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第9章 推理編
護衛
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遡行後の4時間。さらに続いた模擬試合。
その全てでセレス様を守りきることができた。
惨劇を回避することができた。
とはいえ、これは最低限の結果を得ただけ。
俺の仕事はまだ終わっていない。
犯人確保どころか、特定すらできていないのだから。
はぁぁ……。
最大ともいえる好機を逃してしまった。
解決は遠いな。
「……」
これからは、いつ何時誰が襲ってくるか分からない。
手掛かりも皆無。
さらに、因果の収束で偶然が重なる可能性も高い。
この状況で時間遡行も使えないとは……。
まいった。
本当に厄介な状況だ。
こうなるともう。
僅かな時間でもセレス様のもとを離れない方がいいだろう。
昼も夜も、ずっと傍で護り続けるべき。
けど、そんなこと可能なのか?
貴族女性の傍に絶えず控えるなんてことが?
女性の護衛騎士もいるのに?
「……」
もうやり直しはできないんだ。何とかするしかない。
じゃないと、護りきれない可能性も……。
正直、不安ばかりが募ってくる。
これまで何度も失敗したのだから当然、か。
だったら、いっそセレス様を連れて逃げるのは?
魔落や、あるいは犯人から遠く離れれば……。
「本当に大丈夫ですか?」
「……」
もう3度目のこの問い掛け。
今の俺は相当酷い顔をしているんだろう。
「ええ、問題ありませんよ」
その上、同じ返答をするだけ。
情けない。
「コーキさん……」
「今後の護衛について考えていただけですので」
「ありがとうございます」
深く頭を下げてくれるセレス様。
「今日もありがとうございました」
「……護衛の仕事をしただけですよ」
エレナさんの甘味。
ユーフィリアのアイスアロー。
メルビンさんとルボルグ隊長の剣。
対処自体は簡単なものだった。
「それで、その、今夜は……私と同じ寝室で?」
「ええ、ずっと護衛を続けます」
いつ誰が襲ってくるか分からない。
毒なのか他の手段なのかも分からない。
もちろん、偶然も危険だ。
なら、傍で護るしかない。
「……」
こうなってしまったのは全て俺の不手際ゆえ。
時間遡行によるメリットを活かせず好機もものにできなかったから。
「同じ寝室……」
しかし、ここまで上手くいかないとは正直思っていなかった。
犯人が一枚上ということか?
あるいは、これまでの俺の警戒が過剰だった?
だから、犯人が犯行を中止したと?
いや、そうとも限らないな。
エレナさん、ユーフィリア、メルビンさん、ルボルグ隊長の行為が偶然ではなく、犯行の一部だった可能性もあるのだから。
「……」
一連の動きに皆の様子など、腑に落ちない点は多い。
考えれば考えるほど、全てが怪しく見えてしまう。
「コーキさん……あの……一緒に眠るのですか?」
「……そのつもりです」
「そ、そうなのですね」
その全てでセレス様を守りきることができた。
惨劇を回避することができた。
とはいえ、これは最低限の結果を得ただけ。
俺の仕事はまだ終わっていない。
犯人確保どころか、特定すらできていないのだから。
はぁぁ……。
最大ともいえる好機を逃してしまった。
解決は遠いな。
「……」
これからは、いつ何時誰が襲ってくるか分からない。
手掛かりも皆無。
さらに、因果の収束で偶然が重なる可能性も高い。
この状況で時間遡行も使えないとは……。
まいった。
本当に厄介な状況だ。
こうなるともう。
僅かな時間でもセレス様のもとを離れない方がいいだろう。
昼も夜も、ずっと傍で護り続けるべき。
けど、そんなこと可能なのか?
貴族女性の傍に絶えず控えるなんてことが?
女性の護衛騎士もいるのに?
「……」
もうやり直しはできないんだ。何とかするしかない。
じゃないと、護りきれない可能性も……。
正直、不安ばかりが募ってくる。
これまで何度も失敗したのだから当然、か。
だったら、いっそセレス様を連れて逃げるのは?
魔落や、あるいは犯人から遠く離れれば……。
「本当に大丈夫ですか?」
「……」
もう3度目のこの問い掛け。
今の俺は相当酷い顔をしているんだろう。
「ええ、問題ありませんよ」
その上、同じ返答をするだけ。
情けない。
「コーキさん……」
「今後の護衛について考えていただけですので」
「ありがとうございます」
深く頭を下げてくれるセレス様。
「今日もありがとうございました」
「……護衛の仕事をしただけですよ」
エレナさんの甘味。
ユーフィリアのアイスアロー。
メルビンさんとルボルグ隊長の剣。
対処自体は簡単なものだった。
「それで、その、今夜は……私と同じ寝室で?」
「ええ、ずっと護衛を続けます」
いつ誰が襲ってくるか分からない。
毒なのか他の手段なのかも分からない。
もちろん、偶然も危険だ。
なら、傍で護るしかない。
「……」
こうなってしまったのは全て俺の不手際ゆえ。
時間遡行によるメリットを活かせず好機もものにできなかったから。
「同じ寝室……」
しかし、ここまで上手くいかないとは正直思っていなかった。
犯人が一枚上ということか?
あるいは、これまでの俺の警戒が過剰だった?
だから、犯人が犯行を中止したと?
いや、そうとも限らないな。
エレナさん、ユーフィリア、メルビンさん、ルボルグ隊長の行為が偶然ではなく、犯行の一部だった可能性もあるのだから。
「……」
一連の動きに皆の様子など、腑に落ちない点は多い。
考えれば考えるほど、全てが怪しく見えてしまう。
「コーキさん……あの……一緒に眠るのですか?」
「……そのつもりです」
「そ、そうなのですね」
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