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第10章 位相編

邪狼狗 8

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「違えだろ!」

「違わないでしょ」

「ありゃ惜敗だってぇの。鷹郷さんが勘違いすんじゃねえか」

「どこが惜敗なのよ」

「どう考えても惜敗だろうが」

「あなたねぇ、何度も同じこと言わせないで」

「古野白ぉ……」

 武上少年も古野白さんも随分と元気じゃないか。
 とても不自由な体とは思えないぞ。

「里村君も見てたし計測もしてたんだから、いい加減認めなさい」

「……」

 まっ、こっちとしては一安心ではある。
 気も楽になるが、この2人のやり取り……。
 何というか、5年後を見ているようだな。


「古野白、彼の名は?」

「名前は有馬さんです」

「有馬……」

「鷹郷さんに会うために研究所に来たと言ってました」

「私に会いに研究所まで? 普通人の彼がわざわざ?」

「そうです。あの……知り合いでは?」

「……」

「鷹郷さん?」

「すまん、今は思い出せない。が……過去にどこかで会っているのかもしれないな」

「……はい」

「ところで、彼は何か武芸を極めてでもいるのか?」

「すみません。それも分からないです。ただ、これまでの動きから考えると複数を身につけているかと」

「そう、か」

「……」

 2人とも俺の話ばかりしてないで、しっかり回復に努めてくれよ。
 こっからは俺の出番とはいえ、未知の異形相手に戦うんだ。何が起こるか分からないからな。

 で、邪狼狗とかいう大層な名を持つこいつ。

『◇&#!!』

 俺から逃れようと必死に暴れている。
 もちろん、逃す気はない。

『◎:%!!』

 さてと、武上少年が受けた激痛、古野白さんの苦痛に対するお返しをしないとな。

 しかし、こいつ……。

『*¥●&%!』

 さっきから何言ってるんだ?

 自分が優勢な時はそれなりに喋れてたのに、今はさっぱりだぞ。
 動揺すると言語化できなくなるのかよ。
 何となく言いたいことは理解できるが……。

『△@%!!』

 まっ、どちらにしても、やることは一緒か。

『△¥;◎!!』

『$@□!!』

 そう興奮しなくても、すぐに相手してやる。
 まずは、もう少し手に力を加えて。

 メリッ、メリッ!

『◎%&$!!』

 メリッ、メリッ、メリッ……ボキッ!

『ギャアァァァ!?』

 結構、効くだろ。

『*@△……』

 次はこれなんかどうだ。
 手を放し、自由になった邪狼狗の腹に向けて。

 ドゴン!

 おまえが武上少年に放ったのと同様の蹴りだぞ。
 威力は違うがな。

『△&%●ァァァ!!』

 悲鳴を上げ、吹っ飛んでいく邪狼狗。
 地面を数メートル転がり続け……。
 止まったその場で倒れ伏している。

『ゥゥゥ……』

 こいつ、大異形という割には動きが良くないな。
 古野白さんの炎弾で大きなダメージを受けているとはいえ、こんなものなのか?
 封印が解けたばかりで、本来の力を発揮できないとでも?

『下郎がぁ ¥△@%◇!』

 それならそれでいい。
 こっちは、さっさと終わらせるだけだ。

 満身創痍の邪狼狗に接近し、決着の一撃を。

 スッ!

 うん?
 もう一撃……。

 スッ!

 なんだ?
 手応えがないぞ?

 さらに攻撃を加えても、やはり……。

 邪狼狗をとらえたはずの拳撃も蹴撃も、まったくダメージを与えているようには見えない。

『フフ、ハハハ』

 何が起こっている?



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