とがめたのか、中から壮年の衛兵が出て来た。

「ああ、1つ聞きたいことがある」

「……」

「石牢にいる者について教えてもらいたい」

 もう少しの辛抱だぞ、ギリオン。
 大人しく待ってろよ。



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