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第8章 南部動乱編
テポレン山の戦い 16
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<イリアル視点>
「そう悲観するものでもないですよ」
「……」
「謎の魔道具はもちろん、魔法の矢も無尽蔵じゃあない。早晩、魔道具が尽き矢も無くなるはずです。その時には、自ずと形勢も逆転するでしょうから」
「敵の矢が尽きるまでの被害が問題だな」
「ですね」
今はまだ、こっちにも余裕がある。
が、このまま無理攻めを続けて劣勢の状況に変化がなければ、被害は無視できなくなっちまうだろう。
「今回の戦い、後陣では何もできないと思っていたが……。我らにも出番があるかもしれんな」
「可能性はありますよ」
10000対100の戦い。
常識で考えりゃ戦いとも呼べないもの、だが。
この地勢にバケモンと魔道具とくればな。
はは……。
1万もの援軍がやって来た時には、あっちの心配をしてたってのに。
えらい状況になったもんだ。
「ふっ、また可能性か」
「ええ、可能性です」
トゥオヴィは知らねえだろ。
これまで俺がどんだけ多くのシミュレーションをしてきたか。
魔眼で未来を予想してきたか。
だからよ。
これもひとつの可能性にすぎねえんだぜ。
*******************
戦闘開始から2刻(4時間)が経過。
魔法矢と設置型爆弾を駆使することで数度にわたる王軍の攻勢を退けることに成功した俺たちは今、陣地の中で少しばかりの休憩をとっている。
「あいつら、動かねえなぁ」
こうした時間を持てるのも、王軍が距離をとった状態で全く動こうとしないから。
「次は何をする気なんだ?」
「また同じように攻めてくるんじゃないか」
「さすがに、それはないと思うぞ」
「ああ、俺たちにやられっぱなしだからな」
「なら、どうする? この山道以外は攻め手がないのに?」
「そいつは……」
「ほら、策なんて思いつかねえだろ」
「……」
ワディンとエンノアの皆が身体を休めながら、この後の戦闘について口にしている。
ワディンとエンノアを指揮する2人もそれは同じ。
「長老殿、魔法矢に余裕はあるのでしょうか?」
「コーキ殿が大量に用意してくれましたからな、まだ問題はありませんぞ」
「それなら安心です」
「ワディン騎士の皆さんの調子はいかがです?」
「こちらも問題はありません。今のところ我らは念動力隊の皆さんを護るために外に出たくらいですからね。怪我もほとんど負っておりませんので」
「お互いに余力十分のようですな」
「ええ」
ゼミアさんとルボルグ隊長率いる部隊に大きな変化はないようだ。
ヴァーン、シア、アル、ディアナ、ユーフィリアも問題があるようには見えない。
皆、気合の入った表情で次の展開に備えている。
シアの後ろにいる幸奈は……顔色が良くないな。
っと、俺の視線に気づいたか?
「コーキさん?」
「……セレス様、体調に問題は?」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です」
「それなら、良いのですが」
異能を発現した後も、幸奈に目立った変化は現れていない。
まだ記憶を取り戻していないように見える、が。
雰囲気が若干変わったような……。
「本当に平気です。ですので、コーキさんは戦闘だけを考えてください。前のように、いつ危険が迫ってくるか分かりませんから」
「……」
「あのような危険はもう……」
「そう悲観するものでもないですよ」
「……」
「謎の魔道具はもちろん、魔法の矢も無尽蔵じゃあない。早晩、魔道具が尽き矢も無くなるはずです。その時には、自ずと形勢も逆転するでしょうから」
「敵の矢が尽きるまでの被害が問題だな」
「ですね」
今はまだ、こっちにも余裕がある。
が、このまま無理攻めを続けて劣勢の状況に変化がなければ、被害は無視できなくなっちまうだろう。
「今回の戦い、後陣では何もできないと思っていたが……。我らにも出番があるかもしれんな」
「可能性はありますよ」
10000対100の戦い。
常識で考えりゃ戦いとも呼べないもの、だが。
この地勢にバケモンと魔道具とくればな。
はは……。
1万もの援軍がやって来た時には、あっちの心配をしてたってのに。
えらい状況になったもんだ。
「ふっ、また可能性か」
「ええ、可能性です」
トゥオヴィは知らねえだろ。
これまで俺がどんだけ多くのシミュレーションをしてきたか。
魔眼で未来を予想してきたか。
だからよ。
これもひとつの可能性にすぎねえんだぜ。
*******************
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魔法矢と設置型爆弾を駆使することで数度にわたる王軍の攻勢を退けることに成功した俺たちは今、陣地の中で少しばかりの休憩をとっている。
「あいつら、動かねえなぁ」
こうした時間を持てるのも、王軍が距離をとった状態で全く動こうとしないから。
「次は何をする気なんだ?」
「また同じように攻めてくるんじゃないか」
「さすがに、それはないと思うぞ」
「ああ、俺たちにやられっぱなしだからな」
「なら、どうする? この山道以外は攻め手がないのに?」
「そいつは……」
「ほら、策なんて思いつかねえだろ」
「……」
ワディンとエンノアの皆が身体を休めながら、この後の戦闘について口にしている。
ワディンとエンノアを指揮する2人もそれは同じ。
「長老殿、魔法矢に余裕はあるのでしょうか?」
「コーキ殿が大量に用意してくれましたからな、まだ問題はありませんぞ」
「それなら安心です」
「ワディン騎士の皆さんの調子はいかがです?」
「こちらも問題はありません。今のところ我らは念動力隊の皆さんを護るために外に出たくらいですからね。怪我もほとんど負っておりませんので」
「お互いに余力十分のようですな」
「ええ」
ゼミアさんとルボルグ隊長率いる部隊に大きな変化はないようだ。
ヴァーン、シア、アル、ディアナ、ユーフィリアも問題があるようには見えない。
皆、気合の入った表情で次の展開に備えている。
シアの後ろにいる幸奈は……顔色が良くないな。
っと、俺の視線に気づいたか?
「コーキさん?」
「……セレス様、体調に問題は?」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です」
「それなら、良いのですが」
異能を発現した後も、幸奈に目立った変化は現れていない。
まだ記憶を取り戻していないように見える、が。
雰囲気が若干変わったような……。
「本当に平気です。ですので、コーキさんは戦闘だけを考えてください。前のように、いつ危険が迫ってくるか分かりませんから」
「……」
「あのような危険はもう……」
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