30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

ひらひら

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<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>



「昨日に続いて忙しくなりそうですね、セレス様」

「……ええ」

「戦争って、前も後も大変ですから」

 本当にその通りだと思う。
 戦場跡の処理、レザンジュ王軍の動向調査、次の戦いに向けての準備など。することが多すぎる。

「さあ、やるぞ!」
「ああ、頑張るか」
「おう!」
「さっと片付けちまおうぜ」
「だな」

 だけど、みんなの顔は晴れやかなもの。
 横にいるシアさんもそう。
 今さらながら、勝利とは凄いものなんだと実感してしまう。

「あっ、セレス様は少しお休みください。お顔の色も良くないですし、頭痛も治まっていないのですから」

 そんな中、わたしだけが相変わらず役に立たない。
 シアさんからもコーキさんからも心配されてばかりで……。

 でも、今日からはもう逃げるつもりはない。
 頭痛と正面から向き合うつもりだ。
 違和感の原因も見つけ出す。

「……」

 そんな思いと裏腹に、なぜか上手く進めない。
 今は強く望んでいるはずなのに、どうしてだろ?

 やっぱり、心の深いところで拒絶している?
 そうなの?

「……」

 このままじゃ駄目。
 同じことの繰り返しになる。
 だったら……。
 心のままに動いてみよう。

「シアさん、ちょっと出てきます」

「えっ? セレス様、体調は?」

「もう大丈夫」

「頭痛の方は?」

「それも平気だから」

「……どちらに行かれるのですか?」

「すぐ近くよ。危険はないと思う」

「……お供します」

「……」

 本当はひとりで向かいたかったのだけれど、そうもいかないか。



 シアさんと護衛の騎士に護られて、向かった先は昨日の戦場跡の一角。
 わたしたちの本陣があった場所だ。

 昨日、今日と処理をした結果、今は見違えるようになっている。
 もちろん、戦いの傷跡は少し残っているけれど……。


「騎士の皆さん、少しひとりにしてもらってもいいですか?」

「セレス様?」

「シアさん、お願い。ちょっとだけ離れていて?」

「……はい」

「騎士の皆さんも、ここで待っていてください」

「「承知しました」」

 みんなから離れて1歩、2歩。
 3歩、4歩、5歩……。
 大地を踏みしめ、足を進める。

 ここだ。

 本陣の中央奥。
 ベニワスレの大木が穏やかながらも盛りを誇っている薄紅の空間。

 昨日、コーキさんが私を救ってくれた場所だ。

「……」

 ベニワスレに残っている鮮やかな斬跡。
 昨日のコーキさんの一振りでできたものに違いない。
 その斬跡に指を添わせると……。
 何かが伝わってくる。
 何かは分からない何かが。

 むず痒いような、くすぐったいような、不思議な感覚。
 これはいったい?

「……」

 刹那、山に吹く優しくも強い風が頬を撫で。

「あっ……」

 ベニワスレの枝を揺らす。
 そして、花弁が空に。

 ひら ひら

    ひら ひら

 薄紅が枝に別れを告げ。
 旅立っていく。
 楽しそうに舞っている。


 ひら ひら

    ひら ひら ひら

          ひら ひら ひら


 陽光を受け時折朱へと変化しながら輝き踊る花弁たち。
 心の奥底にふわりと柔らかに触れてくる。


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