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第11章

静の攻防

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「話はおめえを倒してから、ってな」

 そう。
 ジルクール流、レイリュークという名には興味を惹かれてしまうが、すべては決着をつけてからだ。

「あとで、じっくり聞いてやらぁ」

「……」

 距離を取り、剣を手にしたまま動きが止まる。

「……」

 ギリオンが発する剛の気に変化はない。
 長身剣士の静の気配にも変わりはない。

 静と剛の気が、宙でぶつかる音が聞こえるようだ。
 ただ、実際は。

「……」

「……」

 無音。
 ギリオンも、長身剣士も観衆も。
 ピクリとも動かない。

 静の剣を操る長身剣士はまだしも、剛剣のギリオンが静の対峙を選ぶとは珍しい。
 相手に合わせているのか、それとも俺の知らない手があるのか?

「……」

「……」

 静寂と緊張が広場を支配する中。
 時間だけが過ぎていく。


 うん?
 ギリオンの構えがいつもと違う。
 重心だ。地に根が生えたようにどっしりとしたギリオンの構えが、変化しているんだ。
 ギリオンがこんな剣構えをするとは……驚きだな。

「……」

「……」

 構えが軽い。
 浮いているように軽い。
 それはまるで……。

 宙に浮き。
 水に浮き。
 空を舞うかのよう。

「……」

「……」

 ギリオンから剛の気が消え。
 殺気も消えていく。

 これは……。

 幻影ヴァルターの剣構え?
 まさか、幻影の剣を身につけている?
 剛剣のギリオンが静の極致である幻影、無拍子の剣を?

 予備動作無しで放たれる無拍子の剣。
 必中不可避の静剣を放てるのか?

「……」

「……」

 対峙するふたりには、いまだ動きは見えない。
 静かな対峙が続いている。
 が、ほんの微かな剣先の揺れを俺の目が捕えた瞬間。

 剣気を消したギリオンの静剣が、敵の胸前に!

「!?」

 驚愕の表情を浮かべる長身剣士。
 突然現れた刺突の剣を避けようと身を捻るが、間に合わない。

 直進する剣先が、斬り裂いた!

「ぐっ!」

「ちっ、浅えか」

 胸に決まったギリオンの剣先。
 ただ、寸前で相手が上半身を捻ったため、胸を斬り裂いただけ。
 倒せてはいない。

「完璧には程遠いぜ」

 ギリオンの言葉通り、完璧ではない。
 微妙に無になりきれていない。
 それでも、充分に効果的な無拍子だった。
 実際、今相手に傷を負わせたのだから。

「くぅぅ……」

 傷を受けた長身剣士は苦悶の表情で距離を取っている。

「浅えが、これで勝負はついただろ」

 ああ、そういうことだ。
 だからな。

「ギリオン!」

「心配いらねえぜ。殺しゃあ、しねえよ」

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