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第8章 南部動乱編

決定

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「よし、俺が日本に戻ってペンダントに魔力を込めてみよう。それでも発動しなかったら、ペンダントと攻撃魔道具を交換して試せばいい」

「うん、うん!」

 嬉しそうに何度も頷く幸奈。
 まだ確定したわけじゃないのに、この姿を見ていると不思議と確信できてしまう。

「いつ試すの? 今から?」

 とはいえ、もちろん失敗に終わる可能性もある。
 なら、早く試した方がいいだろう。

「ああ、今からだ」

「わたしはどうしよ?」

「そうだな……」

 俺が日本に戻り、幸奈は……。

「まず俺が日本に戻り、そこでセレス様に事情を説明して、ふたりで待機する」

「うん」

「次にこちらの世界で、幸奈が魂替発動だ」

「うん」

「で、入れ替わった幸奈を日本で俺が迎え。その後、俺がこの世界に戻ってセレス様
の様子を見る。この流れで進めよう」

「うん、うん!」

「発動しなかった場合は、12時間後にこちらに戻って来ることになる」

「そうだね」

「あとは、発動のタイミングをどうするか?」

 一度異世界間移動を発動した場合、次に発動するまで12時間が必要となる。
 レベルアップした今の俺の異世界間時差は3:1。
 つまり今俺が日本に移動した場合、再び戻って来るまでに必要な時間は日本で12時間、この世界で4時間ということ。

 結構な時間がかかってしまう。
 その上困ったことに、今の日本が何時なのか見当もつかない。
 戻った日本が早朝かもしれないし、深夜かもしれない。

「難しいね」

「ああ」

 簡単じゃないが、日本の時間がどうであれ、やってやれないことはないか。

 なら、日本時間で9~12時間、こっちで3~4時間の間に幸奈が魂替を発動させればいいだろう。

「幸奈、3~4時間後に魂替を使ってくれるか?」

「いいけど……どういう計算なの?」

 ということで、幸奈に諸々説明し、懐中時計を手渡し。

「異世界間移動!!」




********************

<セレスティーヌ視点(姿は和見幸奈)>



「そういうことだから、気をつけて」

「分かりました」

 壬生本家であやしい動きがある。
 それは私も何となく分かっていたことだけれど、こうして古野白さんから伝えられると切迫感が違ってくる。

「まっ、何かあったら、オレがすぐに駆けつけっからよ。いつでも電話してくれ」

「武上君に電話するより私の方がいいわ。いつでも、私に連絡してね」

「どうしてだよ?」

「あなたの電話、繋がらないことが多いでしょ」

「んなことねえ」

「ジムだの、お酒だの、寝てただの、これまで何度言い訳を聞いてきたか。鷹郷さん、いつも困っているんだから」

「それは、まあ、たまたま……ちょっとな」

「なので、和見さん。連絡のつかない武上君ではなく、私に電話してね」

「オレでもいいからな」

「ありがとうございます、古野白さん、武上君も」

「気にしなくていいのよ」

「そうだぜ、ヒーローに遠慮は無用ってな」

「ふふ。そうね、武上君」

「おうよ」

 このふたりには、お世話になってばかり。
 コーキさんへの借りを返しているだけだと、言ってくれるけど。
 本当にありがたいことだと思う。

「で、有馬は何してんだ?」

 それは……。

「だから、同じことばかり聞かない。和見さんも困ってるでしょ」

「っても、変な話だろ。あいつ、ホント、どこで何してんだ?」

 私と幸奈さんのため、そしてワディンのために必死に頑張ってくれているコーキさん。
 決して遊んでいるわけじゃない。

 異世界で頑張ってくれています!
 そう言えれば良かったのに。




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