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第10章 位相編
ギリギリ
しおりを挟む「っ!?」
消えた?
また、消えた。
連続で可能なのか?
「……」
「兄さん、戻ってくれ。もう結界を張るから、今すぐに!」
次に現れるまで数秒はかかるはず。
そこで詠唱再開されると……。
「有馬君!」
武上も古野白さんも、既に武志の隣にいる。
もちろん、幸奈もだ。
「……」
吾妻の異能発動直前には武志のもとに集まること。
武志の結界に守ってもらうこと。
これは対異能の最良防御策であり、事前に決めた作戦でもある。
「功己!」
そうだな。
俺も戻った方がいいだろう。
結界の中にいれば、五感喪失の異能にも対抗できるのだから。
「早く戻って!」
「ああ」
了解だ。
気配感知を切らすことなく後退。
武志たちのもとまで警戒を緩めず駆ける。
「……」
っと、来たな。
3度目の登場だ。
吾妻までは10メートル程度。
今の俺は後退中。
だが、この距離ならやれるのでは?
「だめよ! 詠唱が終わるわ!」
もう一度吾妻に向かおうかと迷っている俺に古野白さんの声。
「急いで!!」
やっぱり間に合わないか?
仕方ない。
再加速して後退。
が!
「なっ!?」
足下に窪みが?
異能か?
何とか反応し転倒を免れたが、バランスを崩し足が止まってしまった。
これは、もう間に合わない?
「功己!?」
ギリギリだ。
だったら。
「俺に構わず発動しろ!」
その言葉とともに駆ける。
間に合う僅かな可能性に賭けて。
「兄さん」
「結界を張れ!」
「そんなこと……」
「……loss of……」
「こっちは何とかする。早く発動を!」
「……」
「ちっ、仕方ねえ。武志、発動だ」
「……結界!」
武志の結界が発動された。
とほぼ同時に。
「…… five senses!!」
吾妻の詠唱も完了。
「功己?」
「……」
俺は結界まであと数歩。
間に合わなかった。
「功己ぃぃ!!」
「有馬君!!」
詠唱が終わった瞬間。
今まで味わったことのないような感覚が?
「くっ!」
俺の神経をおぞましい冷気が撫でてくる。
悪寒が走り、背筋が凍りつき。
目の前が真っ暗に?
そして……。
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