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第8章 南部動乱編
ぬくもり
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<セレスティーヌ視点>
「「「「「おおぉ!!」」」」」
「「「「「やったぞ!!」」」」」
「「「「「ディアナぁぁ!!」」」」」
ディアナの勝利に周りの騎士たちが大騒ぎしている。
「やったぜ!!」
「セレス様、やりました! ディアナさん、勝ちましたよ!!」
ヴァーンさんもシアも大喜びだ。
「……そう、ね」
私も嬉しい。
ディアナのことを誇らしく思う。
なのに……。
この感じは?
胸に走る鈍痛。
喉が詰まるような感覚は?
「セレス様?」
「……」
覚えがある。
「セレス様!?」
記憶の中、いいえ、幻視で覚えた痛みに似ている。
「……ゴホッ」
咳?
この咳……!?
ディアナの試合に夢中になり過ぎて、違和感に気付けなかった。
でも、今ははっきりと分かる。
感じてしまう。
あっ!?
自覚した途端、急激に体が重くなって……。
「セレス様、お顔の色が!」
「シア……」
「どうされたのですか? お辛いのですか? セレス様、セレス様!!」
「ゴホッ、ゴホゥッ!!」
「「「セレス様!?」」」
「セレスさん!!」
シア、アル、ユーフィリア。
そして、ヴァーンさんが私を覗き込んでくる。
「セレス様……」
コーキさんは真っ青な表情。
呆然と立ち尽くしている。
それでも、こちらに手を伸ばして……。
「……」
なのに、私は。
「ゴホッ、ゴホッ!」
上手く喋れない。
咳が止まらない。
「はあ、はあ……」
やっぱりだ。
あの症状に似ている。
「ゴホッ……」
でも、どうして?
さっきまで何ともなかったのに?
何もされていないのに?
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!」
苦しい……。
「「「セレス様!」」」
「治療だ! コーキ、早く魔法を!」
「……」
温かい光。
私に降り注いで……。
「あっ」
少しだけど、呼吸が楽になっていく。
「セレスさん、どうだ? 効いてるか?」
「……はい」
「良かった、コーキの魔法が効いてるぞ!」
コーキさんの治癒魔法。
本当に温かい。
でも、これが幻視と同じ症状なら……。
「セレス様、果実水です。こちらを飲めば咳も和らぐはずです」
「シア……ありがと」
「セレス様……」
「うぅ……ゴボッ」
また咳が。
「ゴホッ、ゴボッ!」
果実水が喉に入っていかない。
「ゴホッ!」
杯を持つ手に力が入らない。
「ゴホッ……くるし……ゴホッ、ゴホッ!」
身体中から力が抜けていく。
「セレス様!?」
椅子に座っていることもできず、身体ごと地面に倒れて……。
ガシャーーン!
「「「セレス様ぁぁ!!」」」
「うぅぅ……」
息ができない。
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホゥッ!!」
口を押さえた掌に血!?
喀血!!
「はあ、はあ……うぅ……」
もう、間違いない。
「ゴホッ!!」
もう動けない。
もう、もう……。
「魔法だけじゃ駄目だ!」
「薬を、魔法薬を早く!」
「大丈夫です! 今すぐ薬を用意しますから! 薬を飲めば楽になりますから! だからセレス様……」
手を取ってくれるのは……シア?
抱えてくれるのは……コーキさん?
「セレス様、これを!!」
魔法、薬?
でも……力が……。
「失礼します」
「うっ! ううぅ……ゴホッ、ゴボォ」
飲ませてくれた?
コーキさん?
魔法薬が喉に、胸に沁みていく……。
「セレス様、楽になりましたか? 楽になりましたよね? ねえ、セレス様!!」
「シア……」
泣かないで。
少し楽になったから。
「効いてます? セレス様、効いたんですね!」
「セレスさん、大丈夫だ。魔法薬が効けば問題ねえ」
シア、ヴァーンさん……。
「あり、がとう」
「セレスティーヌ様、大丈夫です。治りますよ!」
「そうです、きっと良くなります!!」
「「「「「セレス様!」」」」」
みんな……ありがとう。
でもね……。
私は知ってるの。
今は少し楽になってるけど。
多分……長くはもたない。
「ゴホッ!」
「もう一度魔法薬を!」
「もっと治癒魔法も!」
「ゴホ、ゴホ、ゴホォッ!!」
手が、地面が、真っ赤に染まる。
「「「「「「セレス様!!」」」」」」
「「「「「「セレスティーヌ様!!」」」」」」
「……」
「……」
「……」
やっと、戻って来れたのに。
これからなのに……。
「ゴホッ……」
まだ、ここにいたい。
みんなと一緒にいたい!
「ゴホッ!」
「セレス様!!」
ワディンも……。
コーキさんとも……。
もっと、もっと……。
ここで私は……。
悔しい……。
「セレス様!!」
「……」
悔しい。
寂しい。
怖い……。
「ゴホォッ!!」
「セレス様ぁ!?」
シア……。
「セレス様……」
コーキ、さん?
顔を見せ、て……。
触れさせ、て……。
「ゴホッ……」
暗い。
あなた、が、見えない。
ど、こ?
「……さま!!」
聞こえ、ない……。
見えな、い……。
「……さま!!」
手を、あなた、の顔に……あっ?
あたた、かい。
これ、は……コーキさん?
あな、たの、ぬくもり……。
ぬくもり、が……。
……。
……。
……。
「「「「「おおぉ!!」」」」」
「「「「「やったぞ!!」」」」」
「「「「「ディアナぁぁ!!」」」」」
ディアナの勝利に周りの騎士たちが大騒ぎしている。
「やったぜ!!」
「セレス様、やりました! ディアナさん、勝ちましたよ!!」
ヴァーンさんもシアも大喜びだ。
「……そう、ね」
私も嬉しい。
ディアナのことを誇らしく思う。
なのに……。
この感じは?
胸に走る鈍痛。
喉が詰まるような感覚は?
「セレス様?」
「……」
覚えがある。
「セレス様!?」
記憶の中、いいえ、幻視で覚えた痛みに似ている。
「……ゴホッ」
咳?
この咳……!?
ディアナの試合に夢中になり過ぎて、違和感に気付けなかった。
でも、今ははっきりと分かる。
感じてしまう。
あっ!?
自覚した途端、急激に体が重くなって……。
「セレス様、お顔の色が!」
「シア……」
「どうされたのですか? お辛いのですか? セレス様、セレス様!!」
「ゴホッ、ゴホゥッ!!」
「「「セレス様!?」」」
「セレスさん!!」
シア、アル、ユーフィリア。
そして、ヴァーンさんが私を覗き込んでくる。
「セレス様……」
コーキさんは真っ青な表情。
呆然と立ち尽くしている。
それでも、こちらに手を伸ばして……。
「……」
なのに、私は。
「ゴホッ、ゴホッ!」
上手く喋れない。
咳が止まらない。
「はあ、はあ……」
やっぱりだ。
あの症状に似ている。
「ゴホッ……」
でも、どうして?
さっきまで何ともなかったのに?
何もされていないのに?
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!」
苦しい……。
「「「セレス様!」」」
「治療だ! コーキ、早く魔法を!」
「……」
温かい光。
私に降り注いで……。
「あっ」
少しだけど、呼吸が楽になっていく。
「セレスさん、どうだ? 効いてるか?」
「……はい」
「良かった、コーキの魔法が効いてるぞ!」
コーキさんの治癒魔法。
本当に温かい。
でも、これが幻視と同じ症状なら……。
「セレス様、果実水です。こちらを飲めば咳も和らぐはずです」
「シア……ありがと」
「セレス様……」
「うぅ……ゴボッ」
また咳が。
「ゴホッ、ゴボッ!」
果実水が喉に入っていかない。
「ゴホッ!」
杯を持つ手に力が入らない。
「ゴホッ……くるし……ゴホッ、ゴホッ!」
身体中から力が抜けていく。
「セレス様!?」
椅子に座っていることもできず、身体ごと地面に倒れて……。
ガシャーーン!
「「「セレス様ぁぁ!!」」」
「うぅぅ……」
息ができない。
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホゥッ!!」
口を押さえた掌に血!?
喀血!!
「はあ、はあ……うぅ……」
もう、間違いない。
「ゴホッ!!」
もう動けない。
もう、もう……。
「魔法だけじゃ駄目だ!」
「薬を、魔法薬を早く!」
「大丈夫です! 今すぐ薬を用意しますから! 薬を飲めば楽になりますから! だからセレス様……」
手を取ってくれるのは……シア?
抱えてくれるのは……コーキさん?
「セレス様、これを!!」
魔法、薬?
でも……力が……。
「失礼します」
「うっ! ううぅ……ゴホッ、ゴボォ」
飲ませてくれた?
コーキさん?
魔法薬が喉に、胸に沁みていく……。
「セレス様、楽になりましたか? 楽になりましたよね? ねえ、セレス様!!」
「シア……」
泣かないで。
少し楽になったから。
「効いてます? セレス様、効いたんですね!」
「セレスさん、大丈夫だ。魔法薬が効けば問題ねえ」
シア、ヴァーンさん……。
「あり、がとう」
「セレスティーヌ様、大丈夫です。治りますよ!」
「そうです、きっと良くなります!!」
「「「「「セレス様!」」」」」
みんな……ありがとう。
でもね……。
私は知ってるの。
今は少し楽になってるけど。
多分……長くはもたない。
「ゴホッ!」
「もう一度魔法薬を!」
「もっと治癒魔法も!」
「ゴホ、ゴホ、ゴホォッ!!」
手が、地面が、真っ赤に染まる。
「「「「「「セレス様!!」」」」」」
「「「「「「セレスティーヌ様!!」」」」」」
「……」
「……」
「……」
やっと、戻って来れたのに。
これからなのに……。
「ゴホッ……」
まだ、ここにいたい。
みんなと一緒にいたい!
「ゴホッ!」
「セレス様!!」
ワディンも……。
コーキさんとも……。
もっと、もっと……。
ここで私は……。
悔しい……。
「セレス様!!」
「……」
悔しい。
寂しい。
怖い……。
「ゴホォッ!!」
「セレス様ぁ!?」
シア……。
「セレス様……」
コーキ、さん?
顔を見せ、て……。
触れさせ、て……。
「ゴホッ……」
暗い。
あなた、が、見えない。
ど、こ?
「……さま!!」
聞こえ、ない……。
見えな、い……。
「……さま!!」
手を、あなた、の顔に……あっ?
あたた、かい。
これ、は……コーキさん?
あな、たの、ぬくもり……。
ぬくもり、が……。
……。
……。
……。
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