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第9章 推理編

治療 14

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「ふたり、とも……もう……ゴホッ、ゴホッ!」

 激しい咳き込みに虚ろな瞳。
 ディアナのこの症状。今の状況。
 どうしたって、これまでの悪夢を思い出してしまう。

「もう……いい」

「よくない!」

「ユーフィ……ゴホッ、ゴホッ……」

「よくないから!」

「私は……ゴボゥ!」

 大量の喀血!?

「ディアナ!」

 まずい!

「コーキ、セレスさんを起こそう。で、祝福を」

 セレス様の身体が心配だが、それしか手段がないなら。

「……ヴァーン、頼む」

「ああ」

「はあ、はあ……駄目、だ……セレス様に、無理は……ゴホッ、ゴホゥ!!」

「ディアナ、大人しくして!」

 この状態でも動こうとするディアナを止めるユーフィリア。

「セレスさん!」

「……」

「セレスさん!!」

「……」

 ヴァーンの呼びかけに反応は見られない。
 セレス様の意識が戻らない。

「起きてくれ、セレスさん!」

「……」

 ヴァーンの声に反応を見せないセレス様。
 神娘の力を使い過ぎた代償はここまで大きいのか?

「ゴホッ、ゴホッ、ゴホゥ!!!」

「ディアナ!」

「ユーフィ……ゴホッ……おわか、れ……」

「何言ってるの!」

「……セレスさま、おね……がい」

「駄目!」

「ディアナ、こんなところで死ぬんじゃねえ。おめえには違う死に場所があるだろ!」

 今回のディアナの凶行はヴァーンにとっては許せないはず。
 それでも、死なせたくない。許せないけど救いたい。
 そんな複雑な感情が巣くっているのだろう。

「生きて償え!」

「ゴホッ……すま、ない」

「謝んな!」

「ヴァーン……」

「だいたいなぁ、まだおめえには聞きたいことがあんだよ」

「なに、を?」

「……今回のこと、普段のディアナからは考えられねえだろ。何か裏があんじゃねえのか?」

「……ない。わたし、ひとり……ゴホゥ!」

「信じらんねえな」

 確かに、その言葉を完全には信じることはできない。
 ニレキリ毒を所持していたことで、遡行前の件についても彼女の嫌疑は深まっているとはいえ、解せないことが多すぎるから。

「おめえを助けて、あとでゆっくり聞いてやるからよ」

 だから、そう。
 まずは助けてからだ。

「ゴホッ、ゴホッ!!」

 ただ、今のディアナの容態は……。

「ゴホッ、ゴホッ、ゴホゥ!!」

 さっき見せていた改善の兆しが微塵もない。
 明らかに衰弱している。

 やはり、治癒魔法と魔法薬では解毒できないのか?
 なら、どうすれば……。

 と、その時。

「セレス様!」

「セレスさん?」

「ヴァーンさん、アル……」

 セレス様が意識を!

「……っ! ディアナは? シアは?」

「……」

「無事ですよね? まだ治療中ですよね? ヴァーンさん?」

「そうなんですけど……ディアナがまずい状況でして」

 その一言で跳び起きるセレス様。
 が、ふらついている。

「セレス様?」
「セレスティーヌ様!」

「うっ……平気です。それより、ディアナを」

 おぼつかない足取りでディアナの傍に歩み寄って来た。

「ゴホッ、ゴホゥ……はあ、はあ……」

「すぐ祝福を使うから」

「セレスさん、その身体じゃあ……」



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