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第9章 推理編
攻防 8
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<古野白楓季視点>
バァァン!!
小気味よい快音が響き、吾妻の体が宙に浮き上がる。
とともに、武上君の右拳が自由に。
ということは、決まったのね。
武上君の左拳が勝ったのね。
「……」
「……」
地に下りた吾妻が数歩後退。
ただし、痛がる様子は見えない。
そんな相手に対して武上君も足を止めたまま。
武上君の左拳が脇腹に決まったんじゃないの?
「想像以上だな」
「そっちこそ、なんちゅう反応だ」
武上君の左拳が吾妻の脇腹を直撃。
私の目にはそう映ったのに……。
「やるじゃねえか」
ギリギリのところで、右手で防いだ?
体が浮いたのも、自分で跳んだだけ?
あの体勢から?
ほんとに?
「……」
それでも、吾妻の脇腹を打ち抜いたのは事実よ。
仮に右手の上からの打撃だったとしても、ダメージは与えているはず。
何と言っても、武上君の右拳が自由になっているのだから。
「こういうの、悪くないぜ」
「ふっ、悪くない、か」
「ああ、面白え」
武上君……。
息が詰まるような私の思いに反して、武上君の顔からは笑みが消えていない。
「しっかし、あんたみたいな強化者がいたなんてなぁ」
「異能者など、掃いて捨てるほど存在するが?」
「そこらの奴らとは違うだろ。強化系で、ここまで体を使いこなしてんだ。しかも、その細い体でよ」
「……」
喜色を浮かべたままの武上君とは対照的に、吾妻の表情は能面のよう。
戦闘中とは思えない。
脇腹に打撃を受けたとは思えない。
それほどに凪いでいる。
攻防の最中、わずかに見せた苦悶の表情が錯覚だったのではと感じてしまうほど。
まさか?
まったく痛んでない?
「……」
いいえ、そんなわけないわ。
痛みを隠しているだけ。
そうよ。
そうに違いない。
「壬生側に付いてるのが残念だぜ」
「……」
「ん? 違うか? 味方だったら、遠慮なく戦えねえもんなぁ」
「そこまでして……」
「ん?」
「戦いたいのか?」
「答えるまでもねえだろ。ってことで、2回戦開始だ」
開戦の言葉とともに飛び出す武上君。
今回も先手はこちら。
「……」
対する吾妻は棒立ちじゃない。
さっきまでと違い、防御の体勢で迎え撃とうとしている。
「だぁ!」
右拳の一撃。
続けて、左拳の正拳。
強烈でありながら流れるように放たれる連撃の拳。
受ける吾妻は、前回と異なる対応。
腕と体を巧みに使い、連撃を躱しきった。
「りゃあぁ!!」
そこに、さらなる追撃。
右!
左!
左!
右!
目にも留まらぬ速さで、武上君の拳が繰り出され続ける。
けど、決まらない。
吾妻が見事な動きで、避け、躱し、いなしていく。
「おらぁぁ!!」
「……」
一呼吸でどれだけの攻防があったのだろう?
良く分からない。
その速さと激しさに、最後まで目が付いていけなかったから。
ただひとつ明らかなのは、武上君の拳が当たっていないということ。
バァァン!!
小気味よい快音が響き、吾妻の体が宙に浮き上がる。
とともに、武上君の右拳が自由に。
ということは、決まったのね。
武上君の左拳が勝ったのね。
「……」
「……」
地に下りた吾妻が数歩後退。
ただし、痛がる様子は見えない。
そんな相手に対して武上君も足を止めたまま。
武上君の左拳が脇腹に決まったんじゃないの?
「想像以上だな」
「そっちこそ、なんちゅう反応だ」
武上君の左拳が吾妻の脇腹を直撃。
私の目にはそう映ったのに……。
「やるじゃねえか」
ギリギリのところで、右手で防いだ?
体が浮いたのも、自分で跳んだだけ?
あの体勢から?
ほんとに?
「……」
それでも、吾妻の脇腹を打ち抜いたのは事実よ。
仮に右手の上からの打撃だったとしても、ダメージは与えているはず。
何と言っても、武上君の右拳が自由になっているのだから。
「こういうの、悪くないぜ」
「ふっ、悪くない、か」
「ああ、面白え」
武上君……。
息が詰まるような私の思いに反して、武上君の顔からは笑みが消えていない。
「しっかし、あんたみたいな強化者がいたなんてなぁ」
「異能者など、掃いて捨てるほど存在するが?」
「そこらの奴らとは違うだろ。強化系で、ここまで体を使いこなしてんだ。しかも、その細い体でよ」
「……」
喜色を浮かべたままの武上君とは対照的に、吾妻の表情は能面のよう。
戦闘中とは思えない。
脇腹に打撃を受けたとは思えない。
それほどに凪いでいる。
攻防の最中、わずかに見せた苦悶の表情が錯覚だったのではと感じてしまうほど。
まさか?
まったく痛んでない?
「……」
いいえ、そんなわけないわ。
痛みを隠しているだけ。
そうよ。
そうに違いない。
「壬生側に付いてるのが残念だぜ」
「……」
「ん? 違うか? 味方だったら、遠慮なく戦えねえもんなぁ」
「そこまでして……」
「ん?」
「戦いたいのか?」
「答えるまでもねえだろ。ってことで、2回戦開始だ」
開戦の言葉とともに飛び出す武上君。
今回も先手はこちら。
「……」
対する吾妻は棒立ちじゃない。
さっきまでと違い、防御の体勢で迎え撃とうとしている。
「だぁ!」
右拳の一撃。
続けて、左拳の正拳。
強烈でありながら流れるように放たれる連撃の拳。
受ける吾妻は、前回と異なる対応。
腕と体を巧みに使い、連撃を躱しきった。
「りゃあぁ!!」
そこに、さらなる追撃。
右!
左!
左!
右!
目にも留まらぬ速さで、武上君の拳が繰り出され続ける。
けど、決まらない。
吾妻が見事な動きで、避け、躱し、いなしていく。
「おらぁぁ!!」
「……」
一呼吸でどれだけの攻防があったのだろう?
良く分からない。
その速さと激しさに、最後まで目が付いていけなかったから。
ただひとつ明らかなのは、武上君の拳が当たっていないということ。
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