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第9章 推理編
反撃
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<古野白楓季視点>
吾妻の背後から放った炎の連続攻撃。
1撃目の炎弾は避けられた。
2撃目も避けられた。
3撃目……やっと当たった。
ただし、吾妻の脇をかすめただけ。
でも、ここからよ。
炎舞があなたのすぐ後ろに迫っているのだから。
敵を包み込む炎のカーテン、炎舞。
武上君と拳を交えている状態で回避なんかできるはずない。
「えっ!?」
嘘っ?
交戦中だった吾妻が躊躇なく左に跳んだ。
しかも、炎舞の効果範囲を超えるほどの跳躍を!
これでは逃げられてしまう。
「させるかぁ!」
あっ、上手い!
敵の跳躍に僅かに遅れて跳んだ武上君が吾妻に追いつき、その腕を掴んでいる。
そのまま腕をひき炎の前に戻……せない!?
「ヤロウ!」
武上君の剛力でも引き戻すことができないの?
けど、吾妻をその場に留めている。
そこなら炎舞を少しずらせば。
「くっ、これで、どう?」
「!?」
捕らえたぁ!
「うぅ……」
炎舞が吾妻の半身を包み込んでいく。
やっと効果的な一撃が吾妻に。
「おっと」
武上君は吾妻の腕を離し後退。
余波からも逃れるべく、大きく距離を取っている。
「古野白!」
「ええ」
炎に包まれた吾妻のかなり前方に武上君、後方には私。
完璧な挟撃態勢だ。
「……」
想定以上に理想的な展開になっている。
このまま押せば、倒すこともできるはず。
「もう1発撃つわよ?」
まさか、ここで手出し無用なんて言わないでしょうね?
「……ああ、続けてくれ」
よかった。
さすがに、状況は分かってるみたい。
「了解」
吾妻を包む炎舞の効果時間は10秒程度。
派手な見た目に反して威力は控えめなため、能力の高い異能者を一撃で仕留めきる力はない。だから、ここからは攻撃力の高いこれを。
「炎弾!」
いまだ蠢く赤色のカーテンに向け発射。
着弾!
「ぐうっ!!」
声を上げてのけぞる吾妻。
「こいつぁ、効いてるぜ」
間違いないわ。
「よーし、もう一撃だ」
ええ、炎舞が効いている間に。
「炎弾!」
と同時に炎舞が消えてしまった。
「っ!」
炎から解放された吾妻。
一瞬で10メートル以上の距離を!
当然、炎弾は地面に落ちるのみ。
「……」
「古野白ぉ、こっからだぞ」
「……分かってる」
逃げられたら追えばいい。
あの異能を使われる前に、また戦闘状態に持ち込めばいい。
さっきと違い、傷を負っている吾妻相手なら、そう難しくはないはず。
ただ……。
さっきの吾妻の表情。
炎から解放された吾妻が私にくれた一瞥。
苦痛の中にも確かに残っていた。
余裕が……。
「おい、逃げんじゃねえ」
「……」
炎弾を受けた後。
吾妻は距離を取るばかり。
武上君と手を合わせようともしない。
近接戦闘に持ち込もうとする武上君も炎を使いたい私も、上手く間合いに入れない。
どうして、こんなに動ける?
傷の影響はないの?
吾妻の背後から放った炎の連続攻撃。
1撃目の炎弾は避けられた。
2撃目も避けられた。
3撃目……やっと当たった。
ただし、吾妻の脇をかすめただけ。
でも、ここからよ。
炎舞があなたのすぐ後ろに迫っているのだから。
敵を包み込む炎のカーテン、炎舞。
武上君と拳を交えている状態で回避なんかできるはずない。
「えっ!?」
嘘っ?
交戦中だった吾妻が躊躇なく左に跳んだ。
しかも、炎舞の効果範囲を超えるほどの跳躍を!
これでは逃げられてしまう。
「させるかぁ!」
あっ、上手い!
敵の跳躍に僅かに遅れて跳んだ武上君が吾妻に追いつき、その腕を掴んでいる。
そのまま腕をひき炎の前に戻……せない!?
「ヤロウ!」
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けど、吾妻をその場に留めている。
そこなら炎舞を少しずらせば。
「くっ、これで、どう?」
「!?」
捕らえたぁ!
「うぅ……」
炎舞が吾妻の半身を包み込んでいく。
やっと効果的な一撃が吾妻に。
「おっと」
武上君は吾妻の腕を離し後退。
余波からも逃れるべく、大きく距離を取っている。
「古野白!」
「ええ」
炎に包まれた吾妻のかなり前方に武上君、後方には私。
完璧な挟撃態勢だ。
「……」
想定以上に理想的な展開になっている。
このまま押せば、倒すこともできるはず。
「もう1発撃つわよ?」
まさか、ここで手出し無用なんて言わないでしょうね?
「……ああ、続けてくれ」
よかった。
さすがに、状況は分かってるみたい。
「了解」
吾妻を包む炎舞の効果時間は10秒程度。
派手な見た目に反して威力は控えめなため、能力の高い異能者を一撃で仕留めきる力はない。だから、ここからは攻撃力の高いこれを。
「炎弾!」
いまだ蠢く赤色のカーテンに向け発射。
着弾!
「ぐうっ!!」
声を上げてのけぞる吾妻。
「こいつぁ、効いてるぜ」
間違いないわ。
「よーし、もう一撃だ」
ええ、炎舞が効いている間に。
「炎弾!」
と同時に炎舞が消えてしまった。
「っ!」
炎から解放された吾妻。
一瞬で10メートル以上の距離を!
当然、炎弾は地面に落ちるのみ。
「……」
「古野白ぉ、こっからだぞ」
「……分かってる」
逃げられたら追えばいい。
あの異能を使われる前に、また戦闘状態に持ち込めばいい。
さっきと違い、傷を負っている吾妻相手なら、そう難しくはないはず。
ただ……。
さっきの吾妻の表情。
炎から解放された吾妻が私にくれた一瞥。
苦痛の中にも確かに残っていた。
余裕が……。
「おい、逃げんじゃねえ」
「……」
炎弾を受けた後。
吾妻は距離を取るばかり。
武上君と手を合わせようともしない。
近接戦闘に持ち込もうとする武上君も炎を使いたい私も、上手く間合いに入れない。
どうして、こんなに動ける?
傷の影響はないの?
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