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第8章 南部動乱編
テポレン山の戦い 33
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北東から近づく気配に気づけなかった。
感知していたはずなのに。
「……」
後方の本陣と目の前の敵に気を取られ過ぎていたから。
過集中していたから。
原因は何であれ、初歩的な失敗に違いはない。
この状況でなんてことを……。
「な、何だ!?」
「あれは?」
「……」
現れた人数はわずか10名。
ただし、並の10人じゃない。
特に中央の人物、青髪の剣士がとんでもない。
これまでの王軍の襲撃者をはるかに超えた気配を放っている。
感知通りとはいえ、ここまでだとは……。
しかし、なぜ北東からやって来たんだ?
北東には道らしい道はなく、先もエビルズピークへと続くばかり。
西の獣道は当然のことながら、南と比べてもあり得ない。襲撃には最も適していないと思うのだが。
さらに、奇妙なのが彼らの顔面……。
なんと、10人全員が仮面をつけている。
それも、仮面舞踏会でつけるような派手なマスカレードマスクを。
「……」
殺伐とした戦場に奇妙なマスクの集団。
場違いで滑稽に見えるのに、笑えない存在感。
研ぎ澄まされた恐ろしい気をまとう青髪の剣士が動いた。
これは……?
この気配は……?
「「「何者?」」」
「「「ワディンの伏兵か?」」」
「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」
10人は黙したまま。
「どこの手の者だ?」
「名を名乗れ!」
王軍兵から上がるのは疑問の声ばかり。
つまり、彼らはレザンジュ王軍の者じゃないと。
「動くな!」
「止まるんだ!」
仮面の10人は止まらない。
対する王軍は、目の前に広がるアンバランスな眺めに動きが止まっている。
「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」
一瞬にして場を支配した10人。
とはいえ、今は狂乱の戦闘中だ。
停滞もそう長くは続かないだろう。
「10名程度など気にするんじゃない。蹴散らしてやれ!」
王軍は仮面の集団を敵と見なすんだな。
「進軍!」
この極限状況でその判断は、ありがたい。
何より助かる。
が、問題は10人の動きだ。
本当に俺たちの敵じゃないのか?
「歩兵隊、騎馬隊、進めぇ!!」
「「「「「「「おおぅ!!」」」」」」」
王軍が猛攻を再開した。
攻勢の先は、これまで通り俺とノワール。
そして、既に陣形を敷いている10人。
キン、キン、ザシュッ!
剣を手にしながらも、どうしても意識は他に向いてしまう。
魔物と戦う本陣、そして仮面の10人へと……。
っと!
仮面の1人、青髪の剣士が動いた。
跳ぶようにして、俺の傍らに!
その圧力に思わず横に跳躍。
3歩分の距離を置き仮面剣士と対峙。
「ぎゃあぁ!」
しようと思った俺の眼前で振るわれた仮面の剣が王軍歩兵を屠り去ってしまった。
さらに、剣を返した仮面剣士が歩兵隊を斬り裂いていく。
「っ!?」
「何!?」
「やはり、ワディンの者?」
喚く王軍に振るわれるのは、見事なまでに冴えた剣。
「「「「ああぁ……」」」」
その剣は圧倒的だ。
剣身に青藍を纏った細剣が王軍を一蹴していく。
ザン、ザンッ!
ザン、ザン、ザンッ!
他の9名の腕も文句なし。
青髪には劣るものの、王軍歩兵を子供使いする剣技を披露している。
ザン、ザン、ザン!
シュッ、ザシュッ!
「「「「「うぎゃぁ!」」」」」
「「「「「ううぅ……」」」」」
たちまち、王軍との間に空白ができてしまった。
地理的、時間的空白だ。
「……待たせたな」
再び近づいてきた青髪の剣士。
剣技とは真逆の穏やかな声を掛けてくる。
「……」
右手に持つ青藍に輝く細剣と、美しくなびく濃紺の髪。
青蝶が舞っているようなふざけた仮面の中の眼は、笑みをたたえたまま。
「借りを返させてもらうぞ」
そう。
小さな仮面程度じゃ隠し切れない存在感。
超絶無比の剣技。
この距離で気付かないわけがない。
「助かりますよ」
剣姫さん。
感知していたはずなのに。
「……」
後方の本陣と目の前の敵に気を取られ過ぎていたから。
過集中していたから。
原因は何であれ、初歩的な失敗に違いはない。
この状況でなんてことを……。
「な、何だ!?」
「あれは?」
「……」
現れた人数はわずか10名。
ただし、並の10人じゃない。
特に中央の人物、青髪の剣士がとんでもない。
これまでの王軍の襲撃者をはるかに超えた気配を放っている。
感知通りとはいえ、ここまでだとは……。
しかし、なぜ北東からやって来たんだ?
北東には道らしい道はなく、先もエビルズピークへと続くばかり。
西の獣道は当然のことながら、南と比べてもあり得ない。襲撃には最も適していないと思うのだが。
さらに、奇妙なのが彼らの顔面……。
なんと、10人全員が仮面をつけている。
それも、仮面舞踏会でつけるような派手なマスカレードマスクを。
「……」
殺伐とした戦場に奇妙なマスクの集団。
場違いで滑稽に見えるのに、笑えない存在感。
研ぎ澄まされた恐ろしい気をまとう青髪の剣士が動いた。
これは……?
この気配は……?
「「「何者?」」」
「「「ワディンの伏兵か?」」」
「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」
10人は黙したまま。
「どこの手の者だ?」
「名を名乗れ!」
王軍兵から上がるのは疑問の声ばかり。
つまり、彼らはレザンジュ王軍の者じゃないと。
「動くな!」
「止まるんだ!」
仮面の10人は止まらない。
対する王軍は、目の前に広がるアンバランスな眺めに動きが止まっている。
「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」
一瞬にして場を支配した10人。
とはいえ、今は狂乱の戦闘中だ。
停滞もそう長くは続かないだろう。
「10名程度など気にするんじゃない。蹴散らしてやれ!」
王軍は仮面の集団を敵と見なすんだな。
「進軍!」
この極限状況でその判断は、ありがたい。
何より助かる。
が、問題は10人の動きだ。
本当に俺たちの敵じゃないのか?
「歩兵隊、騎馬隊、進めぇ!!」
「「「「「「「おおぅ!!」」」」」」」
王軍が猛攻を再開した。
攻勢の先は、これまで通り俺とノワール。
そして、既に陣形を敷いている10人。
キン、キン、ザシュッ!
剣を手にしながらも、どうしても意識は他に向いてしまう。
魔物と戦う本陣、そして仮面の10人へと……。
っと!
仮面の1人、青髪の剣士が動いた。
跳ぶようにして、俺の傍らに!
その圧力に思わず横に跳躍。
3歩分の距離を置き仮面剣士と対峙。
「ぎゃあぁ!」
しようと思った俺の眼前で振るわれた仮面の剣が王軍歩兵を屠り去ってしまった。
さらに、剣を返した仮面剣士が歩兵隊を斬り裂いていく。
「っ!?」
「何!?」
「やはり、ワディンの者?」
喚く王軍に振るわれるのは、見事なまでに冴えた剣。
「「「「ああぁ……」」」」
その剣は圧倒的だ。
剣身に青藍を纏った細剣が王軍を一蹴していく。
ザン、ザンッ!
ザン、ザン、ザンッ!
他の9名の腕も文句なし。
青髪には劣るものの、王軍歩兵を子供使いする剣技を披露している。
ザン、ザン、ザン!
シュッ、ザシュッ!
「「「「「うぎゃぁ!」」」」」
「「「「「ううぅ……」」」」」
たちまち、王軍との間に空白ができてしまった。
地理的、時間的空白だ。
「……待たせたな」
再び近づいてきた青髪の剣士。
剣技とは真逆の穏やかな声を掛けてくる。
「……」
右手に持つ青藍に輝く細剣と、美しくなびく濃紺の髪。
青蝶が舞っているようなふざけた仮面の中の眼は、笑みをたたえたまま。
「借りを返させてもらうぞ」
そう。
小さな仮面程度じゃ隠し切れない存在感。
超絶無比の剣技。
この距離で気付かないわけがない。
「助かりますよ」
剣姫さん。
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