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第8章 南部動乱編

発動

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「早くセレスさんと入れ替わらないと!」

 それはまあ、可能なら早い方がいい。
 ただ、現時点では準備が不足している。
 どれだけ早くても明日、明日の夜に試せればいい方だろう。

 それに、そもそも。

「力は使えそうなのか?」

「入れ替わりの異能だよね?」

「ああ」

 どうなんだ?
 使いこなせないなら、入れ替わりは先の話になってしまうが。

「ちょっと待って」

 幸奈が目を瞑って何かを考えている。
 いや、感じている?

「これをこうして……」

「……」

「そうすれば……」

「……」

「多分、大丈夫」

 大丈夫とは、つまり……。

「使えると思うよ」

「!?」

 本当に!
 使えるのか!
 とすれば、ほぼ問題は解決したようなものだぞ!

「今発動してみる?」

 ん?

「今?」

「そう」

「今すぐ、ここで異能を?」

「そうそう。早く替わってあげたいからね」

「いや、待ってくれ。まだ用意ができてないだろ。幸奈もセレス様も」

 俺はもちろん、幸奈とセレス様にも色々とやることがあるはずだ。

「用意なんてなくても、どうとでもなるよ。それに、何かあったら魂替をもう一度使えばいいだけだし」

「幸奈、連続使用も可能なのか!?」

 一度使うとしばらく使えなかったのでは?

「できると思う」

「……」

 幸奈の力が成長している?

「だからさ、まずは発動後に上手くセレスさんに繋がるか試さないとね」

「それを今から?」

「うん。案ずるより産むが易しでしょ」

「幸奈……」

 こんな性格だったか?
 ひょっとして酔いが残ってる?
 それとも、入れ替わりの影響なのか?

「じゃあ、始めるね」

「幸奈、ちょ……」

「魂替!!」

「おい……」

 やってしまった。

「……」

「……」

「……あれ? おかしいなぁ?」

 発動しない?

「なら、もう一度。魂替!!」

「……」

「……」

「魂替!!」

「……」

「……」

 やはり発動しない。

「……どうして??」

 その事実に、なぜか奇妙な感覚に陥ってしまう。

「功己! 替われないよ?」

「ああ」

「どうして??」

 分からない。
 
「ちゃんと使えたはずなのに?」

 すぐに分かるわけがない。
 ただ、考えることはできる。

「今、発動はしたのか?」

「……できたと思う」

「発動には成功したものの、セレス様と繋がることはできなかった?」

「……多分」

 当然のことながら、今の幸奈とセレス様は異なる世界に生きている。
 その2つの世界を結んで効力を発揮するのが容易じゃないのは想像に難くない。

 ただ、成功した過去があるのも事実。
 だったら。

「最初に異能を使った時との違いは何だ?」

「最初って、日本でのこと?」

「ああ」

「日本で使った時は意識してなかったから。それに、眠る直前か眠ってる間に使ったと思うから」

 幸奈はあれを眠りだと捉えている?
 やはり、オーバードーズだと考えていないんだな。

「目を覚ました時には記憶を失ってこっちの世界にいたし……。よく分からないよ」

 前回の魂替は、オーバードーズの状況で起こったもの。つまり、無意識の間に異能を使ったことになる。

 けど、それなら。

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