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第8章 南部動乱編
不信 1
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<ディアナ視点>
「……難しいと思う」
セレスティーヌ様とコーキ殿の関係。
我ら護衛騎士が語ることではないし、そもそも考えることですらない。
それを充分に理解しているユーフィリアが答えた一言。
その意味は決して軽くないだろう。
「ディアナは?」
「セレスティーヌ様はワディンの主となる御方。その上、神娘様でもある……」
「それで?」
珍しい。
いつもは他人の考えなんて気にしないユーフィリアがこんな表情を浮かべるなんて。
「ディアナ?」
「……同じ意見だ」
「コーキ殿は素晴らしい人物なのに?」
「それについては異論はないな。ただ、神娘セレスティーヌ様の伴侶となると話は別。ユーフィリアもそう思っているのだろ?」
ゆっくりと目を瞑るユーフィリア。
僅かに頷いた。
「……」
なるほど。
そういうことか。
セレスティーヌ様とコーキ殿の関係は認めがたい。とはいえ、軽々に口にできることでもない。それについて悩んでいる時に、シア殿とヴァーンのあの場面を目にしたと。
まあ……。
気持ちは分かる。
よく分かる。
私も同じ思いなのだから。
コーキ殿、か……。
オルドウの冒険者で剣と魔法の達人。
セレスティーヌ様の命の恩人であり、我らワディンも大恩を受けている。
そんな彼のことを悪く言うワディン騎士など、もちろんここには存在しない。
セレスティーヌ様が心惹かれるのも仕方のないことだろう。
ただし、今回のことは話が違う。
この件を許容できるワディン騎士も多くはないはず。
隊長であるルボルグ殿も、それについては否定的な見解を持っていた。
そんなふたりの関係が、ここにきて……。
「ディアナは明日の模擬戦に出るの?」
殊更明るい声で聞いてくるユーフィリア。
鬱屈した雰囲気を変えようとしているのか?
これもまた珍しい。
「まだ決めていない。ユーフィリアは?」
「セレスティーヌ様が望むなら」
「そうか……そうだな」
先程の会議の終盤。
冒険者連中から提案された剣と魔法の腕試し。
突然のことに難色を示す者もそれなりにいたが、結局明日の昼にエンノアの広場で開催されることが決まってしまった。
士気を高め訓練の意味もあるとは言うものの、この状況で何を呑気なことをと思う。それでも、決まった以上は従うしか……。
そういえば、コーキ殿も最初は乗り気でない様子だったな。
ただ、なぜか途中から賛成に回ったようだ。
「ディアナ、そろそろセレスティーヌ様のもとに」
「ああ、もうそんな時間か」
休憩は終わり。
セレスティーヌ様の護衛に戻るとしよう。
*********************
<フォルディ視点>
中央広場からほど近い距離に点在する石造りの住居群。
地下に暮らすエンノアの民が現在の数倍の規模を誇っていた頃、同胞が暮らしていた家屋たちだ。
「間違いないのですね」
「はい」
主を失くして久しいそれらが、今は宿としてワディン騎士や冒険者の皆さんに提供されている。
その住居群の中の1つ。
室内で疲れたような表情で問い返してくるのはコーキさん。
「あやしい者はいないと?」
「そうなります」
「……」
「読み切れなかった者も数人おりますが、彼らも浅層意識に問題はありませんでしたので」
「……難しいと思う」
セレスティーヌ様とコーキ殿の関係。
我ら護衛騎士が語ることではないし、そもそも考えることですらない。
それを充分に理解しているユーフィリアが答えた一言。
その意味は決して軽くないだろう。
「ディアナは?」
「セレスティーヌ様はワディンの主となる御方。その上、神娘様でもある……」
「それで?」
珍しい。
いつもは他人の考えなんて気にしないユーフィリアがこんな表情を浮かべるなんて。
「ディアナ?」
「……同じ意見だ」
「コーキ殿は素晴らしい人物なのに?」
「それについては異論はないな。ただ、神娘セレスティーヌ様の伴侶となると話は別。ユーフィリアもそう思っているのだろ?」
ゆっくりと目を瞑るユーフィリア。
僅かに頷いた。
「……」
なるほど。
そういうことか。
セレスティーヌ様とコーキ殿の関係は認めがたい。とはいえ、軽々に口にできることでもない。それについて悩んでいる時に、シア殿とヴァーンのあの場面を目にしたと。
まあ……。
気持ちは分かる。
よく分かる。
私も同じ思いなのだから。
コーキ殿、か……。
オルドウの冒険者で剣と魔法の達人。
セレスティーヌ様の命の恩人であり、我らワディンも大恩を受けている。
そんな彼のことを悪く言うワディン騎士など、もちろんここには存在しない。
セレスティーヌ様が心惹かれるのも仕方のないことだろう。
ただし、今回のことは話が違う。
この件を許容できるワディン騎士も多くはないはず。
隊長であるルボルグ殿も、それについては否定的な見解を持っていた。
そんなふたりの関係が、ここにきて……。
「ディアナは明日の模擬戦に出るの?」
殊更明るい声で聞いてくるユーフィリア。
鬱屈した雰囲気を変えようとしているのか?
これもまた珍しい。
「まだ決めていない。ユーフィリアは?」
「セレスティーヌ様が望むなら」
「そうか……そうだな」
先程の会議の終盤。
冒険者連中から提案された剣と魔法の腕試し。
突然のことに難色を示す者もそれなりにいたが、結局明日の昼にエンノアの広場で開催されることが決まってしまった。
士気を高め訓練の意味もあるとは言うものの、この状況で何を呑気なことをと思う。それでも、決まった以上は従うしか……。
そういえば、コーキ殿も最初は乗り気でない様子だったな。
ただ、なぜか途中から賛成に回ったようだ。
「ディアナ、そろそろセレスティーヌ様のもとに」
「ああ、もうそんな時間か」
休憩は終わり。
セレスティーヌ様の護衛に戻るとしよう。
*********************
<フォルディ視点>
中央広場からほど近い距離に点在する石造りの住居群。
地下に暮らすエンノアの民が現在の数倍の規模を誇っていた頃、同胞が暮らしていた家屋たちだ。
「間違いないのですね」
「はい」
主を失くして久しいそれらが、今は宿としてワディン騎士や冒険者の皆さんに提供されている。
その住居群の中の1つ。
室内で疲れたような表情で問い返してくるのはコーキさん。
「あやしい者はいないと?」
「そうなります」
「……」
「読み切れなかった者も数人おりますが、彼らも浅層意識に問題はありませんでしたので」
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