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第8章 南部動乱編

並行世界 3

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「感謝を口に出せて、スッキリしました」

「……」

「ほんと、変だなと自分でも思いますけど」

「……変ではないです」

「ふふ、コーキさんは優しいですね」

 優しいわけがない。

「あっ、ごめんなさい。長々と変な話を私……」

「いえ……」

「こんな話をしている場合ではないと分かっているんですが、どうしても話したくなってしまって。やっぱり私、おかしいみたいです」

 おかしいのは俺の方だ。
 それに。

「時間なら、ありますから」

「ありがとう、コーキさん」

「……」

「私、日本で学んで色々と分かったんです」

「……」

「自分が欲深い勝手な女だってことも知りました。なので、今の話も自己満足なんですよ」

 セレス様が欲深く自分勝手?
 ありえない。

「私は幸せですね」

「……」

「いつもいつも、わがままを受け入れてもらえて私は幸せです」

 散々苦労してきたセレス様が、そんな言葉を……。

「でも、そろそろ」

「……」

「日本で学んだセレスから、セレスティーヌ・キルメニア・エル・ワディンに戻りますね」

 笑顔は消えていない。
 なのに、空気が変化していく。

「ここからは、今の問題について話しましょう」

「……」

「コーキさん?」

 セレス様の言う通り。
 いつまでも情けなく考えている場合じゃない。
 切り替えるべきだ。


「実は他にも幻視した並行世界があるのですが、それが今の問題に関係しているように思えるんです」

「どんな内容でしょう?」

「また私が亡くなる幻視です」

 魔落脱出後、テポレン山麓での二度目の死だろうか?

「それがこの地下都市みたいで……」

 麓の二度目じゃなくエンノアでの経験?

「エンノアの地で、セレス様が亡くなるという幻視をされたのですね?」

「はい。それが今の私が置かれている状況に似ているのではないかと。今のこの世界に近い並行世界の私が亡くなったのだと。そう思っています」

「……」

「この幻視が今回の件の手掛かりにならないでしょうか? 私を狙っている犯人を絞れないでしょうか?」

 間違いなく手掛かりになる。
 犯人逮捕への一歩だ。

「その並行世界でのセレス様は、夜の24時過ぎに私の部屋にいませんでしたか?」

「コーキさんの部屋だったと断定はできないのですが……」

 エンノアで俺たちが与えられている家屋、部屋は基本的にどれも同じような造りになっている。なので、判別がつかないのも仕方ない。

「幻視の中で、私はエンノアのどこかの部屋にいるんです。すると、突然呼吸が苦しくなり、咳が止まらなくなり、喀血して、そのまま意識が途絶えて」

「セレス様、苦しくなる前の幻視は?」

「……そこは幻視できていません」

「……」

 部屋も分からず、直前の行動も定かじゃない。
 それでも、この幻視は昨夜の一件のように思える。
 何らかの手掛かりを得ることもできるはず。

 なら、まずは核心から。

「現実の体験や幻視体験から、今この地にあやしいと感じる人物はいませんか?」

「すみません、思い当たる者がいないんです」

「そうですか……」

「ただ……」

「何でしょう?」

「あの苦しさと症状は、さっきお話したテポレン山麓での死と同様のものに感じました」


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