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第9章 推理編

火事 3

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 煙が漂い始め、薄暗かった視界がさらに悪化している地下通路。
 それでも、これまで何度も通って来た道だ。走ることに支障はない。予定通り数秒で消火活動をしている場に到着した。

 ゴオォォォ!!

 激しい音を立て燃え盛る炎の先は見通せないものの、火元はやはり複数並ぶ地下牢
なんだろう。

「シア、ユーフィリア、魔力は大丈夫か?」

「ええ」
「問題ない」

「なら、水量を増やしてくれ」

「「了解」」

 目の前には魔法で水を放出中のシアとユーフィリア。水魔法が得意ではないヴァーンも2人に続いている。さらには、数人のワディン騎士とエンノアの民も。

「水入れは?」

「もう数杯しか残っていません」

「いいから、持って来い!」

「分かりました」

 魔法を使える者も使えない者も、自身の役割を全うしている。
 当然、俺も加勢するのみ。

「ウォーター!」

 彼らの後ろから大量の水を放射。猛烈な勢いで水が炎を包んでいく。

「コーキ?」
「先生?」
「「「コーキ殿?」」」

 皆がこちらに気づいたようだ。

「遅かったじゃねえか」

「ああ、ちょっとな。それで状況は?」

「見ての通り、火勢が強すぎる。けどまあ、続けるしかねえ」

 確かに、各人の放水を受けても火勢に衰えは見えない。

「で、ユーリアさんは?」

「ああ……」

 ヴァーンの目の先、炎の前で呆然と立ち尽くしていたフォルディさんが。

「コーキさん、助けてください!」

 俺を目にし、走り寄ってきた。

「ユーリアが奥に! 火の中にいるんです!」

「どうして彼女が?」

「捕虜2人に食事を運んでいたんです。そこで火が出てしまって」

「……」

 なら既に……。

「まだ生きてるはずです。ですから、コーキさん!」

 フォルディさんの言に反して、望みは薄いはず。
 それでも、こんな状態の友人を無視なんてできない。

「分かりました。火勢が少しおさまったら救出に向かいますので」

「あ、ありがとうございます!」

 可能性は低くともやれるだけのことはやろう。
 まずは感知でユーリアさんの確認だ。

 放水状態を保ちながら感知の網を広げると……。

 炎に包まれた通路の先に倒れている人物を1人発見。
 ユーリアさんだ。

 しかし、もう……。
 いや、反応があるぞ。
 しかも、弱ってもいない。生きている!

 ありがたい誤算だ。
 けど、どうして?

「……」

 何かがおかしい。
 突然の惨事に焦っていたのか、ここまで気づけなかったけれど、少し冷静になってみると……。

 ユーリアさんに加え、この炎も鎮火状況も不可解な点が多すぎる。

 ん?

 2つの気配が炎の中を進んでくる?
 炎熱をものともせず?

 その気配がこちらに。
 炎の外に出て来た……はずなのに。
 姿が見えない??

 感知間違いか?

「……」

 いや、違う。
 今まさに俺の横を通り過ぎようとしている気配、確かに存在している。

 ということは……。

 そうか!



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