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第10章 位相編

異形 5

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「捕えました、成功です!」

「ああ、よくやった」

「グギギギィ!」

 穴に落ちた巨大蜘蛛は動けない。
 よーし、再拘束成功だ。

「今度は倒しきるぞ。古野白、いけるか?」

「はい、今準備が完了しました」

「武上は?」

「オレもいけますよ」

 こっちも糸の除去が終わったところ。
 態勢は整っている。

「次こそ、あの野郎を倒しましょう」

「ああ、倒すぞ! 私に続け、ウインド!」

 これまで通り、初撃は鷹郷さんの烈風。

「ギギィ!」

 風が収まったところに、古野白さんが。

「……炎弾!!」

 前回より一回り大きな炎の弾が中空に出現。
 高速で飛来するそれを、拘束された蜘蛛が回避できるわけもなく。

「ギャァァ!!」

 2度目の炎弾をまともに喰らった。

「ウインド!」

 そこにさらなる風異能。

「ウインド!」

 ん?
 そうか。
 炎の勢いを強めるために風を使ってるんだな。

 とはいえ、炎弾にウインドを合わせるなんて相当難しいはず。

「ウインド!」

「ウインド!」

 巧い。
 巨大蜘蛛を覆う炎の周りに吹き付けた風が、火に勢いを与え巻き上げていく。

「グギャァァ!!」

 さすが、鷹郷さん。
 素晴らしい匙加減だ。

「ウインド!」

「ギャアァァァ!!」

 風で威力を増した獄炎を受け、悶え苦しむ巨大蜘蛛。
 ここまでは完璧だ。
 が、異能の炎は消火が早い。
 その上、炎の後は根茎の大半が焼き崩れてしまうだろう。
 となると、拘束を続けるのは困難。

「ギギギィィ……」

 炎弾発動から僅か数秒。
 巨大蜘蛛を捕らえていた業火が下火になってきた。

「武上!」

「了解! こいつを受けてみろぉ!」

 まだ微かに炎が残る中、武上少年が凄まじい勢いで突っ込んでいく。
 古野白さんの炎弾同様、さっきより身体強化レベルが上がっているぞ。

「おおぉぉぉ!」

 勢いを落とすことなく巨大蜘蛛に接近。
 渾身の右拳を。

「だあぁぁぁ!!」

 ドッガーーン!!

 巨大蜘蛛の正中に叩き込んだ。

「グギャアァァ!!」

 メリッ……。

 メリ、メリッ……。

「ァァァァ……」

 バリーーーン!!!

 ひびが入ったガラスが弾け飛ぶように、化け物蜘蛛の巨体が砕け散った。

「どうだぁぁ」

 雄叫びを上げる武上少年の周囲に飛び散り、四散した蜘蛛の体。
 それらが地面に落ち、そして……。

 消失!?

 ひとつ残らず消え去ってしまった。

「……」
「……」
「……」

 これは、あいつが超常の異形だったから?
 だから、消失したのか?

「やったぜぇ!」

「鷹郷さん!」
「消えました!」
「あいつを倒したんですよ!」

「……よくやってくれた」

 数秒前までの張りつめていた空気が消え、弛緩した空気が流れ込んでくる。
 もちろん、皆の顔には安堵の色も。

「……」

 異形討伐は無事終了。
 結局、俺の出番はなかったと。
 ほっとすると同時に、ちょっとした思いが軽く爪を立ててくる。

 そこに。

「楓季ちゃん、大志君、大丈夫?」

「功己さん!」

 戦闘終了を確認した里村少年と幸奈が駆け寄ってきた。



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