30年待たされた異世界転移

明之 想

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第10章 位相編

約束

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「あの……」

 なぜか俺と幸奈から距離を取って話し込んでいた15歳の異能者たち。
 彼らがまたこちらに近づいてきた。

「有馬さんでしたよね?」

「ええ」

「異能を使ってないのにあの動き、普通ではありませんよね」

「……」

「あなた、いったい何者なんです?」

 姿は少女にしか見えないが、口調は俺の知る古野白さんと変わりがない。位相世界にいる15歳でも、彼女は彼女なんだな。

「そうだ、何者だ!? 異能を使わずにあれはおかしいだろ」

 武上も彼そのもの。

「異能を使わず大志君を圧倒して圧勝する実力に、身分証明用のカード。どう考えても、お兄さんは普通じゃないですよ」

「おい里村、圧倒じゃねえだろ」 

「あっ、そうだった。惜敗で辛勝だったね」

 そう言いながら俺に片眼を瞑って頷いてくる。

「……」

 こいつも異能者である事実を除けば、やはり俺の知る里村に近いような?

「おう、勘違いすんなよ。そこが大事なんだからよ」

「分かってるって」

「いいか、惜敗だぞ!」

「しつこいなぁ、もう」

 しかし、ここでも武上だけがあれなんだな。

「はぁ~」

「ん? 古野白、ため息なんてついてどうした?」

「あなたたちが無駄話しているからでしょ」

「それは、里村が下らねえこと」

「武上君!」

「……ちっ」

「……ごめん、楓季ちゃん」

 この3人の力関係もほぼ同じ。
 俺の世界とは異なる位相世界なのに、個人の性格も関係性もよく似ている。
 それが位相というものなのか?

「謝罪はいいから、話を進めるわよ」

「うん」
「おう」

「有馬さん、あなたは何者なんです?」

「……異能を持たない一般人だが」

「普通人の中にも達人はいますので、その答えを頭から否定はできません。ただ、20歳で達人級というのは……」

 悪い。
 俺の場合、外見と実年齢は一致しないんだ。

「まさか、異能以外の特殊な能力でも持っていると?」

「……」

「武上君との試合で使ったんですか?」

「……いや」

 確かに色々と能力は持っている。
 が、この訓練室では何も使っていない。

「今、変な間がありましたが?」

「そうそう、ちょっと怪しかったなぁ」

「……」

「有馬さん、嘘はつかず真実だけをお願いします」

「だから、特殊な能力なんて使っていない」

「「……」」

「ここで話せない詳しい事情は、鷹郷さんに会ったら話すつもりだ」

「楓季ちゃん?」

「……怪しい人物を鷹郷さんに紹介なんてできないわ」

 それは困る。
 というか、約束が違うぞ。

「武上君、約束したよな?」

「……」

「大志君?」

「ありゃ、ちっと口が滑ったというか……」

「模擬戦で負けたら都合をつけると、はっきり口にしたよな?」

「……」
「……」
「……」

「約束を守ってもらえるかな?」

「……分かった、会わせてやるよ」

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