941 / 1,194
第9章 推理編
和見屋敷 2
しおりを挟む
いなかった。
1階に続き2階にも。
やはり、この屋敷に残ってはいないのだろうか?
外に連れ出されたと考えた方が……。
ただ、今も感じる奇妙な不快感。
この感覚が和見屋敷の異常さを伝え続けてくる。
敷地内には何かがあると、俺の勘が告げてやまない。
「……」
見落としがあるのかもしれないな。
よし。
もう一度、調べてみよう。
再開した1階、2階の捜索。
より念入りに調べたのだが、無駄だった。
誰の姿も見ることができなかった。
あやしい箇所も皆無……。
勘が外れたということか。
「……」
となると、連れ出された可能性が非常に高い。
すぐにでも外に出て幸奈たちを探すべき。
ただ、どこを探せばいいのか?
「……」
壬生の家しかないな。
よし、所在地を調べて、乗り込んでやる。
そんな思いで玄関に向かっている途中……。
ん?
何だ?
廊下の奥。
その片隅から、あれが濃密に漂ってくるぞ。
これまで和見家の屋敷内で感じたものとは比べ物にならない。
背筋と首筋に感じるザラザラとした不快さ。
ぞっとするような感覚。
「……」
不快極まりないが、その感覚を頼りに周辺を調べてみると……。
「隠し通路。いや、隠し階段か」
地下へ通じる階段が現れた。
予想通り、階下からはあの空気が這い上がって来ている。
これ以上ないくらい不気味だ。
それでも、ここで退き返すという手はない。
地下に下りるしかない。
「……」
気配を探りながら慎重に階段を一段ずつ踏みしめ、地階に到着。
目の前には、頑丈そうな扉が行方を遮っている。
ここに来てすら人の気配を感じることはない。
ただあの空気だけが濃密に……。
部屋の中には何かが存在する。
そう確信させるほどだ。
「!?」
この扉、鍵がかかっていない。
立派で頑丈な扉にこの瘴気。
間違いなく施錠されていると思ったのだが……。
まあ、いいだろう。
何が待っていようと突入するのみだから。
室内に突入後、そのまま戦闘を開始できるように準備を整え。
念のため魔力も纏い。
扉を開け放つ。
体を低くして、転がるように室内に突入!
すぐさま防御と攻撃の体勢に移行!
「……」
「……」
「……」
嘘だろ。
誰もいない。
何もない。
「……」
もちろん、人がいない可能性は想定していた。
ただ、不快感の原因となる物質まで存在しないとは。
考えられない。
本当に……。
なら、この不快感は?
濃密な瘴気の原因は?
何も無いというのか?
「……」
不快感、嫌悪感に加えて生まれてくる大きな疑念。
そして……。
尋常じゃない空間にひとり存在しているという不安感。
「……」
和見の屋敷に残されたのは自分だけ。
この世界にたったひとり。
「……」
寂々たる焦燥。
足下が揺れ、崩れていくような感覚。
そんなものさえ生まれてしまう。
「……」
気分が悪い。
1階に続き2階にも。
やはり、この屋敷に残ってはいないのだろうか?
外に連れ出されたと考えた方が……。
ただ、今も感じる奇妙な不快感。
この感覚が和見屋敷の異常さを伝え続けてくる。
敷地内には何かがあると、俺の勘が告げてやまない。
「……」
見落としがあるのかもしれないな。
よし。
もう一度、調べてみよう。
再開した1階、2階の捜索。
より念入りに調べたのだが、無駄だった。
誰の姿も見ることができなかった。
あやしい箇所も皆無……。
勘が外れたということか。
「……」
となると、連れ出された可能性が非常に高い。
すぐにでも外に出て幸奈たちを探すべき。
ただ、どこを探せばいいのか?
「……」
壬生の家しかないな。
よし、所在地を調べて、乗り込んでやる。
そんな思いで玄関に向かっている途中……。
ん?
何だ?
廊下の奥。
その片隅から、あれが濃密に漂ってくるぞ。
これまで和見家の屋敷内で感じたものとは比べ物にならない。
背筋と首筋に感じるザラザラとした不快さ。
ぞっとするような感覚。
「……」
不快極まりないが、その感覚を頼りに周辺を調べてみると……。
「隠し通路。いや、隠し階段か」
地下へ通じる階段が現れた。
予想通り、階下からはあの空気が這い上がって来ている。
これ以上ないくらい不気味だ。
それでも、ここで退き返すという手はない。
地下に下りるしかない。
「……」
気配を探りながら慎重に階段を一段ずつ踏みしめ、地階に到着。
目の前には、頑丈そうな扉が行方を遮っている。
ここに来てすら人の気配を感じることはない。
ただあの空気だけが濃密に……。
部屋の中には何かが存在する。
そう確信させるほどだ。
「!?」
この扉、鍵がかかっていない。
立派で頑丈な扉にこの瘴気。
間違いなく施錠されていると思ったのだが……。
まあ、いいだろう。
何が待っていようと突入するのみだから。
室内に突入後、そのまま戦闘を開始できるように準備を整え。
念のため魔力も纏い。
扉を開け放つ。
体を低くして、転がるように室内に突入!
すぐさま防御と攻撃の体勢に移行!
「……」
「……」
「……」
嘘だろ。
誰もいない。
何もない。
「……」
もちろん、人がいない可能性は想定していた。
ただ、不快感の原因となる物質まで存在しないとは。
考えられない。
本当に……。
なら、この不快感は?
濃密な瘴気の原因は?
何も無いというのか?
「……」
不快感、嫌悪感に加えて生まれてくる大きな疑念。
そして……。
尋常じゃない空間にひとり存在しているという不安感。
「……」
和見の屋敷に残されたのは自分だけ。
この世界にたったひとり。
「……」
寂々たる焦燥。
足下が揺れ、崩れていくような感覚。
そんなものさえ生まれてしまう。
「……」
気分が悪い。
20
お気に入りに追加
540
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる