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第10章 位相編
オルドウ 1
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5年前の位相世界から異世界へ。
長い夜を無為に過ごさないためにも位相世界の謎を探るためにも、あちらに渡った方がいい。そうは思うのだが……15歳の幸奈を研究所ビルに残して異世界に渡っている場合かとも考えてしまう。
ただ、異世界に渡った場合でも一晩中研究所を離れるわけじゃない。1/3という時間差があるのだから、12時間の滞在でも4時間後にはここに戻ることができる。今回はあっちで厄介事に関わるつもりもない。なら問題ない。ないはずだ。
となると、ここは……。
よし、少しだけ様子を見に行くとしよう。
「……異世界間移動!」
発動と同時に、いつもと同じ奇妙な感覚が身を包み込んでくる。
「……」
移動自体に問題はないだろうが、何らかの違いがあってもおかしくはない。向こうの世界が俺の知る異世界じゃない可能性もある。そんなことを考えている内に、転移は無事終了。
目に入ってきた光景は……。
「あの宿、か?」
前回の転移は、テポレン山でセレス様と別れた日の夜。
オルドウの街に入った後に宿から行っている。
今俺がいるのも……その宿に借りた部屋の中だよな?
「……」
造りのしっかりしている硬いベッドに飾り気のない1人用のテーブル。
壁には、くすんだ風景画。
道路側に設えられた小窓。
小窓から見える眺めも……。
間違いない。あの宿の一室だ。
窓の外に見えるオルドウの街は、早朝のもの。
柔らかい日差しの中、人々が通りを行き交っている。
「……」
前回転移した時刻、日本での活動時間、位相世界で過ごした時間。
それらを考慮すると、経過時間に大きな齟齬はない。
つまり、普段の異世界間移動と時間の面で変わりはないってことだ。
「いや……。そうとも限らないか」
一見、整合しているように思えるが、この世界自体が位相異世界、または数年前のオルドウという可能性だってある。
まずは外に出て確認すべきだな。
宿を出て足を運んだのはオルドウの冒険者ギルド。
カレンダーはもちろん、時間を伝える魔道具も設置されているギルドは、現状を確認するにはうってつけの場所だからだ。
「さてと」
久しぶりのオルドウ冒険者ギルド。
正門をくぐった先には。
「今日は何する?」
「軽めにしようぜ」
「おいおい、討伐系が少ないぞ」
「今朝は依頼自体が少ないんじゃねえの」
「……だな」
依頼を眺める冒険者たちの姿。
俺が知るオルドウギルドそのものの眺めだ。
ただし、時間は不明。とてもそうは見えないが、5年前の可能性だってある。
「……」
事実を確認するため、カレンダーと魔道具の前へ。
そこに表示されていたのは……4刻(8時)。
日本に戻った日の翌朝4刻だった。
「……そうか、そうなんだな」
これは、俺の知る異世界と同じ時間の流れ。
つまり、過去世界じゃないってことになる。
「……」
けど、まだだ。まだ分からない。
ここが位相異世界という可能性も……。
「おい、あいつ、ダブルヘッドスレイヤーじゃねえの?」
「なっ、どこだ?」
「そこだよ」
「ありゃあ……ダブルヘッド殺しの新人?」
「オルドウに戻ってたのか?」
どうやら、その可能性も低そうだ。
「なら、ギルマスに知らせないと」
「ちょっと待て、あいつ髪色がおかしいぞ」
「確かに……ってことは、別人?」
「それにしては似すぎだろ」
「じゃあ、どうするよ?」
「……」
「……」
ただ、このままギルドにいると面倒なことになるかもしれない。
もう少しだけ確認して早めに離れるとしよう。
長い夜を無為に過ごさないためにも位相世界の謎を探るためにも、あちらに渡った方がいい。そうは思うのだが……15歳の幸奈を研究所ビルに残して異世界に渡っている場合かとも考えてしまう。
ただ、異世界に渡った場合でも一晩中研究所を離れるわけじゃない。1/3という時間差があるのだから、12時間の滞在でも4時間後にはここに戻ることができる。今回はあっちで厄介事に関わるつもりもない。なら問題ない。ないはずだ。
となると、ここは……。
よし、少しだけ様子を見に行くとしよう。
「……異世界間移動!」
発動と同時に、いつもと同じ奇妙な感覚が身を包み込んでくる。
「……」
移動自体に問題はないだろうが、何らかの違いがあってもおかしくはない。向こうの世界が俺の知る異世界じゃない可能性もある。そんなことを考えている内に、転移は無事終了。
目に入ってきた光景は……。
「あの宿、か?」
前回の転移は、テポレン山でセレス様と別れた日の夜。
オルドウの街に入った後に宿から行っている。
今俺がいるのも……その宿に借りた部屋の中だよな?
「……」
造りのしっかりしている硬いベッドに飾り気のない1人用のテーブル。
壁には、くすんだ風景画。
道路側に設えられた小窓。
小窓から見える眺めも……。
間違いない。あの宿の一室だ。
窓の外に見えるオルドウの街は、早朝のもの。
柔らかい日差しの中、人々が通りを行き交っている。
「……」
前回転移した時刻、日本での活動時間、位相世界で過ごした時間。
それらを考慮すると、経過時間に大きな齟齬はない。
つまり、普段の異世界間移動と時間の面で変わりはないってことだ。
「いや……。そうとも限らないか」
一見、整合しているように思えるが、この世界自体が位相異世界、または数年前のオルドウという可能性だってある。
まずは外に出て確認すべきだな。
宿を出て足を運んだのはオルドウの冒険者ギルド。
カレンダーはもちろん、時間を伝える魔道具も設置されているギルドは、現状を確認するにはうってつけの場所だからだ。
「さてと」
久しぶりのオルドウ冒険者ギルド。
正門をくぐった先には。
「今日は何する?」
「軽めにしようぜ」
「おいおい、討伐系が少ないぞ」
「今朝は依頼自体が少ないんじゃねえの」
「……だな」
依頼を眺める冒険者たちの姿。
俺が知るオルドウギルドそのものの眺めだ。
ただし、時間は不明。とてもそうは見えないが、5年前の可能性だってある。
「……」
事実を確認するため、カレンダーと魔道具の前へ。
そこに表示されていたのは……4刻(8時)。
日本に戻った日の翌朝4刻だった。
「……そうか、そうなんだな」
これは、俺の知る異世界と同じ時間の流れ。
つまり、過去世界じゃないってことになる。
「……」
けど、まだだ。まだ分からない。
ここが位相異世界という可能性も……。
「おい、あいつ、ダブルヘッドスレイヤーじゃねえの?」
「なっ、どこだ?」
「そこだよ」
「ありゃあ……ダブルヘッド殺しの新人?」
「オルドウに戻ってたのか?」
どうやら、その可能性も低そうだ。
「なら、ギルマスに知らせないと」
「ちょっと待て、あいつ髪色がおかしいぞ」
「確かに……ってことは、別人?」
「それにしては似すぎだろ」
「じゃあ、どうするよ?」
「……」
「……」
ただ、このままギルドにいると面倒なことになるかもしれない。
もう少しだけ確認して早めに離れるとしよう。
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