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第10章 位相編
余裕
しおりを挟む「ところで有馬ぁ、おまえ何か持ってねえのか?」
ん?
「こっちは20時間以上、腹にまともな物いれてねえんだ。有馬なら、水くらい持ってんだろ?」
そうだった。
長時間位相空間に閉じ込められている4人のために用意していたんだ。
「これでいいか?」
鞄から出すと見せかけてアイテム収納から携帯食と水を取り出すと。
「おお! さすがだぜ」
「有馬君!」
「ありがと、功己」
「兄さん」
「いや……」
大したものじゃないけど、遠慮なく食べてくれ。
「兄さんのおかげで生き返ったよ」
「ほんと、有馬君のおかげで助かったわ」
「体力もバッチリ。作戦も完璧。何の問題もねえ。あとは、奴らが現れんのを待つだけってな」
携帯食と水を補給した後。
新たな作戦を立て終えた皆の顔には余裕が見える。
この姿を見ていると、前回はエネルギー不足のせいで敗れたのではと思えてくるな。
「……」
あの惨状の原因が本当にエネルギー不足だけなら、もう問題はない。この先の戦いを余裕を持って迎えることができる。ただし、そうじゃない場合は……。
「そろそろ吾妻たちが姿を現す頃ね」
「おう、今度こそ倒してやろうぜ。まっ、有馬もいることだし楽勝だろうけどよ」
「武上君、異常な普通人が味方だからって油断しないで」
「……」
「有馬君は、どこまでいっても普通人なのだから」
「おいおい、古野白が一番根に持ってんじゃねえか」
「そんなことないわ。ただ、私は有馬君の異常性をよーく知っているだけよ」
古野白さん……。
まっ、こんなことが言えるのも余裕がある証拠。
悪いことじゃない、か。
「そうかよ、って……おいでなすったぜ」
「ええ」
古野白さんと武上の視線の先、数メートル先の空間が歪んでいる。
「武志君、幸奈さんは一度下がって、それでもしもの場合はお願い」
「「はい!」」
「私たちも最初は待機。武上君、分かってるわよね」
「ああ、最初だけ有馬に譲ってやるよ」
「悪いな」
まずは俺が吾妻と戦う。
何が起こるか分からない今回の戦いでは、それが4人を守る最善手だろう。
「有馬君、いいかしら?」
「もちろんです」
「現れたぞ!」
空間の歪みが消え、吾妻と空間異能者が姿を現した。
「!?」
「なっ、どうして?」
俺を視認して、驚愕の表情を見せる2人。
「吾妻さん、退いてアレを!」
「ああ」
一呼吸も置かず後ろに跳躍、後退していく。
が。
「有馬ぁ!」
「分かってる」
逃すわけがない。
こちらも、追走だ。
おっと。
「……The force is sense」
さっそく使ってくるか。
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