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第9章 推理編
再構築
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<和見幸奈視点>
「頑張るから」
「えっ? 頑張るって、何を?」
「敵と戦うわ!」
「やめてくれよ。危ないだけだって」
「大丈夫。姉を信じなさい」
「それは無理な相談だね」
良かった。
いつもの武志に戻ってる。
「姉さんは、結界の中で大人しくしてればいいんだからさ」
「ありがと」
「じゃあ、僕は結界の準備をするから」
「うん、お願い」
発動までに数分はかかるらしい結界。
そのために武志が集中し始めた。
「……」
結界さえあれば、古野白さんと武上君を守ることができる。
敵が現れても、しばらくは何とかなる。
でも、その後は?
この空間を脱出するためには敵を倒さないといけないのよ。
あの異能者を倒すには、どうすれば?
やっぱり、わたしの異能で敵を止めるしか……。
「よし!」
武志の結界が完成したみたい。
これで、ひとまずは安心できそう。
ひとつ安堵の息を吐いたわたしの目の前で。
「なっ! もう?」
空間が僅かに歪んでいる。
「姉さん!」
「ええ、来たわね」
「ああ、あいつらだ」
敵が再び現れた。
けど。
「3人だけ?」
さっきより2人減っている。
壬生兄がいない。
今回現れた異能者はさっきの2人と、あと1人は……ベースボールキャップを被った少年。
彼、セレスさんの記憶の中に存在している少年だ。
「壬生の弟?」
壬生家の者でありながら、こちらに害意を向けていない奇妙な少年。
今もまた穏やかに微笑んでいる。
「やつら、また結界を張ってますよ」
「破壊すればいい」
「まあ、吾妻さんならすぐですよね」
「……」
「では、お願いします」
「ああ」
古野白さんと武上君を倒した異能者が近づいてくる。
さっきと変わらぬ無表情でゆっくりと。
そして……。
攻撃が始まった。
*************************
<古野白楓季視点>
ドン!
ドゴン!
「……」
ガン!
ドガン!
聞こえる?
「……」
まだ微かながらも、確かに!
それに、見える。視界は歪んでいるけど見える。
手足の感触も少しずつ。
「……武上君?」
「古野白か?」
良かった。
無事なのね。
「聞こえんだな?」
「ええ、そっちは?」
「聞こえんぞ。視力もな」
武上君への異能の効力も切れてきた。
やっと戻ってきたんだ。
「怪我はないか、古野白」
「……大丈夫よ。そっちはどう?」
「問題ねえな」
私にも武上君にも大きな傷がない?
本当に?
敵は、倒れている私たちに何もしなかったの?
「嘗められたもんだぜ」
「……」
吾妻は、私たちのことなんて眼中にない。
自分の異能に絶対の自信があると。
「古野白さん、武上君、見えるんですか?」
「……ええ。まだ少し霞んでいるけれど、これなら何とかなりそうよ」
「耳も聞こえるんですね!」
「そう、ね」
「よかったぁ!」
「……」
「ほんとに、よかったです」
この感じ?
やっぱり、あなただったのね。
私を救ってくれたのは。
「幸奈さん、心配かけてごめんなさい」
「そんなこと……」
「ありがとう。感謝しているわ」
あなたがいなければ、どうなっていたことか。
本当に感謝している。
でも……。
あなたたちに守られるなんて、護衛失格ね。
武上君も同じ思いでしょ。
「武志、助かったぜ。で、今の状況は?」
「見ての通り、結界で防御中ですよ」
「しばらくは保つんだな?」
「余裕です」
「そうか。なら、ここまで何があったか教えてくれ」
「分かりました。ふたりが倒れたあと………………」
「……」
「……」
「頑張るから」
「えっ? 頑張るって、何を?」
「敵と戦うわ!」
「やめてくれよ。危ないだけだって」
「大丈夫。姉を信じなさい」
「それは無理な相談だね」
良かった。
いつもの武志に戻ってる。
「姉さんは、結界の中で大人しくしてればいいんだからさ」
「ありがと」
「じゃあ、僕は結界の準備をするから」
「うん、お願い」
発動までに数分はかかるらしい結界。
そのために武志が集中し始めた。
「……」
結界さえあれば、古野白さんと武上君を守ることができる。
敵が現れても、しばらくは何とかなる。
でも、その後は?
この空間を脱出するためには敵を倒さないといけないのよ。
あの異能者を倒すには、どうすれば?
やっぱり、わたしの異能で敵を止めるしか……。
「よし!」
武志の結界が完成したみたい。
これで、ひとまずは安心できそう。
ひとつ安堵の息を吐いたわたしの目の前で。
「なっ! もう?」
空間が僅かに歪んでいる。
「姉さん!」
「ええ、来たわね」
「ああ、あいつらだ」
敵が再び現れた。
けど。
「3人だけ?」
さっきより2人減っている。
壬生兄がいない。
今回現れた異能者はさっきの2人と、あと1人は……ベースボールキャップを被った少年。
彼、セレスさんの記憶の中に存在している少年だ。
「壬生の弟?」
壬生家の者でありながら、こちらに害意を向けていない奇妙な少年。
今もまた穏やかに微笑んでいる。
「やつら、また結界を張ってますよ」
「破壊すればいい」
「まあ、吾妻さんならすぐですよね」
「……」
「では、お願いします」
「ああ」
古野白さんと武上君を倒した異能者が近づいてくる。
さっきと変わらぬ無表情でゆっくりと。
そして……。
攻撃が始まった。
*************************
<古野白楓季視点>
ドン!
ドゴン!
「……」
ガン!
ドガン!
聞こえる?
「……」
まだ微かながらも、確かに!
それに、見える。視界は歪んでいるけど見える。
手足の感触も少しずつ。
「……武上君?」
「古野白か?」
良かった。
無事なのね。
「聞こえんだな?」
「ええ、そっちは?」
「聞こえんぞ。視力もな」
武上君への異能の効力も切れてきた。
やっと戻ってきたんだ。
「怪我はないか、古野白」
「……大丈夫よ。そっちはどう?」
「問題ねえな」
私にも武上君にも大きな傷がない?
本当に?
敵は、倒れている私たちに何もしなかったの?
「嘗められたもんだぜ」
「……」
吾妻は、私たちのことなんて眼中にない。
自分の異能に絶対の自信があると。
「古野白さん、武上君、見えるんですか?」
「……ええ。まだ少し霞んでいるけれど、これなら何とかなりそうよ」
「耳も聞こえるんですね!」
「そう、ね」
「よかったぁ!」
「……」
「ほんとに、よかったです」
この感じ?
やっぱり、あなただったのね。
私を救ってくれたのは。
「幸奈さん、心配かけてごめんなさい」
「そんなこと……」
「ありがとう。感謝しているわ」
あなたがいなければ、どうなっていたことか。
本当に感謝している。
でも……。
あなたたちに守られるなんて、護衛失格ね。
武上君も同じ思いでしょ。
「武志、助かったぜ。で、今の状況は?」
「見ての通り、結界で防御中ですよ」
「しばらくは保つんだな?」
「余裕です」
「そうか。なら、ここまで何があったか教えてくれ」
「分かりました。ふたりが倒れたあと………………」
「……」
「……」
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