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第11章

想定外

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「どうすんだ、コーキ?」

「……」

「オレは、こんなとこで時間潰してる暇ねえんだぞ」

「……」

 冷たい石壁で囲まれた狭い部屋に、ギリオンの苛立った声が反響する。

「くそっ!」

 レイリュークさんの道場の裏で衛兵に囲まれた俺とギリオン。
 結局、その後は詰め所に連れて行かれ、そのまま勾留されることになってしまった。

 罪状はギリオンによるレイリュークさんへの暴行。
 一発の拳撃だけで、この状況だ。
 俺にいたっては、手を出してすらいないのに。

「ちっ!」

 本当に信じがたい。

「で、すぐに出れんだろうな?」

「……多分な」

「多分かよ」

 俺もギリオンと同じ。
 こんなところで、ゆっくりしている時間はない。

 王都ではやることが沢山あるのだから、今夜か明朝には釈放してもらわないと予定が狂ってしまう。

 とはいえ、所詮はたった1発の拳。大怪我を負わせたわけでもない。であれば、大した罪にはならないはず。すぐに釈放されるはず。

 そう思うのだが……。




*****************************

<ジンク視点>



「厄介なことになっちまった」

「問題が起こったのか?」

「ああ」

「どちらの仕事だ?」

「どっちもだな」

「どちらにも問題が?」

「ああ、どっちもだ。が、今はあの兄さんの方が厄介かもしれない」

「……」

 いつもと同じ宿。
 いつもと同じ定時報告。
 告げる相手も変わりはない。

 ただ、今回は少々面倒なことになっている。

「詳しく聞こうか」

「ああ」




「なるほど。それは厄介なことになっているな」

「だろ」

「ただ、大きな問題というわけでもない。まだ何とでもなる状況だ」

 はは、簡単に言ってくれる。

「おまえも知っての通り、南での仕事に比べれば何てことはないな」

 そりゃ、そうだ。

「あれに比べれば、大抵のことは問題じゃなくなるぞ」

 あんな仕事、オレは手を出したくない。

「ああ。だから、おまえには白都で頑張ってもらおうか」

「はあ~」

「できるだろ?」

「しょうがねえ、明日も朝から働いてやるよ」

「ふむ。任せたぞ」

 仕方ない。
 仕事は仕事だ。
 任されてやる。

「それで、黒都の方はどうなんだ?」

「何とか上手くやっているようだぞ」

「ほう、あいつが真面目に働いてるのか?」

「真面目かどうかは怪しいもんだが、イリアルは仕事だけはしっかりこなす奴だからな」

 確かに。
 普段のあいつはいい加減なところばかりが目立つが、一度引き受けた任務には責任を持つ男だった。

「仕事ができるって点では、おまえと同じか」

「……」

「なあ、メルビン」


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